執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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最近、大雨、洪水により作業員が死傷する労災事故が頻発しています。
大雨、洪水は天災という側面がありますが、労災に遭った労働者は労災保険や公務災害の支給を受けるほかに、損害賠償請求をすることができるでしょうか?
以下、見ていきます。
1 トンネル、下水管、マンホールに水が流れ込む事故と損害賠償責任
東京高裁平成10年4月27日判決は、トンネルに水が流れ込み、仮締切が決壊して、その中にいた作業員が溺死した労災事故について、発注者である県の現場事務所職員に作業員に退避の連絡をすべき義務があったのに、これを怠ったとして業務上過失致死罪の成立を認めました。
発注者が労働者に対して直接安全配慮義務違反を負うケースは多くはありません。
しかし、このケースでは、仮締切は、発注者である県において行っていました。
そのため、同判決は、「発注者が、仮締切の設置・管理に当たって、工事施工上の安全確保に配慮すべき義務を有し、具体的状況として仮締切の決壊の危険があったのであるから、その決壊による大量の水の流入による溺死等の危険から免れさせるため、トンネル内で作業をする作業員らを緊急退避させる措置をとるべき義務(以下、緊急退避措置義務という。)が、発注者にあった」としました。
なお、最高裁平成13年2月7日決定は上記高裁判決の結論を維持しました。
トンネル、下水道管、マンホール等、水が流れ込んだ場合に、その中にいる作業員に危害が及ぶことが容易に想定される施設については、請負業者において作業員を危険な状況で作業に従事させない義務、危険な状況になったら退避させる義務を負うでしょう。
さらに施設の管理状況によっては、発注者がかかる義務を負う可能性もあります。
2 大雨による土石流、土砂崩れ、崩落に伴う事故と損害賠償責任
東京高裁平成20年8月20日判決は、土石流により多くの労働者が亡くなった労災事故について、予見可能性を認めず、発注者である国、県の損害賠償責任を認めませんでした。
同判決は、現地は崩落が発生しやすい地であったものの、直前に大量の雨が降る等しなかったことなどをもって予見可能性が認められないとする根拠としました。
逆に言えば、土石流、土砂崩れ、崩落が発生しやすい地において、直前に大量の雨が降る等した場合、発注者や請負業者において予見可能性が認められ、労働者に作業をさせない、あるいは退避させるなどの安全配慮義務が認められるというべきでしょう。
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以上の他、労衛則等で大雨時に作業が禁止されているのに作業を従事させる等した場合、損害賠償責任が生じうるのは当然です。参照:労衛則等で大雨時に作業が禁止される作業等
当職が担当したANAクラウンプラザホテル新潟過労労災事件についての記事
もご参照ください。
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