スケードボードに腹ばいの4歳男児が死亡した事件の法的責任

さいとうゆたか弁護士

1 スケボーに腹ばいの4歳男児が死亡した事件の法的責任

報道によると、23日午後1時ころ、東京都世田谷区の交差点で、スケートボードに腹ばいの状態で乗っていた男児がワゴン車にひかれ死亡したとのことです。
亡くなった方にはお悔み申し上げます。
以下、運転手の法的責任について検討してみます。

2 スケボーと自動車の事故についての裁判例

東京地裁平成15年6月26日判決は、スロープにおいてスケートボード遊びをしていた子どもが自動車に衝突したという事故について、以下のとおり子ども側の過失を4割としています。

「本件は,被告が加害車両を運転して本件道路を走行し,本件マンションの前に差し掛かった時,ちょうど,スケートボード遊びをしていた亡Cがスロープを滑り降りてきて,しかも,運悪く身体が車道に飛び出してしまい,その頭部が加害車両の左前部に衝突したという不幸な事故である。当裁判所は,以下のとおり,危険なスケートボード遊びをし,しかも,左右から車両の来ないことを確認することなくスロープを滑り降りた亡Cの側の落ち度も大きいが,子供の飛び出しをも予想して十分な安全確認をすることを怠った被告の側の落ち度も軽視することができず,被害者保護及び危険責任の観点を考慮し,原告側に生じた損害の衡平な分担という見地から考えるならば,損害の減額割合,すなわち,亡Cの過失割合としては,40%をもって相当と判断する。」

上記判断の理由として裁判所は、「被告が本件マンション前に至るまでに亡Cらがスケートボード遊びをしていることに気付かなかったとしても,車両の運転者としては,一般的に子供の道路への飛び出しに注意を払う必要があることは前記のとおりであり,特に,被告の場合には,前記⑥のとおり,本件事故現場のすぐ近くに居住し,本件道路をよく通行していて,本件マンションの出入口付近が子供たちの遊び場になっていたことを承知していたものと考えられる。したがって,被告としては,本件マンションの出入口付近に2人の女の子の存在を認めた以上,同人らが道路に飛び出してくる可能性をも想定して,時速30kmより更に減速し,なるべく道路左端から離れて走行し,あるいは,クラクションを鳴らすなどの措置を採るとともに,子供たちの動静に細心の注意を払って進行すべきであった。」 と述べています。

つまり、裁判所としては、スケートボード遊びが危険であることを踏まえつつ、運転手としては近くで子どもが遊んでいることを知っていたので注意すべきだったとしているのです。
腹ばいでスケートボートで遊んでいる場合には一層子どもに気づきにくいでしょう。
また、今回の運転手において、その周辺において子どもがスケートボード遊びをしているということを知らなかったとすると、東京地裁平成15年6月26日判決の判断を前提としても運転手に過失は認めがたいということになりそうです。これは民事責任も刑事責任も同様です。

今後は運転手の認識などについて丁寧な捜査が待たれるところです。

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