執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 過労死による損害賠償請求と過失相殺
過労死により使用者に損害賠償請求をすると、よく使用者側からは、労働者にも過失があったとして、過失相殺の主張がなされることが多いです。
実際に過労死事案で過失相殺が認められることは多くないと思いますが、病院の事務職員の過労死について、病院側が行った過失相殺の主張を排斥した岐阜地裁平成31年4月19日判決が参考になると思われるので、ご紹介します。
2 病院の事務職員の過労死についての岐阜地裁平成31年4月19日判決
岐阜地裁平成31年4月19日判決は、病院の事務職員が過労自殺したという件について、月100時間を超える時間外労働時間を認定し、過労自殺との認定をしています。
その上で、病院側の過失相殺の主張について、以下のとおり排斥しています。
ⅰ 業務量について上司に相談していない
「被災労働者が勤務時間内に与えられた業務を終えることができず、慢性的に長時間の時間外労働をしていたことは、上司である課長が現認しており、しかも、被災労働者における仕事の進め方に問題があることについても同様に認識していたのであるから、被災労働者による相談がなかったからといって、被告における軽減措置を困難にしたものということはできない」
ⅱ 被災労働者の仕事のペースが遅い
「被災労働者は、被告本所においては時間外労働をほとんど行うことなく、業務を処理することができていたのであるから、一概にその能力が低かったということはできないし、本件病院に配属されてから経験が十分でない状況で、業務を効率的に処理できないのは当然のことであるから、そのことをもって、直ちに被災労働者の過失と評価すべきではない」
ⅲ 超過勤務申請書の不提出
それがなくとも病院側は過重労働を知り得た
ⅳ 医療機関を受診しなかった
「労働者において、医師から具体的な受診の必要性を指摘される等して、医療機関を受診する機会があったにもかかわらず、正当な理由なくこれを受診しなかったといえる場合に限り、過失として評価する余地がある」
使用者としては、個々の特性を持つ労働者を業務に従事させる以上、それぞれの特性に応じた安全配慮義務を尽くす必要があります。
よって、ⅰからⅳのいずれも過労自殺を防止できなかった弁解としては説得力がないと言わなくてはならず、裁判所の判断は妥当と思われます。
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