どのような場合に院内感染について医療機関に対する損害賠償が認められるか?

さいとうゆたか弁護士

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 新潟市民病院レジオネラ菌感染事件と院内感染の医療過誤

私が担当している、新潟市民病院レジオネラ菌感染事件をはじめ、院内感染により重大な事態が生ずることはまれではありません。

以下、どのような場合に院内感染について医療機関側の損害賠償責任が認められるのか、みていきます。

2 院内感染と早期発見、治療義務違反

横浜地裁平成24年5月24日判決は、MRSAに感染した新生児に重篤な障害が残った事件について、医療機関側に、早期発見、治療義務違反があったとして、損害賠償を命じました。

同判決は、

ⅰ 被害者において、39.5度の高熱を発し,CRP値も高値となっており,何らかの感染症の発症を疑うべき状態になっていたこと

ⅱ 医師も感染症罹患の診断をしていたこと

ⅲ 3月3日当時,病院の新生児室におけるMRSA感染児は既に5名に達しており,前後においても立て続けにMRSA感染児の存在が判明する状況になっていたこと

ⅳ 被害者について,別の感染源が具体的に想定されるような事情があったとは認められないこと

から,起因菌として最も可能性が高いと考えられるのはMRSAであったということができるとしました。

その上で、MRSAが多くの抗生物質に対して耐性を持つ細菌であって,その治療は困難化することも考えられることから,医師としては,たとえ菌種の同定がされていないとしても,MRSA感染の危険性が具体的に考えられる以上,MRSAに感受性があり得る抗菌薬の投与など,MRSA感染を想定した治療を開始すべきであったのに、しなかったとして、義務違反を認め、医療機関側の損害賠償義務を認定しました。

MRSA等の重大な結果をもたらしうる菌については、迅速な治療が求められますし、それがなされない場合には損害賠償責任が発生することもあります。

カテーテルが感染源である場合には、早期にカテーテルを抜去する義務があり、これを怠った場合には損害賠償が認められる可能性があります。参照:院内感染時にカテーテル早期抜去しなかったとして損害賠償を認めた裁判例

3 院内感染を防止する措置義務違反

新潟地裁平成18年3月27日判決は、胃がん摘出手術を受けた患者が、点滴用カテーテルから細菌にし、敗血症を発症し、死亡したという事案について、医療機関側の院内感染防止義務違反を認めています。

同判決は、「皮膚消毒の徹底、カテーテル操作時の手指の消毒の徹底、点滴ルート変更時の清潔保持等の徹底、三方活栓の清潔保持等の徹底」が図られておらず、義務違反があったとしています。

院内感染対策マニュアルなどが要求するレベルの院内感染防止措置もなされていなかったような場合には義務違反が認められる可能性は高いでしょう。

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