
執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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ロマンス詐欺、振り込め詐欺、SNSでの投資詐欺で被害にあった場合、基本的には被害回復は簡単ではなく、回収ができない場合が多いです。
直接の加害者はどこの誰かわからず、賠償請求をしても回収は極めて困難です。
しかし、まったく被害回復ができないわけではなく、被害回復ができるケースもあります。
以下、ロマンス詐欺等で被害にあった場合にどのように被害を回復するか、ご説明します。
1 詐欺に使われた口座の凍結
まず急いで行わないといけないのが口座の凍結です。
振込をした口座の金融機関ともよりの警察にすぐさま連絡をして、凍結を依頼してください。
仮に振込をした口座にお金が残っていた場合、その口座からお金が回収できることもあります。
凍結された口座については、広く公告され、その口座に振り込みをさせられた被害者がその口座からお金をもらうことができることになります。参照:振り込め詐欺救済法に基づく公告
まさに時間との勝負ですので、一刻も早く対応してください。
2 詐欺に利用された口座等の名義人への請求
振込をさせられた口座等が加害者本人の名義の口座であることはほぼありません。
しかし、詐欺に利用された口座等を提供した人に対し損害賠償請求をすることができる可能性があります。
東京地裁令和5年2月22日判決は、振り込め詐欺の被害者から、詐欺に利用された口座の名義人に対する損害賠償請求を認めています。
同判決は、「いわゆる振り込め詐欺や闇金業者等による預金口座の悪用が大きな社会問題となっている現状において、自己名義の預金口座のキャッシュカード及び暗証番号を第三者に提供する行為がおよそ通常の商取引からかい離した、犯罪につながりかねないものであることは、社会常識として一般に明らかと言える」として、口座を提供した者の過失、損害賠償責任を認めています。
口座を提供した人は、その口座に振り込まれたお金についてのみ賠償責任を負うのか(限定説)、自分が提供した以外の口座も含めてすべての口座に振り込まれたお金について賠償責任を負うのか(全体説)が問題となりえます。この点、東京地裁令和6年6月6日判決は、口座提供が詐欺行為全体を容易にしたとして、全体の口座について口座提供者は損害賠償責任を負うとしました(消費者法ニュースNO221、五反章裕弁護士による記事)。
全体説に立つと、口座提供者の中に1人でも弁償できる人がいれば全額の賠償を受けることができる可能性が出てくるので、損害回復が極めてやりやすくなると言えます。
確かに、口座を売るような人に資力があるのかという問題はありえます。
しかし、口座を売ることは犯罪ですし、その刑事事件の中で、親族等がお金を用意して賠償をすることもありますので、諦めないことが重要です。
口座以外でも、詐欺に利用される道具を提供した者について損害賠償責任が認められることはありうるでしょう。
3 暴力団が絡んだ詐欺行為と損害賠償
暴対法31条の2は以下のとおり定めます。
「指定暴力団の代表者等は、当該指定暴力団の指定暴力団員が威力利用資金獲得行為(当該指定暴力団の威力を利用して生計の維持、財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得、又は当該資金を得るために必要な地位を得る行為をいう。以下この条において同じ。)を行うについて他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」 参照:暴対法
つまり、一定の場合には、指定暴力団の組長等は、組員による特殊詐欺により生じた損害について損害賠償義務を負います。
ここで、威力利用資金獲得行為について、東京地裁令和5年4月27日判決は、「当該指定暴力団の威力を利用して」とは、指定暴力団員が、当該指定暴力団に所属していることにより、資金獲得活動を効果的に行うための影響力又は便益を利用することをいい、当該指定暴力団の指定暴力団員としての地位と資金獲得活動とが結び付いている一切の場合をいう趣旨であって、必ずしも当該暴力団の威力が被害者に対して直接示されることを要しないものと解するのが相当である。」としています。
その上で、同判決は、受け子らが、詐欺行為を統制する暴力団に恐怖感を感じつつ詐欺行為をしていたとして、威力利用資金獲得行為該当性があったとしました。参照:特殊詐欺について暴力団組長の損害賠償責任を認めた裁判例
4 ロマンス詐欺、振り込め詐欺、SNSでの投資詐欺でのお悩みはご相談ください
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