
1 知的障害者と労災
一般的に使用者は、労働者が業務に起因して傷害等を負わないように安全配慮義務を負います。
特に知的障害者を雇用する場合、一般の労働者と比べて高度な安全配慮義務を負うことがあります。
以下、関連する裁判例をご紹介します。
2 知的障害者と労災に関する裁判例
東京地裁八王子支部平成15年12月10日判決は、知的障害を持つ労働者がクリーニング工場で勤務中に機械に巻き込まれ、死亡したという労災事故について、以下のとおりの判断を示しています。
同判決は、使用者には、「担当する機械の取扱方法,作業手順,機械の仕組み,洗濯物が詰まるなどのトラブル時の対処方法,作業上及び安全上の注意事項等について安全教育を行い,緊急時に適切な指導・監督を受けられるような人員配置や人的なサポート態勢の整備等を図る」義務があったとしました。
その上で、
ⅰ 使用者において作業場の注意事項について具体的な説明等を行っていない、
ⅱ 労働者が、慣れていないことや予期せぬトラブルに臨機に応じて対処することが能力的に困難であると認識していたのであるから,労働者を作業に従事させるについて,労働者がトラブル時に適切な指導,監督を受けられる態勢を整える必要があったのに、整えなかった
として安全配慮義務違反を認めました。
ⅰについては、知的障害のない労働者に対するものより丁寧な説明が義務付けられると言えるでしょう。
このように、知的障害者を危険を伴う業務に従事させる使用者は、一般の場合に比べ加重された安全配慮義務を負う可能性があります。
また、静岡地裁平成30年6月18日判決は、「知的障害や発達障害を有する者は,その障害が原因で,頑張って努力しても努力が報われず,できるようにならないため,無力感や劣等感,自己否定感を抱きやすく,ストレスへの耐性も他の人と比べて低いという見方もあって,うつ病や適応障害といった二次障害に陥りやすいとされている」との知見も含め、知的障害者である労働者の自殺について、業務との因果関係を認めています(ただし、予見可能性なしとして使用者の法的責任は認められていません)。
このように、過重労働等による精神疾患り患が問題となる労災に関しては、知的障害者であることで業務の過重性と疾病罹患との因果関係が認められやすくなる可能性があります。
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