保育園児の誤嚥事故・窒息事故と損害賠償 新潟県で保育園事故は弁護士齋藤裕にご相談ください

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 保育園での誤嚥防止のための注意義務

誤嚥による死亡事故が絶えません。結果としてそのような事故が発生したからといってただちに園側が法的責任を負うことはありませんが、注意義務を怠ったと言える場合については賠償責任も生じうるところです。

ガイドラインが示す保育園での誤嚥防止策

保育園における食事介助にあたっての注意義務については「教育・保育施設等の事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン~施設・事業者向け~」の記載内容が参考になると思われます。

この中では、「窒息事故を防ぐための安全な食べさせ方」が年齢毎に紹介されています。

例えば、1・2歳時については、「食の自立とともに、窒息事故が起こりやすくなることを把握しておく。」、「保育者は、子どもの食べ方や様子が見えるようにそばにつき、できるだけ立ち上がらず、落ち着いて安全に食べられるよう見守る」という内容がチェックポイントとされています。

その上で、以下の項目などが配慮事項とされています。

・一口の適量を知らせていく。

・のどを潤しながら食事をする。

・口の中の食べ物がなくなったことを確認してから、次の食べ物を口に入れる。

・スプーンにのせつ量や口の奥まで入れすぎないように注意していく。

このような配慮がなされていたかどうかを含めて注意義務違反があったかどうかが判断されていくことになるでしょう。

保育園での誤嚥について損害賠償責任を認めた裁判例

誤嚥発生の法的責任に関し、東京高裁令和6年9月26日判決は、保育所に通園していた3歳2か月の幼児が給食のホットドッグを食べ、心肺停止となり、重篤な後遺障害が残った事件において判断を示しています。

被害児童には、発達遅滞があり、食べ物をよくかまないで飲もうとする傾向があったとされます。

裁判所は、ホットドッグについて、

ⅰ パンはその表面に唾液がついたり、牛乳などを飲ませたりすると、表面だけが粘性が強くなり、付着性が強くなって口の中や咽頭の中に残りやすいこと、

ⅱ ウインナーも、表面に皮がついている上、弾性が強いため、表面に皮が付いていると、相応の咀嚼能力が必要であること

から、誤嚥による窒息の危険性が高い、知的障害がある幼児の場合は丸飲みによる窒息の危険性がより高まることを認定します。

その上で、保育所の危機管理マニュアルにはホットドッグの危険性が記載されておらず、その結果、調理担当者や保育士に対する適切な対処法の周知がなされていなかったとしました。

同判決は、その周知不足の結果、「これまでホットドッグを食べた経験がなく、咀嚼力が十分とはいえない被害児童に対して提供された本件ホットドッグにおいて、皮つきのウインナーが提供され、ホットドッグを小さく切り分ける、ウインナーの皮を除去する、ウインナーを縦に切る、表面に切れ目を入れる、パンとウインナーを分けて食べさせるなどの配慮もなされず、漫然と、調理担当者において長さ約13cmのホットドッグを半分に切ったものを用意し、これを担当保育士において手でちぎって食べさせていた」として、保育所の視聴等の管理職員には職務上の注意義務違反があったとしました。

施設側には、単純な年齢だけではなく、発達特性に応じた配慮をすべき注意義務があるということになります。

2 保育園で誤嚥が発生したときの注意義務

異物を除去しない人工呼吸について義務違反はないとした裁判例

上記ガイドラインでは、背部叩打法、肺蘇生法、人工呼吸をすべきことが記載されており、これらの対応が基本となるでしょう。

ところで、人工呼吸については異物を除去してから行うべきものとされています。

この点、東京地裁平成16年6月22日判決は、以下のとおり述べて、異物を除去しないまま行った人工呼吸について過失はないとしています。

「それまで発熱はあるものの,元気であった亡Aが突然嘔吐し,ぐったりとしてしまったため,救急隊を,要請し,その到着を待っている間,亡Aの呼吸も脈も著しく弱くなっていったという突発的かつ危機的状況下において,亡Aの生命の危険を感じ,その救命を図る目的で,人工呼吸を行うことは,その必要性が認められるところである上,しかも,その方法としても,C保育士は,口の中の異物を取り除いた後,マウス・トゥ・マウスによる人工呼吸を選択しているのであって,医学上は,気道内の異物を除去した上での人工呼吸が望ましかったものといえるとしても,気道内の異物を保育士らが器具などを用いて取り除くことは,法律上も,技術上も不可能であったし,亡Aの気道閉塞は,救急隊によっても吐物を取り切ることができず,本件病院における措置によって,ようやく口腔内に大量に残存した吐物を吸引することができたほど重篤なものであったのであることからしても,かかる大量の嘔吐やそれに伴う窒息に対し,医学上最適の方法で対応することを保育士らに期待するのは不可能であるから,かかる人工呼吸と窒息との間の因果関係も不明であることをも合わせ考慮すると,C保育士がマウス・トゥ・マウスによる人工呼吸を行ったことをもって,被告に過失を認めることはできない」

このように、保育士には医療上最善の方法での救命措置をすべき義務まではないとされているところです。

背部叩打法を行ったことで義務違反がないとされた裁判例

東京地裁令和4年10月26日判決は、幼児がホットドッグを誤嚥した事例について、背部叩打をし、パンの塊を吐き出したにもかかわらず容態が良くならなかったので、2分後に緊急通報を行い、その後も消防の指示に従い保育士が背部叩打を継続したという事案で、義務違反は認められなかったとしています。

ですから、注意義務違反が認められるのは、背部叩打法などの措置を全くしなかったような場合など限定的な場合となる可能性があります。

3 吐乳吸引による窒息死と賠償責任

横浜地裁横須賀支部令和2年5月25日判決は、生後4ケ月の乳児が吐乳吸引により窒息死した事件について、家庭保育福祉員と家庭的保育事業を実施していた横須賀市の注意義務違反と賠償義務を認めています。

吐乳吸引による死亡事例における注意義務の判断について参考になると思われるのでご紹介します。

乳児の死因が吐乳吸引かSIDSか?

この事案では、乳児の死因が吐乳吸引かSIDSかが争われました。

判決は、鑑定書等を踏まえ、乳児の死因を吐乳吸引と認定しました。

吐乳吸引による窒息などを防止するための注意義務

また、家庭保育福祉員の一般的義務として、

・0~1歳時を寝かしつけるにあたり、15分間隔で、乳児の顔色、呼吸状況を確認する方法で睡眠時チェックを行う義務、寝かせるときには仰向けで寝かせる義務

があったとしました。

さらに、乳児の呼吸を妨げる状況が存在する等保育の具体的な態様によっては、より短い間隔で睡眠時チェックを行う注意義務を負うとしました。

5~10分間隔での睡眠時チェックをしなかったことを注意義務違反とした判断

その上で、判決は、当該家庭保育福祉員において、ミルクを与えた乳児が入眠した後、寝返りを打つことができない状態に置いたままにしたので、乳児が吐乳して呼吸を妨げられて窒息死するのを予見できたとし、5~10分間隔で睡眠時チェックをすべきだったとしました。しかるに、当該家庭保険福祉員は、約15分間隔で睡眠時チェックをするにとどまり、その義務を果たさなかったので、当該家庭保育福祉員には注意義務違反があったとし、賠償責任を認めました。

自治体における指導義務違反

また、判決は、横須賀市について、利用児童に対し、家庭保育福祉員が家庭的保育を適切に実施するのに必要な指導研修を実施すべき一般的義務を負うとしました。

その上で、その具体的内容として、家庭保育福祉員に対し、乳児の睡眠時チェックを行うよう指導研修を実施すべき義務を負っていたのに、その義務を果たさなかったとして、横須賀市にも賠償責任を認めました。

東京地裁令和4年10月26日判決の意義

同判決は、家庭保育福祉員の注意義務に関する裁判例ではありますが、保育園等、乳児の保育をする事業者等にも妥当するものと思われます。

保育園や家庭保育福祉員、家庭的保育事業を行う自治体等においては、同判決の示す基準に従った指導研修や乳児の見守りを徹底すべきでしょう。

4 新潟で保育園での事故は弁護士齋藤裕へ

雲梯での事故と損害賠償についての記事

もご参照ください。

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