2026年5月6日、磐越自動車で、北越高校の生徒を乗せたマイクロバスが事故を起こしました。
亡くなられた方についてお悔やみ申し上げます。
ケガをされた方についてはお見舞い申し上げるとともに、ご快癒を祈念いたします。
報道によると、高校側は、蒲原交通を経由してマイクロバスを借り、蒲原交通側から紹介された人にそのマイクロバスを運転させたとのことです。
仮にそうだとすると、違法行為と評価される可能性があります。
以下、解説します。
1 無許可の特定旅客自動車運送事業
道路運送法の規定
道路運送法3条は、特定旅客自動車運送事業を、特定の者の需要に応じ、一定の範囲の旅客を運送
する旅客自動車運送事業として定義しています。
旅客自動車運送事業とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して旅客を運送する事業をいいます(2条3項)。
そして、道路運送法43条は、特定旅客自動車運送事業については国土交通大臣の許可を受けなけ
ればならないとしています。
その事業が許可を受ける際には、事業計画が輸送の安全を確保するために適切なものであることが
要件とされます。
運転手が許可を受けるべきだった可能性
今回、運転をした個人が、有償で運転をしていた場合、特定旅客自動車運送事業に該当し、それが
無許可だとすると、道路運送法に違反する可能性があります。
なお、金子国交大臣は、運送行為は、高校がレンタカーを使用して自ら行った運送行為であり、白バス行為に該当しないかの説明をしています。
しかし、運転手は北越高校の従業員ではなく、独立した事業主です。
そうであれば、運送をしているのはあくまで運転手であって、運転手については特定旅客自動車運送事業に該当すると考えます。
バスの借用名義だけから白バス行為が存在しなかったことにはならないでしょう。
北越高校側の責任
さて、北越高校側は、今回のバスがレンタカーであることを知らなかったとしています。
ただし、白ナンバーのマイクロバスが来たことから、バスがレンタカーであったことを知りえたとの評価もありうるでしょう。
運転手が制服を着ていないこと、運転手個人への支払いが必要であることを知っていたなどの事情があれば、バスがレンタカーであったことを知りえた可能性は高いと言えるでしょう。
報道では、北越高校が過去にも蒲原交通を介してレンタカーを借りていたというものもあります。
仮にそうだとすると、今回の運行について、蒲原交通側から、それがレンタカー契約ではないとの特段の説明がない限り、今回の運行についてレンタカーであることを知りえたと言えるでしょう。
その場合、高校側も、運転手が特定旅客自動車運送事業者に該当すること、許可が必要であるのに許可を取っていないことについては違法であることを知りえたと言えるでしょうし、そうであれば高校についても違法行為をしたとの評価がありえます。
蒲原交通側の責任
運転者を紹介した蒲原交通についても、当然に運転手が特定旅客自動車運送事業者に該当すること、許可が必要であるのに許可を取っていないことを知りえたといえ、同様に違法行為をしたとの評価がありえます。
道路運送法43条違反の罰則
なお、道路運送法43条違反については、以下のとおり、刑罰が規定されています。参照:道路運送法
第九十六条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
なお、白バス行為についての裁判例としては、大阪地裁平成30年2月6日判決等があります。
大阪地裁判決は、被告人が,平成29年6月23日から同年9月23日までの間,7回にわたり,無許可で,不特定の旅客を運送するなどして一般旅客自動車運送事業を経営した道路運送法違反の事案についての判決です。
判決は、以下のように判断をして、被告人を懲役10ケ月、執行猶予3年の刑に処しています。
「被告人Y1は,来日した外国人観光客を主な顧客として,携帯電話の配車アプリ等を用いて顧客を募って犯行に及んでおり,犯行態様は大胆かつ巧妙である。判示の約3か月間にわたる運送行為を中心として,合計3台の自動車を使用して継続的に事業を営み,多額の運送報酬を受け取っており,事業規模が小さいとまではいえない。また,金銭目当ての犯行動機に酌むべき点は乏しい。旅客運送の安全確保という一般予防の観点も無視できない。こうした事情に照らすと,被告人Y1の刑事責任は軽くない。
しかしながら,被告人Y1が,事実を認めて反省の情を示していること,犯行に使用した自動車を手放したこと,本邦における前科を有しないこと,妻および生まれたばかりの子供の生活を支える必要があることなど,被告人Y1のために酌むことのできる諸事情を考慮すると,被告人Y1を主文の刑に処した上,その刑の執行を猶予するのが相当である。」
2 高校による適切な業者を選定すべき義務
学校は、修学旅行にあたり、危険性調査をすべきとされています。参照:船の事故と損害賠償についての記事
そうであれば、部活動で生徒をバス移動させる場合、運転手が適切な能力などを有しており、危険性がないかどうか、高校はチェックすべき義務があると言えるでしょう。
運転手が許可を得ていないものである以上、運転手の適性については何ら担保がないので、学校側としては、運転手の適性について、質問をするなりしてチェックすべきとの考えもありうるのでしょう。
報道では、運転手において、北越高校に来る際にも乱暴な運転をしていたことが撮影されていたとされています。
特に、運行開始前の様子などから正常ではない部分があると感じられたのであれば、運転手に突っ込んで質問をして、安全かどうか確認する義務があったと考えます。
そのような義務を怠り、結果として運転手の不適性に起因して事故が発生した場合、学校側が損害賠償責任を負う可能性があります。
3 運転手及び北越高校ソフトテニス部顧問に過失運転致死傷罪が成立するか?損害賠償責任はどうなる?
なお、カーブを曲がり切れない速度で走行していた運転手については過失運転致死傷罪が成立する可能性はあるでしょう。
アクセルとブレーキを踏み間違え、母子2名を死亡させ、9名に傷害を負わせた事案では、禁固5年の実刑が言い渡されています(東京地裁令和3年9月2日判決)。
本件では、死者は1名ですが、道路運送法違反があったこと、傷害の被害者の人数などを踏まえると、近似の量刑となる可能性があると考えられます。
また、仮に運転前に、運転手の具合が悪い様子がうかがわれたような場合、あるいは、生徒から運転が危ないものであるとの連絡が事故前にあった場合、顧問がそれでも運転をさせたことについて注意義務違反が認められる余地もあるでしょう。
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