交通事故により脳挫傷となった場合、どのような損害賠償請求ができるか?

さいとうゆたか弁護士

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 脳挫傷とは?

脳挫傷は、脳に外的な衝撃が加わることにより、脳そのものが損傷を受ける状態をいいます。

頭部単純CT等で診断がなされることになります。参照:脳挫傷の説明

脳挫傷は交通事故で生ずることも多く、死亡に至ったり、高次脳機能障害を含む重篤な後遺障害を残すこともあります。

交通事故での脳挫傷で死亡した場合については、

交通死亡事故の逸失利益

交通死亡事故の慰謝料

の記事をご参照ください。

脳挫傷により高次脳機能障害となった場合については、

高次脳機能障害の場合の損害額

自賠責における高次脳機能障害の認定

をご参照ください。

2 軽い脳挫傷と後遺障害

脳挫傷については、症状が軽微な場合もあり、そのようなときには後遺障害があるのかどうか争われることがあります。

神戸地裁平成29年12月13日判決は、脳挫傷を認定しつつ、被害者が主張する頭痛は事故当初は存在しなかった等として、後遺障害がないものとしました。

他方、高松高裁平成29年12月1日判決は、10歳の被害者について脳挫傷による後遺障害が争われた事例で、「現に,「時々立ちくらみがする」との自覚症状が存在する上,将来的にてんかんが発症するリスクがあるというのであるから,被控訴人が症状固定時ではいかなる職業に従事するか不明であることも併せ考慮すると,上記後遺障害も労働能力に一定の影響を及ぼすものと認めるのが相当である。」として、9%の労働能力喪失率の複視とあわせ、20%の労働能力が喪失したとしました。

同判決は、労働能力喪失期間について、症状の器質的な原因が明確だとして、10年に限らず、就労可能年齢である67歳まで認めています。

現時点では明確な症状がなくとも、脳挫傷が将来的な症状をもたらす可能性があることから、特に年少者について、将来的な症状のリスクも踏まえて後遺障害認定をした高松高裁の判断が妥当だと思われます。

また、京都地裁令和4年3月17日判決は、脳挫傷の被害者に生じたイライラとして、短気だという症状について、他覚的所見の裏付けがあるとして、12級の後遺障害に該当するとしました。

しかし、仕事への具体的な支障は生じていないとして、労働能力喪失期間は10年にとどめています。

10年にとどめる根拠が薄弱だと言わなくてはなりません。

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