新潟市民病院医師過労死事件勝訴

さいとうゆたか弁護士

1 新潟市民病院医師過労死事件で勝訴判決

2022年3月25日、新潟地裁は、新潟市民病院医師過労死事件について、原告らの言い分をほぼすべて認める勝訴判決を言い渡しました。

私が原告ら代理人を務めた事件ですので、以下、簡単にご紹介します。

2 自殺と過労との因果関係

裁判所は、1ケ月あたりの時間外労働時間が160時間を超えていたと認定します。

その上で、「被災労働者の業務の内容は・・・多数の手術への関与を含む、緊張感を伴うものであったから、手術の内容が比較的軽易とされるものであったとしても、未だ経験が浅く、技術も未熟な後期研修医であった被災労働者にとって、相当重い心理的負担を感じるものであったと考えられるし、深夜の宿直や緊急手術の呼出等の不規則な業務も心理的負担を伴うものであったといえる」等として、過重労働とうつ病罹患、ひいては自殺との因果関係を認めました。

研修医について、未熟であるが故に負荷がかかりやすい立場であったことを適切に評価したものと考えます。

3 安全配慮義務違反

裁判所は、

ⅰ 加重な時間外労働時間及び手術件数等の労働状況を当然把握することができた、

ⅱ 新潟市民病院が平成21年9月2日に時間外労働に関する協定の限度時間を超える労働をさせていたことなどについて是正勧告を受けたこともあったこと

から、病院側において、被災労働者が「本件病院における業務から相当強度の心理的負荷を感じていたこと、及びその結果、何らかの精神疾患を発症するおそれがあることを十分認識し得た」とし、病院側には予見可能性があったとしました。

しかし、病院側として、被災労働者の「労働時間を管理し業務を軽減すべき義務を怠った」として、安全配慮義務違反を認めました。

4 過失相殺

病院側は、例えば、被災労働者において、生前に精神科などを受診等しなかったことなどについて過失相殺をすべきと主張していました。

しかし、裁判所は、「うつ病という精神疾患の性質からすれば、被災労働者は自身の変調を感じていたとしても、それが精神疾患によるものであるとまでは認識していなかったとしてもやむを得ない」等として、過失相殺を認めませんでした。

精神疾患に罹患した被災労働者の状況を正しく評価した判決かと思います。

5 最期に

損害賠償の問題はこれで解決しました。

しかし、新潟市民病院で二度と過労死が発生しないようにする取り組みは道半ばです。

今後も皆様のご支援などよろしくお願いします。

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