
執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
労災のお悩みはご相談ください。 まずはお電話(
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メールでご連絡ください。 感電による労災は比較的目にすることの多い労災です。 以下、どのような場合に被災労働者が使用者に損害賠償請求できるか、みていきます。 目次 電動工具の点検不備の安全配慮義務違反
アースをしなかった安全配慮義務違反 絶縁不良による感電と安全配慮義務違反 防護具を着用させなかったことと安全配慮義務違反電動工具の点検不備の安全配慮義務違反
東京地裁平成22年3月19日判決は、以下のとおり述べ、感電により転倒した発生した労災について使用者の損害賠償責任を認めています。 「本件事故の態様は,ハンマードリルの電気ケーブルの被覆が一部損傷していたためにハンマードリルを使用して作業していた作業員が感電したというもので,本件工事の現場において発生することを想定することが困難な事故ではないのであり,また,電動工具の電気ケーブルに損傷がないかを点検していれば,本件のような事故を容易に防止することは十分に可能ということができる。」 「しかるに,両被告は,本件工事の現場に電動工具を持ち込む際に当該工具の点検を行うものの,その後の作業を通じ,工具本体や電気ケーブル等に摩耗等の劣化が生じることは十分に想定されるのに,持込時以降は,各工具の使用前において当該工具を使用する作業員にその点検をさせていたにすぎず,始業前における作業員による点検についても,両被告は,作業員に対して細部まで指導していなかった」等として、裁判所は、電動工具の点検体制を十分なものにしておかなかったことで使用者側に安全配慮義務違反を認めています。 従業員に点検させるというだけでは不十分であり、細部までの指導も必要としている点が注目されます。 電動工具の安全性は感電防止の大前提ですから、同判決の判断は他の感電労災においても参考にされるものと思われます。
アースをしなかった安全配慮義務違反
また、盛岡地裁昭和63年3月10日判決は、架線の補修作業中の感電事故について、 「検電等によって右トロリ線における誘導電圧の発生の有無及びその程度を確認しないで作業に入る以上、三浦助役は、本件作業を指揮する者として、万一の事態に備え、本件引止線の吊架線のみならず同トロリ線にも接地を施して作業員の安全を確保した上で作業に入り、担当職員の
感電を防止すべき注意義務力あったと解される。しかるところ、三浦助役は、右吊架線にのみ接地し、トロリ線への接地を施さずに本件作業に入った結果、本件事故を惹起させるに至ったのであるから、この点、本件事故につき、同人に過失かあると言わなければならない。」 としています。 誘導電圧が発生しうる状況で接地(アース)を施すことも使用者の安全配慮義務の内容となります。
絶縁不良による感電と安全配慮義務違反
電気器具の絶縁不良があり、そのための感電した場合には安全配慮義務違反が認められる可能性があります。 大阪地方裁判所堺支部平成5年12月8日判決は、労災ではなく、刑務所における事故についての判決ですが、労働災害についても参考になるものと思われます。 これは受刑者が扇風機を片付けようとしたところ、絶縁不良部分があり、受刑者が感電死したというものです。 裁判所は、刑務所側が、問題となる部分について専門家に確認等させなかったことから、義務違反を認め、損害賠償責任を認めています。 東京地裁昭和56年3月30日判決も、「本件コードの絶縁被覆が損傷し又は老化することにより感電等の事故が発生することがないよう、本件コードを定期的に点検し、損傷部分があつたときは直ちに修理し、老化した場合には直ちに新しいものと交換する等の適切な事故防止措置を講ずべき注意義務」があること、その違反があることを認定し、損害賠償責任を認めているところです。
防護具を着用させなかったことと安全配慮義務違反
感電は生命身体に関わるので、使用者は感電のリスクのある作業に労働者を従事させる場合には防護具を着用させる義務を負い、その違反があった場合には安全配慮義務違反となる可能性があります。 広島地裁昭和49年7月19日判決は、高圧線上作業について、使用者がにおいて、労働者に、「停電作業にしないとしても身体には十分の保護具すなわちゴム袖、電気肩あて、ゴムチョッキ、電気用ゴム長靴等を着用し、かつ低圧線、腕金には十分な防具」を着用させるべき義務があったものの、その違反があったとして、損害賠償を認めています。
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