懲戒解雇・懲戒免職の効力

労災、解雇問題

1 懲戒解雇・懲戒免職の効力

懲戒解雇は、懲戒処分の一種としてされる解雇です。

懲戒解雇がなされると、再就職が著しく困難となります。

そのため、懲戒解雇の効力については、普通解雇より要件が厳しくなります。

2 懲戒解雇の有効性

懲戒解雇は他の懲戒処分と同様、罪刑法定主義的なルール、一事不再理の原則、適正手続きに従う必要があります。

罪刑法定主義的なルール

まず、使用者が懲戒解雇を行う場合、就業規則に懲戒の種別と事由を定めておく必要があります(最高裁フジ興産事件判決)。

懲戒解雇事由の後に制定等した就業規則規定に基づく懲戒解雇は許されません(事後法の禁止)。

一事不再理の原則

一旦懲戒処分になったのと同じ理由で懲戒解雇とすることはできません。

適正手続き

労働協約や就業規則で決められた手続きが履践されるべきは当然です。

そのような手続きが決められていなくても、懲戒事由を労働者に示し、弁明の機会を確保することは最低限必要と考えられます。

3 懲戒解雇・懲戒免職に関する裁判例

消防職員が他の職員に対するハラスメント行為を行ったことを理由に懲戒免職処分に付されたことの効力が争われた事案についての福岡地裁令和4年7月29日判決は、以下のとおり述べ、懲戒免職を取り消しました。

訓練やトレーニングにおいて、逸脱ないし過剰にわたった程度としては、特段大きいとまではいい難く、原告A1には、部下等の訓練15 や指導等を目的とする部分があったこともうかがえ、部下や後輩の消防職員に対する指導等の度が過ぎた面があったといえなくはない。暴言や叱責等についても、過剰に言い過ぎた面や、表現が適切でなく、いわゆる口が悪い面が現れたにすぎないところもあったといえる。また、結果として、被害を受けた職員に重大な負傷等も生じていない。これらを踏まえると、 A1非違行為は長年にわたり多数に上るものであるものの、極めて悪質である、又は、他の職員及び社会に与える影響が特に大きいとまではいえない(本件懲戒指針第4条1項⑴、⑵参照)。
また、原告A1は、本件免職まで、懲戒処分を受けたことがなく、また、通常の範囲を逸脱ないし過剰にわたる訓練やトレーニング、暴言や叱責等について、個別的に注意や指導を受けたとの事情も見当たらず、本件免職前の原告A1の能力考課シートに関しても、離席の点の他は特段の評価やコメントはされていなかったことが認められる
以上の各事情のほか、その他の本件懲戒指針第2条に定める事情を総合的に考慮すると、原告A1の非違行為は長年にわたり、多数に上るものではあるものの、それぞれの内容自体は上記エの事情が見受けられることからして、これまで懲戒処分歴がない中で、処分行政庁(消防本部消防長)が、原告A1に対する懲戒処分として、本件懲戒指針に定める標準的な懲戒処分のうち最も重い停職よりも重く、かつ懲戒処分の中でも最も重い免職処分を選択した判断は、処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き、本件免職は懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法と評価せざるを得ない。

しかし、最高裁令和4年9月13日判決は、「本件各行為は、5年を超えて繰り返され、約80件に上るものである。その対象となった消防職員も、約30人と多数であるばかりか、上告人の消防職員全体の人数の半数近くを占める。そして、その内容は、現に刑事罰を科されたものを含む暴行、暴言、極めて卑わいな言動、プライバシーを侵害した上に相手を不安に陥れる言動等、多岐にわたる。」などとして、広島高裁判決を破棄しています。

このように、

・対象となった行為の性質や影響の程度

・懲戒指針などの定め

・従来対象職員に注意などがされてきたのかどうか

などを踏まえ、懲戒解雇・懲戒免職の効力は慎重に判断されることになります。

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