執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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在宅での療養の際、家族は医師の指導を踏まえ、必要な措置を患者に行っていくことになります。
しかし、その指導が不適切であることにより、患者の状態が悪化等した場合、医療機関側は賠償責任を負うことになります。
以下、どのような場合に、療養指導義務違反があったとされ、損害賠償責任が生ずるのか、ご説明します。
1 カニューレについての療養指導義務違反があったとされた裁判例
名古屋高裁令和6年4月18日判決は、喉頭軟化症で自宅療養をしていた幼児が、カニューレに事故が起こり、呼吸不能ないし呼吸困難となり、死亡するに至ったというケースについて、医療機関側の療養指導義務違反を認定し、損害賠償責任を認めています。
同判決は、医療機関側において、カニューレに関し、緊急性の高い換気不能の状況が生じた場合の対処方法について、何ら説明も指導もしておらず、気道確保の重要性についても説明していなかったとして、療養指導義務違反を認定しています。
その上で、適切な療養指導がなされていれば、家族において、気道確保のための適切な措置を講じ、死亡の結果を回避できたとして、死亡の結果についてまで損害賠償責任を認めています。
一般人である家族は当然、具体的な説明を受けていなければいざというときに対応できませんので、医師に高度な療養指導義務を認めた判断は妥当です。
2 薬剤の副作用についての説明を怠ったとさえた裁判例
高松高裁平成8年2月27日判決は、薬剤の副作用で患者が亡くなったケースで、医師において、副作用について説明すべき義務(療養指導義務違反)があったとして、損害賠償責任を認めています。
同判決は、前提として、患者の退院に際しては、医師の観察が及ばないところで服薬することになるので、その副用の結果が重大であれば、発症の可能性が極めて少ない場合であっても、服薬上の留意点を具体的に指導すべき義務があるとします。
その上で同判決は、当該事案において、医師としては、「ごくまれには副作用による皮膚の病気が起こることもあるので、かゆみや発疹があったときにはすぐに連絡するように。」という程度の具体的な注意を与える義務があったのに、その義務を怠ったとして損害賠償責任を認めたのです。
重大な副作用のある薬剤を投与する場合の退院時の指導一般に参考になる裁判例と言えます。
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