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敗血症性ショックにもつながる消化管穿孔
消化管穿孔は、消化管に孔が開くことです。「中空の消化器はいずれも穿孔(せんこう)が生じる可能性があり、穿孔が生じると腸の内容物が漏出し、すぐに手術を行わなければ敗血症(生命を脅かす血流感染症)や死亡に至ることがあ」とされます。参照:消化管穿孔について
敗血症に至った場合、死亡のリスクも高くなりますので、消化管穿孔があった場合には早期に適切な対処を行う必要があります。
適切な対処をとらず、患者が死亡等した場合、医療過誤として、医療機関側が損害賠償責任を負うこともありえます。
以下、どのような場合に、消化管穿孔について医療過誤が認められるのか、見ていきます。
1 消化管穿孔があるのに適時に転医がなされず、患者が敗血症性ショックで死亡した事例についての裁判例
熊本地裁令和5年4月19日判決は、医療機関において、消化管穿孔を疑うべき状況があったのに、早期に緊急回復手術をなし得る医療機関に転医させなかったとして、損害賠償を認めています(この判断は、福岡高等裁判所令和6年1月25日判決により維持されています)。同判決は、「腹部CT画像上の腹腔内遊離ガス像は消化管穿孔が発生していることを示す重要な兆候であり、早期診断と早期の緊急開腹手術の必要がある重大かつ緊急性の高い疾患が疑われる状況にあるところ」、適時に近所の医療機関に転医させなかったとして、注意義務違反を認めたのです。
このように、緊急開腹手術をなしえない医療機関においては、消化管穿孔を示す兆候があった場合には、早期に緊急開腹手術をなしうる医療機関に患者を転医させるべき義務があります。
2 消化管穿孔についての説明義務違反についての裁判例
ある種の手術を行った場合、消化管穿孔が生じる危険性があります。そのような場合には、消化管穿孔についてのリスク説明が必要となります。
東京地裁令和4年2月28日判決は、吻合部狭窄に対するバルーン拡張術により大腸穿孔等が生じたという事例についての裁判例です。
同判決は、吻合部狭窄に対するバルーン拡張術には大腸穿孔等のリスクがあるのに、医療機関においてその説明を怠ったとして説明義務違反を認め、損害賠償も認めているところです。
3 内視鏡検査の際に消化管穿孔を生じさせた事故についての裁判例
不適切な手技により消化管穿孔を生じさせた場合、医療機関側はその結果について損害賠償責任を負うことになります。岡山地裁平成29年7月11日判決は、大腸内視鏡検査を行う際に、本来は腸管の管腔が広い部位である直腸Rb部からRa部において反転操作すべきだったのに、そうではないRs部で反転操作が行われ、消化管穿孔を生じさせた事例において、医療機関側に損害賠償責任を認めています。