執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 クローン病患者の手術後の腸での出血による脳障害と医療過誤
福岡高裁平成31年4月25日判決は、病院でクローン病の治療のために回腸結腸吻合部切除術等の手術を受けた患者について、術後の出血により出血性ショックが生じ、それに伴う低血圧により脳に障害が残ったという件について、医師らの注意義務違反を認め、医師らに損害賠償を命じています。
クローン病患者に対する手術における術後管理について参考になるものと思われますのでご紹介します。参照:クローン病の説明
術後出血を念頭において術後管理を行うべき義務
裁判所は、まず、以下のとおり述べ、クローン病の患者について、術後出血を念頭においた術後管理をすべきだとします。
「クローン病の特徴の1つとして突然の大量腸管出血があり、ときには致死的出血に至る場合もあること、多くの場合、出血の徴候を把握することは極めて困難であり、出血源の同定すら困難な場合が少なくないことが認められるほか、前記・・・のとおり、クローン病の既手術例においては術後1パーセント以上の割合で再出血が発生するとの報告もあることが認められる」
「これらの事情を総合すると、過去2回に及ぶクローン病の手術歴のある一審原告において本件手術の術中に6046mlもの出血があった以上、一審被告医師において、本件手術後の急性期に一審原告が出血を来すことを予見することは可能であったというべきであり、本件手術後の急性期においては、術後出血を念頭においた術後管理が求められていたというべきである」
医師においてバイタルサインについて連絡すべき指示をすべき義務
その上で、裁判所は、「少なくとも出血性ショックを疑わせる重要なバイタルサインについては、主治医に連絡をすべき場合を具体的数値で示すなどした上で明確に指示することが求められていたというべきである」、「医師としては、収縮期血圧と脈拍数に主に着目した術後指示を行うべきであったということができる。したがって、医師としては、少なくとも、収縮期血圧と脈拍数(心拍数)につき具体的数値を示した上で明確に指示すべきであったといえる」として、なすべき術後管理の内容を示しました。そして、医師がこのような義務を果たしていなかったとして、医師の注意義務違反を認めました。
手術後に出血が予想されるケースにおいて、医師において血圧や脈拍に着目した指示をすべきとしたものであり、今後手術後に出血が予想されるケースにおいて参考になると思われます。
2 血圧低下時に穿孔の有無を確認すべき義務について述べた裁判例
岐阜地裁多治見支部昭和62年12月25日判決は、潰瘍性大腸炎の患者が中毒性巨大結腸症にり患し、血圧低下をした場合において、医師がX線撮影により穿孔の確認をし、手術をしなかったことについて注意義務違反を認めました。
同判決は、潰瘍性大腸炎に伴い発生する中毒性巨大結腸症が穿孔を起こす危険性について以下のとおり述べます。
「中毒性巨大結腸症に罹患している場合は、穿孔をおこしやすく、《証拠略》によれば、同症の患者の血圧の急激な低下は、穿孔の大きな徴候であることが認められる」
同判決は、そのため、中毒性巨大結腸症患者の血圧の低下があった場合には、X線撮影をする義務があるとします。
「医師らは、血圧の突然の低下を見た右同午前一○時頃、直ちに腹部単純X線撮影により、右穿孔の有無を確認すべきであったといえ、そしてX線撮影を実施していれば穿孔を容易に確認し得たものというべきである。」
しかし、医師がX線撮影もせず、その結果穿孔を発見できず、手術が遅れたとして、医師の義務違反を認定しました。
この事案は最終的に死亡に至ったケースです。
中毒性巨大結腸症患者の穿孔は死亡に至る可能性もあるため、迅速なX検査、手術などが注意義務の内容となるのです。
3 新潟で医療過誤はご相談ください
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