遊具(雲梯、うんてい)、誤嚥での事故と損害賠償責任(幼稚園事故、保育園事故)

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 うんていでの事故と損害賠償責任

報道によると、香川県善通寺市の保育園で、当時3歳だった女児が、うんていに首を挟まれ死亡した事故について、高松地裁は、令和2年1月28日、運営法人の賠償責任を認めたということです。

報道によると、はしごと筋交いの間の角度は、業界団体の安全基準上は55度以上でなければならなかったのに、その保育園のうんていでは44度だったということです。

安全基準に明白に違反したうんえいを利用に供していた以上、法人の損害賠償責任が認められるのは当然と言えるでしょう。

このようなうんていによる事故で賠償責任を認めた裁判例は過去にもあります。

うんていにかけられたロープに首をかけた事故についての判決

浦和地裁平成12年7月25日判決は、以下のとおり述べ、うんていで遊んでいた子どもがうんていにかけられたロープに首をかけ事故に遭ったというケースで、園児らの遊びの状況を監視していなかった過失があったとして、損害賠償責任を認めました。

「被告学園は、日ごろ、縄跳びの縄等については、その本数を確認し、安全な場所に保管するようにしており、本件うんていについては、本件うんていで遊ぶ園児が落下しないように監視をすることとなっていたというのであるが、本件事故当日は、里幼稚園の行事のために縄跳びの縄を使用しており、春子は、本件うんていにかけられた本件ロープに首をかけるという本件事故に遭ったのであり、特に、春子は、三歳児であり、里幼稚園に入園して間もないころで、親元を離れて慣れない幼稚園生活を始めた状況であったのであるから、自由遊びの時間であっても、その安全確保、事故防止には一層の配慮が求められるというべきであるところ、里幼稚園の教職員らは、本件事故が発生するまでの間、春子及び他の園児らの行動及び本件うんていにおける園児らの遊びの状況等について知らなかったというのであるから、里幼稚園の園長である被告智子、春子のクラス主任及び副主任である同吉田及び同豊田は、里幼稚園における縄跳びの縄の管理、本件うんていの落下防止等に関する運用を履践し、春子の自由遊び時間における行動、本件うんていにおける園児らの遊戯の状況や縄跳びの縄の使用等について十分な監視をしていたとは認められない。また、被告学園も、里幼稚園を経営するものとして、里幼稚園の教職員らに対する園児らの安全確保及び事故防止に関する教育、管理をしていたと認めることもできない。
したがって、本件事故は、右のとおり、被告学園等が、園児らに対する安全確保及ぴ事故防止に関する注意義務を怠ったことに起因するというべきであるから、被告学園等は、本件事故によって生じた損害を賠償すべき責めを負う。」

うんていの開口部に首をはさまれた事故についての判決

また、高松地裁令和2年1月28日判決は、3歳の保育園児が、うんていのV字型開口部首を挟まれた事故について、「本件保育園の園長は、本件雲梯に上向きのV字型開口部が生じて以降、本件雲梯が、園児の身体が挟み込まれる危険性を有するものであることを認識し得たといえ、また、認識すべきであって。そうであるにもかかわらず、本件雲梯の上向きのV字型開口部を解消することなく本件事故まで放置した点につき、被告法人には組織体としての過失がある」とし、保育園側の賠償責任を認めました。

ですから、遊具(うんてい)を供する幼稚園や保育園としては、安全基準を満たした遊具を提供し、危険のある個所については速やかに対処し、かつ、適時遊びの状況を監視すべきということになります。

参照:うんていでの事故についての裁判例

2 誤嚥した幼稚園児に対して心肺蘇生を速やかに行なわなかったことによる後遺障害について

保育士や幼稚園の教諭が速やかに適切な心肺蘇生措置を取らなかったことで賠償責任が認められる事例はあまりないようです。

東京地裁平成16年6月22日判決は、嘔吐物誤嚥を起こした幼児について保育士が気道内の異物を除去しないまま人工呼吸をしたという事案について、医学的には適切な方法とはいえないとしても幼稚園の教諭に気道内の異物を除去した上での人工呼吸を義務付けることはできないとして、損害賠償を認めませんでした。同事案では、保育士が園児を抱えその背中をさすったり叩くなどして洗面器一杯分程度の吐物を吐かせている、呼吸を行う直前にも園児を仰向けに寝かせ、あごを上向きにして,口を開いて中を調べるなどした上でマウス・トゥ・マウスによる人工呼吸を実施していることなどの事情があります。

横浜地裁川崎支部平成26年3月4日判決は、幼児が心肺停止後保育士が人工呼吸や心臓マッサージをしたものの、これを継続せず、自動車で1、2分の距離にある消防出張所に自動車で幼児を運んだという事案について、119番通報により救急隊員らが到着するまでの間継続的に心肺蘇生措置をとることが最善であった可能性は否定できないものの、救護義務違反があったとまではいえないとしました。

これらの事例は一応心肺蘇生措置をとったものの、完全なものではなかった事例と見ることができます。

幼稚園・保育園の職員は、救命の専門職ではないため、完全な救命措置をとることまで義務付けられていないものといえます。

日本医師会は幼児の救命措置について資料を作っていますが、完全にこのとおりにしなかったから責任が生ずるというわけではないでしょう。参照:幼児の救命措置についての資料

しかし、幼稚園教諭が全く心肺蘇生措置を取らなかったとすれば、損害賠償責任が認められる余地は大きいように思います。

3 新潟で幼稚園、保育園での事故は弁護士齋藤裕にご相談を

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