重量物の下敷きになる労災事故、労働災害事故と損害賠償

交通事故
執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。 重量物の下敷きになる労災事故は死亡などの重大な結果となることも多いです。 当然、そのような事故で死傷をした被害者等については労災保険を請求できることが多いですが、さらに使用者に対して損害賠償請求できることもあります。 以下、解説します。

1 台車が転倒し、その下敷きとなった労災事故についての裁判例

徳島地裁令和4年4月11日判決は、動かしていた台車が転倒し、台車や積載物の下敷きとなって労働者が死亡した労災事故について、使用者に損害賠償を命じました。 同判決は、使用者は、「台車の端のスペースにまとめて積み込むなど、重心が偏った状態で運搬することのないよう作業標準を作成したり、重心の偏りによる転倒の危険について危険予知訓練や安全教育を行ったり、本件台車に代えて、より安定性が高く転倒の危険性がない台車を使用するなどの対策を講じる義務を負っていた」としました。 その上で、使用者が、台車の端から積載をさせていたとして、安全配慮義務違反があったとして、損害賠償を命じました。 このように、転倒すると危険な物に積載をする場合には、重心が偏らないような積載がなされるよう、作業標準を作成等すべき安全配慮義務が認められる可能性があります。

2 壁の崩壊で下敷きとなった労災事故についての裁判例

広島高裁平成22年4月23日判決は、コンクリート壁の崩壊により、下の方で作業していた労働者が下敷きとなって死亡した労災事故について、使用者側に損害賠償を認めました。 同判決は、使用者側としては、「壁の構造を十分に理解した上で,下請業者の責任者及び工事従事者に適切な指示を与える等の方法により,壁面の崩落による労働者の危険を回避すべき職務上の注意義務を負っていた」のに、壁の構造を確認せず、アンカーを打つ等の安全対策もしなかったとして、安全配慮義務違反を認め、損害賠償責任も認めました。 壁等、崩落したときに重大な事態を招きかねない構造物の付近で作業する場合、使用者は崩落等の危険がないかどうか事前に確認をし、その確認を踏まえた安全対策を講ずる義務を負います。

3 鈑桁の倒壊で下敷きとなった労災事故についての裁判例

東京地裁平成17年7月27日判決は、クレーンを操作していたところ、ハッカーが鈑桁にぶつかり、それが倒壊し、近くにいた労働者が死亡した労災事故について判断をしています。 同判決は、クレーンを操作していた労働者が周囲に注意せずに操作をしていたことを過失ととらえるとともに、鈑桁に転倒防止措置を行う、鈑桁が転倒する可能性のある場所に労働者を立ち入らせないなどの安全配慮義務を履行しなかったとして、損害賠償を命じました。 倒壊の可能性がある重量物については、固定をすること、周囲に労働者を立ち入らせないことが安全配慮義務の内容となりえます。

4 橋桁の落下で下敷きとなった労災事故についての裁判例

広島高裁平成10年3月24日判決は、工事中に橋桁が落下し、下にいた労働者が死亡した労災事故について判断をしています。 同判決は、ジャッキ架台を適正に設置せず、また、ジャッキヘッドを適切な箇所に当てなかったことが事故原因だとしています。 その上で、同判決は、かかる作業についての十分な知識を持っている者に指揮、監督を行わせなかったことをもって安全配慮義務違反を認めました。 特に、重大な結果を招きかねない重量物の取扱いについては、作業についての知識ある者に作業の監督をさせる必要があるのです。

5 クレーンからの落下物で下敷きとなった労災事故についての裁判例

名古屋地裁平成9年4月9日判決は、クレーンからの落下物により労働者が死亡した労災事故について判断をしています。 同判決は、クレーン操作者について、「本件クレーンの親ワイヤーと子ワイヤーとを同時に使用し、しかも、空中に吊り上げたままこれを立て起こす作業をした」点に過失があるとして、使用者に賠償責任を認めました。 使用者としては、適切なクレーン操作について労働者に指導監督を行うべきであり、それを怠った場合には安全配慮義務違反が認められる可能性があります。

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