修学費用返還制度・お礼奉公の違法性(修学資金、奨学金、教育補助金、研修費・資格取得費用)

さいとうゆたか弁護士

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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看護師の看護学校費用、会社員の留学費用等、会社等が労働者に教育のために金銭を貸し付け、退職をした場合には返還させるという制度の効力が問題となることが多々あります。

看護師の世界ではこのような制度はお礼奉公とも言われます。

以下、その合法性について検討をします。

1 修学費用返還制度を検討する視点

修学費用が使用者から労働者に貸し付けられているなら、退職したときを返済期限として設定し、退職時に返済を求めるのは何ら問題がないようにも思われます。

この点、労基法16条が、労働契約の不履行について違約金を定め、損害賠償額を予定する契約をしてはならないとしていることから、退職時に修学費用返還等を求めることが、実質として違約金等に該当しないか、労基法16条に該当しないかが問題となります。

裁判所は、修学費用等の実質をみて判断し、それが貸金ではなく、実質的に違約金と言えるようなケースには、返還義務を認めないという扱いをしてきました。

2 修学費用返還義務についての裁判例

東京地裁令和3年12月2日判決は、研修が使用者の業務として実施されたとして、退職時にその費用の返還を労働者に求めることは許されないとしました。

業務性を認めた理由としては、

ⅰ 本件研修は,派遣先や研修内容の決定について使用者側の意向が相当程度反映されていること

ⅱ 本件研修を通じて得られた知見や人脈は本件研修終了後の使用者における業務に生かし得るものであったこと

ⅲ 使用者等以外の職場での有用性は限定的なものであったといえ,一般的な留学とは性質を異にする部分が少なくなかったこと

ⅳ 研修中に労働者が頻繁に業務としての調査を行っていたこと

という事情があげられています。

医療機関での勤務を前提として貸し付けられた看護学校費用の返還請求が認められなかった事例(大阪地裁平成14年11月1日判決)、医療機関での勤務を前提として貸し付けられた医師に対する奨学金の返還請求が認められなかった事例(高松高裁平成15年3月14日判決)もあります。

以上から、使用者の業務に従事させるために、業務に必要な研修を受けさせる場合の費用については本来使用者負担であり、貸し付けという形式をとったとしても、返還請求はできないということになります。

逆に業務との関連性が薄い留学費用等については返還請求が可能ということになります。

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