執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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福岡高裁宮崎支部令和3年2月10日判決は、適応障害と診断された公立中学生徒について、教諭らが部活動における軽減措置をとらなかったために症状が悪化したことについて、配慮義務違反に当たるとして、自治体側に賠償責任を認めました。
部活動での事故をめぐる訴訟自体は多いですが、適応障害に対する適切な対応がなさなかったことを理由に学校側の責任を認める事例は極めて珍しいと言えますので、以下、ご紹介します。
1 前提となる事実関係
被害生徒は吹奏楽部の部員で、適応障害でした。
同被害制度について、医師は、「体調不良や疲労の蓄積などで練習を休むことが度々あったにも関わらず本件部活への参加の欲求が強く、無理をして練習に参加して適応障害が悪化する懸念があり、服薬治療に加えて身体的、精神的負担を軽減する配慮を継続的に行う必要がある」と判断し、診断書を作成しました。
それを受け、保護者は、教諭らに対し、被害生徒の体調がすぐれない、そのために練習を休むとの連絡を度々行っていました。
吹奏楽部ではコンクールへの参加が予定されていましたが、それに向けた練習やコンクール当日・前日のスケジュールは厳しいものでした。これは中学に進学して間がない被害生徒にとっ
て心身ともに過酷なものでした。
2 学校側が負担軽減措置をとらなかった点についての裁判所の判断
以上の事実関係を踏まえ、裁判所は、そのため、被害生徒が「本件コンクールに出場することを希望していたとしても、本件診断書に従った練習不足により本件コンクールへの出場が困難であることが予想される場合には、被害児童両親と協議した上、本件コンクールへの出場を取り止めさせるなどの対応を検討すべきであった。また、被害児童が自らの意思で練習に参加した場合であっても、それ自体が不適応の表れとみることもできるのであり、主治医が適応障害の回復のために負担軽減が必要であると判断した以上、被害生徒に練習に参加したいとの気持ちがあったとしても、被害児童両親と協働して、練習への参加を断念させる方向での働きかけを行って、練習への参加を認めるべきではなかった」としました。
その上で、それにも関わらず顧問が被害生徒にコンクール向け練習に参加させ続けたものであり、学校側に配慮義務違反があるとしました。
3 精神疾患のある生徒に対する学校側の対応の在り方
少なくとも生徒について精神疾患の診断がなされ、医師から負担軽減すべきとの見解が示されている以上、学校側としてそれに沿った対応を取るべきは当然です。
児童が練習に参加したがったというのは何ら言い訳になりません。
本件判決は、事案との関係では極めて妥当な判断を示していると言えます。
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