遊漁船、遊覧船、旅客船、クルーズ船における事故と損害賠償請求

さいとうゆたか弁護士
執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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知床観光船沈没事故から3年 絶えず発生する船の事故

2025年4月23日、知床観光船沈没事故から3年が経ちます。 亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。 これまで多くの船(遊漁船、遊覧船、旅客線、クルーズ船)の事故が発生してきました。 そのような事故の再発を防ぐためにも、船の事故について適切に法的責任を追及することが重要です。 以下、船の事故に関する損害賠償についてみていきます。

船会社などに対して損害賠償請求をする際の法的根拠

事故が起こった場合、船会社等に対しては、通常の交通事故と同様、民法709条の不法行為による損害賠償請求をすることが考えられます。 また、約款等により特定される債務を履行しなかった場合、債務不履行(民法415条)による損害賠償請求も考えられるところです。 その他、船の損害賠償については、以下のとおり、船会社に、商法により損害賠償請求をすることが考えられます。 (運送人の責任) 第五百九十条 運送人は、旅客が運送のために受けた損害を賠償する責任を負う。ただし、運送人が運送に関し注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。 船会社は、商法591条により、約款等によっても、基本的には人身被害に関する責任を制限することはできません。 (特約禁止) 第五百九十一条 旅客の生命又は身体の侵害による運送人の損害賠償の責任(運送の遅延を主たる原因とするものを除く。)を免除し、又は軽減する特約は、無効とする。 2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。 一 大規模な火災、震災その他の災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において運送を行うとき。 二 運送に伴い通常生ずる振動その他の事情により生命又は身体に重大な危険が及ぶおそれがある者の運送を行うとき。 船の運行会社と所有者が異なる場合、商法690条により、船舶所有者に損害賠償請求をすることも考えられます。 (船舶所有者の責任) 第六百九十条 船舶所有者は、船長その他の船員がその職務を行うについて故意又は過失によって他人に加えた損害を賠償する責任を負う。

船の事故で損害賠償請求が認められる場合

東京地裁昭和55年12月2日判決は、遊漁船で、波による衝撃で遊漁客がケガをしたという事案について、商法590条1項により、釣船会社の損害賠償責任を認めています。 同判決は、「泉水丸の運転者ないし乗組員としては、発進後波の状況よりみて乗客が船室内の周囲の手すりにつかまらなければある程度の危険が予測される事態になつた時点(第一海堡を過ぎた時点)において本来その旨の警報を発すべきであり、右警報を発していたならば本件事故の発生を回避できた可能性は十分あるといわなければならない。」として、波により船が揺れる状況では釣船業者には警告を発する義務があったのに、これを果たさなかったとして、商法590条による責任を認めています。 必要に応じて、乗客に注意を促すとの義務を果たさず、乗客が死傷した場合、船会社等は損害賠償義務を負うことになります。 その他、船舶安全法、船舶安全法施行規則、船舶救命設備規則、小型船舶安全規則、国土交通省の諸告示に反した場合、一般的に採用されている安全対策を行わないような場合にも損害賠償義務が生ずる可能性があります。 例えば、法令等に従い無線機器・船舶自動識別装置・救命いかだ等を備えるべき義務を負うのに、果たさず、人の身体生命に損害が発生した場合、損害賠償義務が生ずる可能性が高いと言えます。

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