どのような場合に強制認知を請求することができるのか?

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 認知について

民法は799条は、認知について、「嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる」と定めています。

認知は、役所に届け出ることによって行います(民法781条)。
 
認知は胎児についてもすることができます。その場合には母の承諾が必要です(民法783条)。
 
認知をすることで、養育費などの手続きをすることができることになります。認知の効力は出生のときに遡ります(民法784条)。
 
一旦親がした認知は取り消すことができません(民法785条)。
 

2 どのような場合に強制認知が認められるか?

認知を求める訴訟をしても、父親が親子関係を否認し、争うことがあります。

そのような場合、どのくらいの証拠があれば認知が認められるでしょうか?

長野家裁諏訪支部平成23年12月13日判決は、「DNA鑑定によって,被告が原告Aの父親である確率が99.998%との結果が出ていること,前記認定事実によれば,原告Bが原告Aを妊娠したころ,被告と原告Bとの間に情交関係があったこと,被告が原告Bの妊娠中原告Aについて自らの子であることを認める言動に終始していたことが認められ,これらに,原告Bが妊娠当時他の男性との情交関係はなかったと述べており,これを揺るがす事情も見当たらないことを合わせ考慮すると,原告Aと被告との間に血縁上の父子関係が存在すると認められる。」として父子関係を認めました。

参照:DNA鑑定等から父子関係を認めた判決

東京地裁平成16年12月22日判決は、「当裁判所の嘱託に基づき日本大学医学部法医学教室押田茂實により実施された鑑定の結果(以下「本件鑑定」という。)によれば、赤血球型,PCR法を用いたD1S80型及びPCR法を用いたSTR型の各検査において,B及び原告の型から推定される原告の父としてもつべきアリル(Allele対立遺伝子)と,D,補助参加人E及び同Fの型から推定される亡Aのアリルの間において,遺伝法則に合致しない形質は見られず,原告と亡Aと原告の間に父子関係が存在する可能性は高いとされる。」等として父子関係を認定しています。

このように、DNA鑑定の結果、妊娠時点での交際状況、母親と他の男性との交際状況、父親が親子関係を認める言動をしていたかどうか等により親子関係が認定されます。

DNA鑑定は必須ではなく、これがなくとも認知が認められることもあります。

例えば、東京高裁昭和57年6月30日判決は、父が鑑定に協力しないからただちに認知を認めることはできないものの、非協力の理由によっては親子関係を推認することが可能だとしました。

3 認知を求める手続き

交渉をしても認知をしてもらえない場合、まずは家裁に認知の調停を申し立てることになります。

これは、家事事件手続法257条で、先に調停を申し立てるべきとされているからです。

父が認知に同意しているような場合、審判で認知が認められることもあります。

調停で認知が解決しない場合、認知の訴えを提起することになります。

認知を請求できるのは子ども、子どもの子孫、法定代理人(親権者など)です。

訴訟の相手方は父ですが、父が死亡した後では検察官が相手方となります。

胎児認知という制度もありますが、胎児の段階で認知訴訟を起こすことはできません(調停は可能です)。

認知訴訟は父の生存中はいつでもなしえます。最高裁昭和46年3月19日判決は、子の出生後57年経過してからの認知訴訟について、権利濫用とはせず、認知を認めています。

父の死後は3年以内のみ認知訴訟を起こすことができます(民法787条)。

認知を認める裁判が確定した場合、認知訴訟を起こした者は、確定日から10日以内に認知の届け出をしなければならないとされています。

4 認知請求権放棄契約の効力

お金と引き換え等として認知請求権を放棄する合意がなされることがあります。

しかし、認知請求権は身分法上の権利であり、認知請求権を放棄する合意は無効とされます。参照:認知請求権は放棄できないとした判例

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