執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
RBGと略称されることの多い、アメリカ最高裁判事のRuth Bader Ginsburg氏が亡くなりました。
お悔み申し上げます。
彼女の功績として語られることが多いのが、彼女が法廷意見をリードしたUnited States v. Virginia判決です。
バージニア軍事大学は、男性だけを入学させる方針を持っていました。
バージニア州は、女性はその厳しいプログラムに耐えることができないと弁解していました。
それに対し、最高裁は、ヴァージニア軍事大学に女性を入学させないことは平等条項に反するとしました。
同判決は長文に及ぶものですが、同判決は、“we rule here that Virginia has not shown substantial equality in the separate educational opportunities the Commonwealth supports at VWIL and VMI.”との判断を示しています。
これは、ヴァージニア州には、女性が入学できる学校(VWIL)があったものの、それとヴァージニア軍事大学(VMI)とで実質的に平等の教育の機会が与えられているとは言えない(ヴァージニア州は立証していない)ということです。
substantial equality in the separate educational opportunities、分離しても実質的な平等性があるという要件は、アフリカ系アメリカ人をテキサス州立大学ロースクールに入学させないといけないとの判断を示したSweatt判決を踏襲したものです。
最高裁は、VMILが、VMIが提供するような軍事訓練等を提供しないこと、VMIが歴史に裏付けられた名声を有していること等を踏まえて実質的に平等との立証がないと判断したものです。
同判決は、男性の中にもVMIのプログラムに耐えることのできない者はいるし、女性の中にもVMIのプログラムに耐えることのできる者もいるとの指摘をしていますが、肉体的能力を理由とした女性排除の問題を考える上で極めて示唆的だと思います。
同判決は、先例やVMIと他の学校との差異をち密に検討した説得力のあるものであり、Ruth Bader Ginsburg氏の能力と情熱には脱帽させられます。
日本でも最近、医科大学、医学部等における入試の関係で女性差別を疑わせる事例が発生しています。
日本の法曹もRuth Bader Ginsburg氏という高みを目指し、日々努力しなければならないと思います。
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