憲法的に女系天皇をどう考えるべきか?

さいとうゆたか弁護士

内親王の子を次の天皇にという河野大臣・河野防衛相の女系天皇容認論

河野防衛相が、内親王の子を次の天皇として受け入れることもありうると発言し、話題になっています。

河野防衛省の発言は女系天皇容認論ということになるわけですが、この女系天皇については法的・憲法的にはどのように位置づけられるものでしょうか?

そもそも天皇の承継については、日本国憲法第二条が、「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」と規定し、その皇室典範では第一条で、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」として定めています。

他方、日本国憲法は、「第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」としているところです。ですから、男系か女系かで区別をする男系天皇制が憲法との関係で許容されるか、問題となりえます。

この点、佐藤幸治「日本国憲法論」513頁以下は、「わが国の歴史において、皇位はすべて皇統に属する男系の者で皇族の身分の保持者により承継されてきた。その際、有名な持統天皇をはきめ十代八方(二方は重祚[再び皇位につくこと])の女性天皇(男系女子)が存在したこと、また、半数近くが非嫡系による継承であったこと、が留意される。」、「現行典範が女性天皇を認めないのは性差別で違憲であるとする見解もあるが、世襲の天皇制自体に一般的な平等原則を持ち出すことには無理があることは既に示唆したところである」として、男系天皇制は合憲であるとします。

他方、松井茂記「日本国憲法 第2版」262頁は、「もともと明治憲法下で旧皇室典範が男子長系主義を定めたのが、天皇は統帥権を持つ軍の最高指揮官であったためであるから悲連続切の立場では、これは1条違反というべきであろう」とします。日本国憲法第一条は、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」としていますが、松井説は、天皇主権の明治憲法下の考えをそのまま日本国憲法下に移入することは、主権の存する日本国民にベースを置く日本国憲法下ではそぐわないという趣旨かと思います。

考えるに、そもそも憲法14条2項は、「華族その他の貴族の制度は、これを認めない。」としているところです。憲法1条から8条まで天皇制について規定しておきながら、憲法14条で貴族制度を認めないとしていることからして、憲法14条は天皇制には適用されないと考えるのが妥当と考えます。

また、男系天皇制に松井説のような側面もあるとしても、おおむね男系天皇が続いてきた歴史を考えると、男系天皇制のベースを統帥権にだけ求めることは困難でしょう。

よって、憲法的には、男系天皇制は禁止されていないと解釈すべきと考えます。

ただし、現在の天皇制が国民の支持に大きく依拠していることから、歴史的経過のみならず、国民の意識も踏まえた天皇制論議が欠かせないと考えます。

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