執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 自賠法と既存障害
すでに障害を負っている人が、交通事故でさらに被害にあい障害が残った場合、もともとあった障害分を考慮して、つまりその分について減額をして損害賠償がなされることがあります。
損害賠償については、既存障害と慰謝料、既存障害と逸失利益をご参照ください。
自賠責に関しては、自賠法施行令2条2項が、すでに障害がある人が交通事故の被害を受けたことによって「同一部位」に後遺障害の程度を増した場合には、交通事故の結果生じた後遺障害の等級に応じた保険金額からもともとの障害の等級に応じた保険金額を引いて、保険金を支払うこととしています。
この「同一部位」については、自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準(以下、「支払基準」といいます)が定めています。参照:自賠責における既存障害の扱い
具体的には、支払基準は、等級の認定は、原則として労災保険における障害の等級認定の基準に準じて行うとしています。
そして、労災保険の認定基準は、同一の部位=同一系列として、35種類の系列を定めています。
ですから、ある障害をもった人について、交通事故により、その障害と労災保険上同じ系列の障害が生じた場合、交通事故により生じた障害についての保険金額から、もともとの障害に対応する保険金額が控除されることになりそうです。
2 自賠法と既存障害についての裁判例の立場
しかし、そのような立場を貫くと、例えば、膝痛と高次脳機能障害はともに「神経系統の機能または精神の障害」という「同一部位」に属することになり、高次脳機能障害の自賠責の保険金額から、膝痛の保険金額が引かれることになり、不合理です。
この点、広島地裁令和5年6月29日判決は、「同一部位」かどうかは、「現存障害に係る損害から既存障害に係る損害を控除しないと、保険会社が当該交通事故と相当因果関係のない損害について賠償金を支払うことになるか否かで判断すべき」として、高次脳機能障害の保険金額から膝痛の保険金額を控除すべきではないとしました。
裁判所は、既存障害と現存障害が35種類の系列に該当するというだけで既存障害分の保険金額の控除はしない傾向があるようであり、穏当かと思います。
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