不特定多数が出入りする建物(旅館、ホテル、雑居ビル等)での火災と損害賠償

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。 不特定多数が出入りする建物(旅館、ホテル、雑居ビル等)における火災は、他人数の生命に関わる可能性があります。
そのため、建物オーナーやそこで事業を行う者等においては、火災が発生しないように、あるいは、火災が発生しても重大な結果に至らないよう、配慮すべき義務を負っていますし、その義務は通常の場合より過重されています。
このような義務に違反した場合には損害賠償義務を負うことになります。
以下、解説をします。

失火責任法と損害賠償義務

一般的には、民法709条により、過失により人に損害を与えた者は損害賠償義務を負うことになります。
しかし、失火責任法は、重過失がある場合にのみ損害賠償義務を負うとしています。参照:失火責任法
ですから、不法行為による損害賠償請求として火事による損害賠償請求を行う場合については、重過失を立証する必要があることになります。
しかし、旅館、ホテル等の経営者と客との間には契約関係がある場合が多く、そのような場合には重過失までなくても損害賠償請求をなしうることになります。
また、土地工作物責任等の理由で損害賠償請求をする場合にも失火責任法は適用されません。

ホテル、旅館における火災と損害賠償義務

刑事事件に関するものですが、最高裁平成5年11月25日判決は、以下のとおり、ホテルでの火災について、ホテル側が負うべき義務について述べて言います。参照:ホテル火災についての判例
・早期に消火し、火災の拡大を防止すべき義務
・消防法令上の基準に従って必要な箇所にスプリンクラー設備又は代替防火区画を設置する義務
・防火管理者を指揮監督して、消防計画を作成させて、従業員らにこれを周知徹底させ、これに基づく消防訓練及び防火用・消防用設備等の点検、維持管理等を行わせるなどして、あらかじめ防火管理体制を確立しておくべき義務
これらの義務に違反し、よって死傷の結果が生じた場合、ホテル、旅館側は損害賠償責任を負うことになるでしょう。

カラオケ店における火災と損害賠償義務

カラオケ店における火災について、神戸地裁平成27年3月27日判決は、
ⅰ 調理場におけるサラダ油の加熱を漫然と放置して失火したこと
ⅱ 火災発生後の避難誘導措置を講じることなく状況を放置してその場を離れたこと
から、カラオケ店従業員の重過失と損害賠償義務を認めました。
火事を発生させない義務のみならず、適切な避難誘導措置を行う義務を怠った場合にも、事業者側の損害賠償義務が認められることになります。

雑居ビルにおける火災と建物所有者の損害賠償義務

新潟地裁昭和58年6月21日判決は、雑居ビル内のスナックでの火災について、スナック経営者はもとより、ビルオーナーの損害賠償義務も認めています。
同判決は、建物が、「クラブ、スナックやその他の飲食店として使用が予定され、また現に使用されていた」ことを前提に、「このような用途に使用される建物の二階以上の階の安全性としては、右店舗内での火災等の発生という内部にいる人の生命身体に危険を及ぼすような状態が生じたときに備えて外部に避難することができるようにするために、外部への避難に際し容易に接近でき、かつ避難可能な開口部(非常口、非常階段、窓等)を一か所の出入口とは別に設置することが要求される」としました。
このように、建物所有者においても、避難困難な建物について損害賠償義務を負うことがありうることになります。

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参照:火災と労災についての記事
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