解雇が無効となった場合のバックペイはどの範囲で払われるのか?

労災、解雇問題

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 解雇と賃金、バックペイ

解雇がされた場合、通常、使用者は労働者に賃金を払わないようになります。

しかし、その解雇が無効である場合、使用者が労働者による労務の提供を拒否しているものとして賃金が発生し続けます。

これをバックペイと言います。

2 解雇無効でバックペイされる範囲

解雇無効と基本給など

給料のうち、基本給、諸手当、一時金等についてはバックペイの対象となるとされます。

解雇無効と通勤手当

他方、通勤手当のような実費弁償的色彩のあるもの、残業代については対象にならないとされています。

解雇無効と賞与、ボーナス

賃金が査定等によって算定される場合には、最低評価額等を基準に支払いをすべきとする裁判例と、査定がなされていないので査定により生ずる部分の支払いは命じられないとする裁判例とがあります。

この点、佐々木宗啓など「類型別 労働関係訴訟実務 改定版Ⅰ」46頁は、「賞与について、就業規則において、夏季と冬季(年末)等の支給時期と、「会社の業績等を勘案して定める。」旨の記載があるのみであった場合・・・各時期の賞与ごとに、使用者が算定基準を決定し、労働者に対する成績査定等をしない限り(又は労使で金額を合意しない限り)、具体的な権利として発生しないものであるところ、解雇された労働者について、使用者が成績査定(又は労使の金額の合意)をすることは考え難いから、具体的な権利として発生することはなく、請求できないというのが論理的な帰結となる」としているところです。

ここからは、裁判所は、賞与についてバックペイを認めない傾向にあると言えます。

ただし、佐々木宗啓など「類型別 労働関係訴訟実務 改定版Ⅰ」46頁も、「就業規則又は労働契約書等において、支給時期及び支給金額が具体的に算定できる程度に算定基準が定められている場合には、使用者の成績査定等を要することなく、具体的な権利として発生するから、解雇無効の場合にはこれを請求できると解すべきである」としています。

ですから、就業規則等で、基本給の2ケ月等、具体的な基準が定められている場合、解雇無効を争う場合にボーナスに請求をなしうることになります。

また、抽象的な基準をもとに、使用者が労働者にボーナス額を通知したような場合も、ボーナスの請求はありえます。

水戸地裁令和6年4月26日判決は、ボーナスの決定基準自体は抽象的であるとしつつ、「被告は、原告Aに対し、令和3年12月23日、令和3年の冬季賞与の額は13万7000円である旨通知をしたことが認められ、これにより、被告は原告Aの令和3年冬季賞与の額を上記同額に定めたものというべきである。」としてボーナス分の請求を認めました。

さらに、解雇が不法行為になるような場合には、ボーナスの具体的基準が定められていない場合でも、ボーナス分の損害賠償請求はありうるでしょう。

解雇無効とベースアップ

ベースアップによる昇給分については、蓋然性の高い基準に従い認めるべきと考えられます。

3 バックペイの際の中間収入控除

解雇された労働者が、生活のために別のところで就労していた場合、別のところで働いて得た賃金とバックペイの金額を調整することがあります。

これを中間収入控除と言います。

バックペイからの中間収入控除を認めた最高裁判決をご覧ください。

中間収入控除がされるのは、解雇されない場合には1ケ所からしか賃金を得られないのに、解雇されると2ケ所以上からもらえるようになるのは不当だからです。

この中間収入控除は、解雇された人が副業的な仕事に就いた場合には認められません。

解雇されなくても副業に就くことはありうるからです。

そして副業ではない仕事に就いて中間収入控除がされる場合、解雇期間の平均賃金の6割を超える部分を上限として控除がされることになります。

ですから中間利息控除がされても賃金の6割は最低限支払われることになります。

なお、不当労働行為として解雇がなされ、労働委員会でバックペイが命じられる場合、再就職の難易、就職先における労務の性質・内容及び賃金の多少、解雇が組合活動に及ぼした制約的効果等によっては、中間収入控除をしなくてもよいとされています。

ですから、不当労働行為による解雇事例では、訴訟でも勝てそうな場合であっても、不当労働行為救済申し立てをすることを検討すべきということになります(不当労働行為救済手続きでは、原職復帰を命じることもできるというメリットもあります)。

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