ベルトコンベアによる労災事故があったとき、どのような場合に損害賠償請求できるか?

さいとうゆたか弁護士
執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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工場で多用されているベルトコンベアをめぐる労災事故は決して珍しいものではありません。
以下、どのような場合に、ベルトコンベアによる労災事故について損害賠償請求できるのか、説明します。

ベルトコンベア再開時の声掛けなど

東京地裁平成22年2月19日判決は、労働者が一旦停止したベルトコンベアが再稼動した際にベルトコンベアで左足を挟まれる事故にあったという件について、使用者側の安全配慮義務違反を認めており、参考になるのでご紹介します。
まず、裁判所は、以下のとおり述べ、一旦停止したベルトコンベアを再開させるについては、声掛けや周囲の労働者の安全確認が必要だとしました。
「本件においては,ベルトコンベアが停止されたのは,作業員が選別した金属を入れる箱の交換が必要となったからであり,その際に,Cが同人自身の判断により,排出用のベルトコンベアのローラーに絡まっていたゴミの除去作業を行い,メインベルトコンベア脇の定位置から移動してCの作業を見ていた原告が本件事故に遭ったのであるから,ベルトコンベアの掃除,給油,検査又は修理の作業を行うためにベルトコンベアの運転が停止された場合ではないものの,上記労働安全衛生法及び同規則の趣旨に照らすと,機械の不具合以外の理由でベルトコンベアが停止され,その際に,作業員が持ち場を離れる場合,あるいは作業員が持ち場を離れて,ベルトコンベアの周辺で保守等の作業を行う場合にも,ベルトコンベアを再始動するに当たっては,スイッチ操作を行うこととされた労働者が声かけ等を行い,ベルトコンベア周辺にいる労働者の安全を確認してからスイッチ操作を行うなど,ベルトコンベア周辺にいる労働者に危険が及ぶことを防ぐための措置をとることが不可欠であり,事業者である被告は,上記作業についての役割分担と作業手順等の注意事項を作業員に徹底させるなど,ベルトコンベアによる事故を防止するための措置をとるべき義務を負っていたと解するのが相当である。」
その上で、以下のとおり、当該訴訟の使用者側の現場では、ベルトコンベア再開の際の注意事項を従業員に徹底などさせていなかったとして、安全配慮義務違反を認めました。
「しかしながら,ベルトコンベアが,機械の不具合以外の理由で停止され,その際に,作業員が持ち場を離れる場合,あるいは作業員が持ち場を離れてベルトコンベア周辺で保守等の作業を行う場合について,被告が上記のような役割分担やベルトコンベアの再始動に関する作業手順等の注意事項を作業員に徹底させるなどの措置をとっていたと認めるに足りる証拠はない。また,被告の作業現場では,作業開始前のミーティングにおいて,ベルトコンベアでの選別作業を行う際の役割分担とベルトコンベアにゴミが詰まるなどの不具合が生じた場合の作業手順等の注意事項について作業員に対し説明と注意が行われていたが,そのようなミーティングの役割分担及び注意事項の厳守が必ずしも作業員に徹底されていたと認められない」
このように、ベルトコンベア作業に当たって、使用者としては一旦停止したベルトコンベアを再開させるについては周囲の労働者に声がけなどを行う必要がありますし、そのような注意事項を従業員に周知しておく必要があることになります。このような内容の安全配慮義務に違反した場合には損害賠償責任が生じうることになります。

ベルトコンベアに多いをつけなかったことによる損害賠償

札幌地裁昭和48年1月31日判決は、以下のとおり述べて、ベルトコンベアの歯車に巻き込まれて労働者がケガをしたというケースで、にベルトコンベアの危険個所に覆いをつけなかったことについて、土地工作物の瑕疵にあたるとして、損害賠償義務を認めました。
「ネツトコンベア機のチエーンは、人がこれに接触すると身体の一部が機械に巻き込まれて負傷する危険が大きく、しかもチエーンは、コンベアの下部に位置していたとはいえ、コンベアの脇から手足を伸ばせば容易に接触する位置にあり、ことに掃除その他の必要から身体の一部がコンベアの下に入つた場合には絶えず接触の危険にさらされることがあきらかである。そうすると、このような危険の多い装置には、従業員の身体の安全のために、チエーン自体に覆いをとりつけるかあるいは人の身体がコンベアの下部に入らないように囲いを設けるなどの必要があつたのに、本件事故当時被告は、このような安全のための装置を設けていなかつたこと前認定のとおりであるから、右ベルトコンベア機の設置には瑕疵があり、ひいては土地の工作物である被告の琴似工場の生産設備に瑕疵があつたといわなければならない。」
このように、ベルトコンベアの危険個所については、手を近づけないなどの指導をすべきはもちろん、覆いを設置するなどする必要があり、そのような対策を行わなかった結果、事故が発生した場合、疎に害賠償責任が生ずる可能性があります。

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