執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
1 マンション・不動産購入による相続税の節税策
相続税を節税するため、借金をしてマンションを購入したり、不動産を建設したりすることは以前から広く行われてきました。
これは、不動産購入などのための借金を財産額から控除できること、購入資金より不動産価格が低くなることが多いことを利用したものです。
2 節税策を否定した最高裁令和4年4月19日判決
しかし、最高裁令和4年4月19日判決は、
・マンション購入・借り入れがなければ相続税の課税価格が6億円を超えるのに、節税策の結果、相続税が0になった
・被相続人らが、マンション購入・借り入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて購入・借り入れを企画し、実行した
という前提で、不動産の評価を通常の評価より高い評価とし、相続税を課税した税務署長の判断を是認しました。参照:マンションによる節税策を否定した判例
つまり、節税によっても相続税は免れないとしたのです。
3 マンション購入等による税金減免はすべて否定されたのか?
しかし、同判決によっても、マンション購入等による税の減免がすべて否定されることになったわけではありません。
まず、同判決は、6億円近い資産が0円評価になったことを重視しており、これほど極端な資産圧縮とならない場合、節税策が否定されない可能性はあるでしょう。
また、同判決は、節税目的であったことを税金減免を否定する理由としています。
前提として、本件被相続人は,当時90歳であった平成21年1月,信託銀行から6億3000万円を借り入れた上で,不動産を第三者から購入するとともに,当時91歳であった同年12月にも,同銀行から3億7800万円,別の人から4700万円を借り入れた上で,別の不動産を第三者から購入したものであるとされています。
このように、不動産を購入したのがかなり高齢になってからであり、自身において不動産を活用することがあまり想定されうる状況ではなかったという事情も重視されています。
そうであれば、借金をして不動産を購入して、自身もそれである程度の期間収益をあげ、結果的には相続税に関し節税という結果になった場合、節税の結果が否認されない可能性もあります。
いずれにせよ、このような場合には事前に弁護士に相談されるとよいでしょう。
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