ショベルカーを使っての工事中の労災事故・労働災害事故と損害賠償

交通事故
執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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ショベルカーを使った工事での労災事故は重大な結果を招くことがあります。 ショベルカーを使用して作業をする際に労働安全衛生規則に違反した場合、安全配慮義務違反とされる可能性が高くなります。
以下、ショベルカーを使った工事での労災事故で、どのような場合に安全配慮義務違反、損害賠償責任が認められるか、みていきます。

1 足場が悪い現場でショベルカーを使用する場合の安全配慮義務

大阪地裁平成57年12月24日判決は、足場の悪い現場でショベルカーを使用していたところ、ショベルカーが低地に転落し、労働者が死亡したという労災事故について、使用者側の安全配慮義務違反を認めました。
同判決は、足場が良好ではない現場について、現場監督には、
ⅰ ショベルカーを運転させるにあたつては運転者の運転資格を確認すること
ⅱ その安全運転をするための指導や安全運転のための誘導員の配置等をすること。そのことにより、 ショベルカーが埋立中の土砂の端(路肩)に行き過ぎないようすること
という安全配慮義務があるとし、その違反があったということで損害賠償を命じました。
足場が悪い現場では、事故の発生可能性が高まることから、作業位置などについて細心の監督を行う必要があります。

2 ショベルカー運転について教育を受けていない者に運転をさせないという安全配慮義務

名古屋地裁昭和51年6月30日判決は、ショベルカーの運転について教育を受けていない者がショベルカーを運転し、事故を起こしたという事案についての判決です。
同判決は、「一般にシヨベルカーの運転には危険が伴い、ことにその運転について教育を受けていない者が見よう見まねでこれを運転するときは事故を惹起し易いのであるから、本件シヨベルカーの専任運転手が不在のとき前認定のような理由からダンプカーの運転手がこれを運転しようとしても、使用者として従業員の生命身体の安全をはかるため、かかる行為を禁止すべき義務」があるとしました。
このように、使用者には、ショベルカーを運転させるについては、労働者に十分な教育を受けさせ、教育を受けていない者にはショベルカーを運転させない安全配慮義務があります。

3 ショベルカーが稼働する場所の危険性についての調査義務

岩石採取場で岩石が崩落してきて、ショベルカー等に乗っていた労働者等が死亡したという事故の刑事裁判の判決である岡山地裁平成18年4月20日判決は、使用者側に地盤調査等の義務の怠りはないとして無罪判決を言い渡しています。
同判決は、使用者側において地質、地形等について調査をしており、それを超えてボーリング調査等をするべき兆候等もなかったとして、ボーリング調査等までする義務はなかったとしました。
ショベルカーを稼働させる使用者は、現場の安全性を調査する義務がありますが、どの程度の調査をするかは、危険性を示す兆候の存在などによって違ってくるでしょう・ 参照:ショベルカー事故についての裁判例

4 労働安全衛生規則を踏まえ、ショベルカーに関して安全配慮義務違反が認められる場合

労働安全衛生規則は、ショベルカーの操作等に関し、使用者が守るべき義務を規定しています。
これらに違反し、事故が発生した場合、安全配慮義務違反として評価される可能性があります。
以下、主要な義務をあげます。参照:労働安全衛生規則 第2編 第2章 建設機械等|安全衛生情報センター
・前照灯の設置(労働安全衛生規則152条)
・岩石の落下等により労働者に危険が生じうる現場では強固なヘッドガードを設ける(労働安全衛生規則153条)
・転落、落石等に備え、作業現場を予め調査(労働安全衛生規則154条)
・作業計画を定め、それに基づき工事実施。作業計画の労働者への周知(労働安全衛生規則155条)
・地形、地質に応じた制限速度の設定(労働安全衛生規則156条)
・運行経路の路肩崩落・不同沈下防止、幅員確保、必要な場合に誘導員確保(労働安全衛生規則157条)
・路肩、傾斜地等、転落のおそれがある場合には、転倒時保護構造やシートベルトを設置するとともに、労働者にシートベルト着用指導(労働安全衛生規則157条の2)
・ショベルカーに人が接触する危険がある場所について立ち入り禁止の表示や誘導員配置(労働安全衛生規則158条)
・ショベルカーを離れるときは、原動機をとめ、ブレーキをかけさせる(労働安全衛生規則160条)
・積み下ろしは平たんで堅固な場所で行う、道板は十分な長さ・幅・強度のものを使い、適当な勾配で適切にとりつける、盛り土・仮設台は十分な幅・強度、適切な勾配を確保する(労働安全衛生規則161条)
・パワーショベルによる荷の吊り上げなど、主たる使途以外に使用しない(労働安全衛生規則164条)

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