大腸がんの見落としについてどのような場合に損害賠償請求できるか?(医療過誤)

さいとうゆたか弁護士

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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近年患者が増えてきている大腸がんは、見落としにより死亡等の結果に結び付くことがあり、多くの裁判例において賠償責任が認められてきています。

以下、どのような場合において、大腸がんの見落としが損害賠償請求の対象となるのか、みていきます。

1 大腸がんの見落としについて医療機関に損害賠償責任を認めた福岡地裁平成25年11月1日判決

同判決は、患者に、鉄欠乏性貧血、便秘が慢性的に続き、かつ、便潜血検査結果が陽性であった患者について、患者を診ていたクリニックの医師が、他の病院に精査を依頼し、CEA検査等の血液検査,CT検査,エコー検査,一部ではあるもの内視鏡検査がなされた病変なしとされたという事案において、大腸がんについて経過観察をする義務はあるものの、それ以上に高度医療機関に大腸全体の内視鏡検査まで要請する義務はないとしました。

しかし、その後も便潜血が継続したのに、非侵襲的な検査方法であるCEA検査やエコー検査すらしなかったことについて、注意義務違反があるとしました。

結果として、医師が適切な検査を行っていたら救命できたとは言えないとして死亡との因果関係は認められませんでしたが、大腸がんにり患していることの確認が約半年遅れたことで著しい精神的苦痛を被ったとして、金180万円の慰謝料が認められました。参照:大腸がんの見落としについての福岡地裁判決

2 大腸がんの見通しについて医療機関側に損害賠償責任を認めた東京地裁平成19年8月24日判決

同判決は、患者が血便を訴えたのに対する対応について、医療機関において外科受診を勧めたことを理由に義務違反はないとしました。

その後、患者は、外科の医師に対し、血便,下痢,便柱の狭小,腹部の張り,体重の減少,軟便,肛門
の腫れ,出血を訴えましたが、医師は、下部消化器官の検査をしませんでした。

裁判所は、このような症状があった場合には、大腸がんを疑い、下部消化器官の検査をただちにすべき義務があったとし、それをしなかったことについて過失を認定しました。

死亡との因果関係については、適切な検査をしても救命できた高度の蓋然性があったとは言えないとして認めませんでした。

しかし、死亡時点で生存していた可能性を侵害したとして150万円の慰謝料を認めています。参照:大腸がんの見通しについて損害賠償責任を認めた東京地裁判決

3 どのような場合に大腸がんの見落としについて損害賠償義務が認められるか?

各裁判例を踏まえると、血便を代表とする大腸がんの症状があるのに、速やかに適切な検査等を行わなかった場合には損害賠償責任が認められるということがわかります。

そして、死亡との因果関係までは認めない裁判例も多いですが、症状を発見しえた時期、大腸がんが存在していた証拠の有無等によっては因果関係が認められる場合もありうるところです。

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