自粛警察の法的問題 新型コロナウイルス法律相談その25

1 自粛警察

報道によると、緊急事態宣言下においても営業を継続する飲食店などに対し、嫌がらせの張り紙をする「自粛警察」の動きがあるようです。

感覚的には明らかに行き過ぎだと思う方は多いでしょうが、法的にはどうなるでしょうか。

よく見聞きされる張り紙について解説します。

2 嫌がらせの張り紙と不法行為

家の玄関の扉に、カルテ改ざんや不貞などの事実があるかのようなチラシが張り付けられたという事案についての東京地裁平成20年1月9日判決は、以下のとおりチラシをドアに張り付けるという態様での名誉棄損の特殊性を踏まえつつ、慰謝料30万円の支払を命じています。

「別紙1の文書の被告が指摘する記載部分は,一般人の理解力を基準にすれば,被告が,素性を偽って積極的に不貞行為を行う人物であるという印象を与えるもの,別紙2の文書の被告が指摘する記載部分は,一般人の理解力を基準にすれば,被告が暴力団や保険金詐欺を行うグループとかかわりを持ち,保険金を詐取するために,カルテの改ざんを行う人物であるとの印象を与えるもの,別紙3の文書の被告が指摘する記載部分は,全体として,被告が金銭や病院の経営支配を目的に不貞行為を行い,裁判中であるにもかかわらず,妻を排して,夫宅で生活し続けているとの印象を与えるものだといえる。」
「これらの記載は,いずれも被告の社会的評価を低下させることは明らかである。そして,玄関扉に文書を貼り付けることによって,不特定の者がこの文書を読む可能性がある。したがって,原告がこれらの文書を被告方の玄関扉に貼った行為は名誉毀損に該当する。また,別紙1の文書を被告に手紙として送った行為は,文書の内容が不特定人に明らかになるものではないから,名誉毀損にはあたらないが,被告の名誉感情を損なうものであり,侮辱といえる。」
「これらの文書は被告宅の玄関扉に貼られていたため,文書が示す人物が被告本人であることが一層明らかになること,原告は,このような文書を張り紙することを禁ずる仮処分決定が発令された後も同じような文書を張り紙していること(乙12),他方,これらの文書は容易にはがせるような態様で貼り付けられており,長期間にわたって貼り続けられていたとは考えられず,文字の大きさも玄関扉に近づかないと判読できない程度であるため,これらの文書の記載が多くの者の目に触れたとは考えにくいことなど本件に現れた一切の事情を考慮すると,被告の精神的苦痛を慰謝するには30万円をもって相当とする。」

このように、不特定多数にみられるようなところに社会的評価を低下させるようなチラシを貼り付けると損害賠償の対象となりえます。

このような行為は刑事罰の対象ともなりえます。

自粛警察をしている方々には自身の行為の持つ意味に留意していただきたいと思います。

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