執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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住宅ローンについては財産分与にあたり考慮されるというのが一般的な扱いです。
しかし、投資用マンションやアパート建築のためのローンなど、それ以外の債務については別途の考慮が必要です。
以下、検討をします。
1 債務と財産分与についての理論的な検討
早稲田大学教授棚村政行「離婚の際の財産分与と債務の取り扱い」(判例タイムズno1269・17頁)は、「民法は、戦前の管理共通制を改めて、夫婦の平等と各自の財産的独立を保障する趣旨で、婚姻中の夫婦財産関係については別産制の原則を採用した。つまり、夫婦が自己の名で個人的に取得した財産(特有財産)は各人に帰属し、各人が独自に管理することになっている。したがって、たとえ、夫婦といえども、日常家事債務の連帯責任(761条)または婚姻費用の分担(760条)もしくは夫婦の扶助義務(752条)によるのでない限り、夫の個人的債務についてまで妻は責任を負う必要はない」としています。
つまり、法律で明記されている場合を除き、夫の債務が財産分与で考慮されるのは原則的には認められません。それが夫婦の平等を理念とする夫婦別産制の帰結です。
その例外の典型は住宅ローンの場合です。「住宅ローンの支払いについては、」夫婦生活の本拠としての住宅の購入に関わるものであり夫婦共同債務としての性格があ」り、特殊だからです(棚村論文21頁以下)。
このように、住宅ローン以外の債務については、原則として夫婦別産制のもとでは財産分与で考慮されるべきものではありません。プラスの財産と住宅ローン以外の債務を通算して財産分与額を決めるのは実質的には夫の債務の支払いを妻に強いるものであり、夫婦別産制のもとでは許されないのです。
2 債務と財産分与に関する実務の取り扱い
二宮周平他「離婚判例ガイド 第3版」124頁以下は、「教育費や医療費のためのローンのように日常家事債務(民761条)にあたる債務のほか、住宅ローンのように実質共有財産を購入するための債務、生活費の補填のための債務なども清算対象とされる」、「清算対象財産に積極資産と債務がある場合、積極資産総額から債務総額を差し引いた残額に分与割合を乗じて各自の取得額を算出し、すでに各自が自己名義としている積極財産及び債務を差し引いて、分与額を決定することが多い」、「一方、遊興費、ギャンブル、個人的な連帯債務、事業のための債務などは対象とされないのが一般的である」としています。これは、住宅ローンや婚姻生活維持のための債務を除き、総債務と総資産を合算するような財産分与は行わないという趣旨です。
以上より、住宅ローンや婚姻生活維持のために役立ってきた債務以外の債務については、実務においても、財産分与において考慮されていません。
3 債務と財産分与についてのまとめ
以上から明らかなとおり、住宅ローン以外の投資用マンションやアパート建築のためのローン・債務は、それが生活維持のために役立ったような事情がない限り、財産分与において考慮されるものではないと考えられます。
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