手術後の脳梗塞(周術期脳梗塞、周術期脳卒中)と医療過誤

さいとうゆたか弁護士

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

新潟県の弁護士齋藤裕に医療過誤はお任せ下さい。

医療過誤のお悩みはご相談ください。

まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。

 

1 手術後の脳梗塞

心臓、肺、子宮等の手術後に脳卒中を来す事例が稀ながら認められます。

手術中または手術後30日以内に生ずる脳卒中を周術期脳卒中と言いますが、その99%は脳梗塞だとされています。

このような脳梗塞については重大な結果を招きうるため、医師としては発症予防等のために十分な対策をとる必要があり、それを怠った場合には損害賠償責任を負うこともあります。

以下、手術後に発生した脳梗塞についての裁判例である神戸地裁令和3年3月23日判決を見ていきます。

2 子宮摘出後の脳梗塞についての事例

神戸地裁令和3年3月23日判決は、患者が,病院において子宮全摘出の手術を受けたところ,同手術後の腹腔内出血を原因とする出血性ショックにより脳梗塞を発症した結果,後遺障害(高次脳機能障害)が残ったという事例について、病院側の過失を認め、賠償責任を認めています。

具体的には、医師としては、「血圧低下の推移,ショック症状とみられる四肢冷感や発汗,異常な白血球数などから,超音波検査に限界があることを踏まえ,本件病院の医療水準として,同日午後7時又は午後7時20分の時点で腹部CTを施行し,また出血の発生を疑い輸血の準備をすべき義務があったというべきである。」とし、出血を疑う兆候を踏まえCT等の検査を行い、また、輸血の準備をすべき義務があったのに、これを怠ったとして、医師に過失を認めました。

その上で、判決は、

・鑑定結果によれば,早期に輸血を行って全身状態の改善を図っていれば,再手術を行わずに保存的に経過をみることができた可能性があり,再手術が必要であったとしても輸血により重症化を防ぐことは可能であったこと

・鑑定結果によれば,同日午後8時の時点で原告の意識が清明であり,同日午後9時20分にショック状態を呈していることからすれば,同日午後8時より前に出血性ショックを来すほどの本件出血を防ぐことができた場合には本件脳梗塞の発生を回避できたこと

を踏まえ、午後7時20分の時点で必要な措置をとらなかった過失と脳梗塞の発症との間に因果関係を認め、脳梗塞により生じた損害について賠償責任を認めました。

同判決は、子宮摘出後の脳梗塞に関するものですが、他の手術後の脳梗塞についても妥当する基準を示しているものと考えられます。

3 新潟で医療過誤のお悩みはご相談ください

まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。

弁護士費用はこちらの記事をご参照ください。
さいとうゆたか法律事務所トップはこちらです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です