執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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新生児や乳児に対する医療過誤については数も多いですが、以下、代表的な裁判例について紹介をします。
1 新生児について聴診をきちんとすべき義務の懈怠を認めた裁判例
東京地裁平成24年10月25日判決は、産科医療機関で大動脈弁狭窄症で新生児が死亡したという事案について、医療機関側に、聴診等をすべき義務があったのに、これを怠ったとして、損害賠償を認めました。
裁判所の認定によると、医療機関は出生から退院直前まで聴診をせず、退院時に形ばかりの聴診を行ったものの、心雑音の異常を発見できなかったものであり、適切に聴診すべき義務の懈怠は明らかと言えるでしょう。
新生児等について、聴診等の基本的な検査を怠り、重大な結果が生じた場合、損害賠償責任が生ずる可能性があるということになります。
2 新生児について小児科医が別の診療科の医師からアドバイスをもらわなかったことについて義務違反を認めた裁判例
静岡地裁平成12年3月21日判決は、乳児がMRSAにり患し、結果として右大腿骨骨端の成長が阻害されるに至ったという事案について、医療機関側に賠償責任を認めました。
裁判所は、乳児の右下肢を股関節部で伸展させようとすると激しく泣く等の状況があったことを踏まえ、小児科医師においては整形外科医師に診断や治療についてアドバイスを求めていれば結果を回避できた等として、医療機関側の損害賠償責任を認めました。
小児科医師においてはすべての症例について適切に対応するのは困難ですし、症状に応じて他診療科の医師にアドバイスを求めたり、転医することが求められます。
3 新生児についての観察義務違反を認めた裁判例
仙台地裁平成14年12月12日判決は、新生児に生じた敗血症の結果、後遺症が残ったという事案で、医療機関側の賠償責任を認めました。
同判決は、分娩前破水、「哺乳力不良」,「四肢冷却」,「全身色不良」、「感染症ベビーの様の皮ふ色」,「腹満」「軽いけいれん様発作あり」等から敗血症を疑うべきだったのに、医師において観察や転医を怠ったとして、義務違反を認めています。参照:
乳児の敗血症について医療過誤を認めた判決
新生児の場合、医師には、新生児の症状だけではなく、分娩前破水等出産前の状況等も踏まえ、慎重な観察が求められる場合もあります。
4 K2シロップ剤の投与をしなかったことで義務違反を認めた裁判例
名古屋高裁平成9年9月30日判決は、乳児ビタミンK欠乏性出血症の発症について、小児科医において、K2シロップの投与等をしなかったことに義務違反があったとして、損害賠償を命じました。
ホメオパシーの観点からK2シロップの投与をしない方針の助産師もいまだにいるようですが、投与しなかったがために重篤な結果が生じた場合、損害賠償責任が生ずる可能性があることになります。
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