
執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連会長)

新潟の弁護士齋藤裕です。
離婚時の慰謝料についてはご相談ください(初回相談料無料)。
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以下、離婚の際に問題となることが多い慰謝料についてご説明します。
目次は
1 離婚の慰謝料とは
2 離婚時に何が不法行為となるか
です。
1 離婚の慰謝料とは
慰謝料は、不法行為により被害者が精神的苦痛を受けた場合に発生するものです。
離婚という事実に伴い当然に発生するものではありません。
この慰謝料は、不貞、暴力などがあった場合に発生します。
2 離婚時に何が不法行為となるか
慰謝料請求については、
ⅰ 不貞など自体について慰謝料請求する場合、
ⅱ 不貞などにより離婚に至ったことについて慰謝料請求する場合
の2つに分けられます。
基本的には離婚に至ったことについての慰謝料請求の方が高くなりがちだと思われます。
しかし、必ずしも不法行為があったため離婚に至ったという関係が成り立たない場合もあります。
そのような場合には不貞など自体について慰謝料請求をすることになります。
このような区分けの実益は時効を考えるときに出てきます。
不法行為の時効は不法行為を知ったときから3年です。
不貞自体を慰謝料請求の対象とした場合、時効は不貞を知ったときから3年ということになります。
しかし、不貞により離婚をしたことを慰謝料請求の対象とした場合、離婚時から3年ということになります。
このように時効にかかるかどうかも含めて、何を慰謝料請求の対象とするか吟味する必要があります。
不貞・不倫、DVについては慰謝料の対象となりえますが、別のページでご紹介します。
参照:不貞・不倫と慰謝料についての記事、DVと慰謝料についての記事
目次
モラハラ・モラルハラスメントと慰謝料
モラハラ・モラルハラスメントと慰謝料
モラルハラスメントという言葉は、法律用語ではなく、必ずしもその範囲が明確とは言い難いです。
当事者がモラハラと主張しても、裁判所がモラハラという用語を使わないまま判決をすることも多くあります。
しかし、少数の裁判例においては、モラハラを理由とする慰謝料を認めるケースがあります。
例えば、東京地裁令和1年9月10日判決は、一方が他方に、「クズ」「死ね」「離婚して子供もおろせ」「何様なんだよ このクズ野郎」「マジで死んでくれないかな」「親の教育が悪すぎる」「こんな最低な女見たことない」等と言ったこと等がモラハラに該当するとされた事例において、「被告は,原告との婚姻後,次第に,原告の人格を否定して被告の価値観を押し付け,被告に従わなければ徹底的に罵倒するような暴言を吐くようになり,その頻度や内容もエスカレートし,社会的に許容されるべき範囲を逸脱するものとなっていたことが認められるところ,これら一連の暴言がいわゆるモラルハラスメント行為に当たり,原告の人格権を侵害するものであることは明らかというべきである。」として慰謝料の支払いを命じました。
同判決では、かなりひどい暴言がありますので、慰謝料を認めるという結論に異論はないかと思います。
しかし、暴言等以外の場合にモラハラということで慰謝料が認められる場合がどの程度あるのかは不分明です。
借金と慰謝料(離婚)
夫婦の一方が借金をしたとしても、それが生活のために必要なものであれば直ちに離婚原因や慰謝料の原因になることはありません。
しかし、遊興のために多額の借金をした場合、借金について他方の配偶者に説明を尽くさないような場合については、借金をしたことが離婚や慰謝料の理由となることがありえます。
東京地裁平成18年9月15日判決は、借金や家計状況の悪化について妻が夫に十分説明をしなかったという事案において、妻に慰謝料の支払いを命じました。
判決は以下のとおり述べます。
「被告が△△△の賃料約190万円を滞納したこと,及び,貸金業者等から約225万円もの借入をしていたこと,その一部は,被告が原告名義のカードを無断で使用したものであることが認められる。この点,被告は,賃料の延滞や多額の借入について,家計に不足があったが,原告と相談することができなかったというだけであり,賃料延滞や多額の借入の真相については,何ら具体的事実を語らない。このような被告の対応や態度は,やはり,夫婦間の協力義務に違背する不誠実なものといわざるを得ない。」
「他方,原告は,賃料延滞の際には,被告の兄から金員を借り受けたり,転居費用を会社から借りたりして賃料を支払うなど,後始末のため尽力したことが認められる。また,貸金業者からの借入についても,勤務先からの借入で返済するなど,被告が借りた借金の整理に努めたことが認められる」
「以上によれば,原被告間の夫婦関係を破綻に導いた責任の過半以上は被告にあったといわざるを得ない。」
最終的には30万円の慰謝料が認められています。
生活費のために借金をしてもただちに離婚や慰謝料の理由とはなりません。
しかし、賃料の延滞や多額の借り入れに至る状況においては配偶者間で相談がなされるべきであり、それがないままなされた多額の借金や借り入れは離婚や慰謝料の理由となりうるといえます。
嫁いびりと慰謝料
離婚に伴う慰謝料については夫婦の行為のみが対象となるのが原則です。
しかし、第三者の行為が悪質であり、そのために夫婦関係が破綻したような場合については、第三者の行為について慰謝料が認められることもあります。
典型は不貞ですが、それ以外でも慰謝料が認められることもあります。
以下、最高裁において第三者の行為について慰謝料が認められた事例(不貞以外)をご紹介します。
最高裁昭和41年2月22日判決は、以下のとおり述べて、舅が強引に内縁関係を破綻させたという事案について慰謝料を認めました。
「内縁関係に不当な干渉をしてこれを破綻するにいたらしめた者が不法行為に基づく損害賠償の責任を負うべきことは当然であつて、原審が確定したところによれば、「上告人清一は、上告人らの資産はもちろんその日常生活をも支配していたが、被上告人の入籍に反対してその実現を阻止し、その妻フキノをして被上告人の荷物をその実家に戻させたものであつて、上告人清志の本件内縁関係の一方的意思による破綻について共同加担した。」というのであるから、右事実関係のもとにおいては、上告人清一が被上告人に対し、不法行為に基づく損害賠償責任を負うとした原審の判断は相当である。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨はすべて採るをえない。」
最高裁昭和38年2月1日判決は、以下のとおり述べて、悪阻で苦しんでいる被上告人に舅姑らが怠惰であるなどと述べ内縁関係を破綻させたとして、慰謝料を認めました。
「内縁の当事者でない者であつても、内縁関係に不当な干渉をしてこれを破綻させたものが、不法行為者として損害賠償の責任を負うべきことは当然であつて、原審の確定するところによれば、本件内縁の解消は、生理的現象である被上告人の悪阻による精神的肉体的変化を理解することなく、懶惰であるとか、家風に合わぬなど事を構えて婚家に居づらくし、里方に帰つた被上告人に対しては恥をかかせたと称して婚家に入るを許さなかつた上告人らの言動に原因し、しかも上告人Aは右被上告人の追出にあたり主動的役割を演じたというのであるから、原審が右上告人Aの言動を目して社会観念上許容さるべき限度をこえた内縁関係に対する不当な干渉と認め、これに不法行為責任ありとしたのは相当である。」
現在でも、舅や姑が夫婦関係に不当介入し、夫婦関係を破綻させる事例は散見されます。
そのような場合、程度によっては舅や姑の損害賠償義務が生じえますので、注意が必要です。
ウソをついたこと、不実告知と慰謝料
離婚慰謝料は、基本的には婚姻期間中の行為について発生します。
しかし、結婚前の事情について、説明をしない、あるいはウソをついていたような場合、離婚慰謝料が発生することもありえます。
東京地裁令和4年11月22日判決は、夫婦の一方が、IgA腎症という、将来人工透析が必要となる可能性がある指定難病について、腎臓に問題がない等の説明をしていた場合について、慰謝料は発生しないとしています。
同判決は、「婚姻が当事者間に重大な財産上・身分関係上の権利義務の変動をもたらすことに照らせば、とりわけ重要事項につき故意に虚偽の内容を述べ、その内容を要素として相手方が婚姻の決断に至った場合等、事案によっては不法行為が成立する余地はある」とします。
しかし、この事案では、通院の事実自体は隠していなかったこと、人工透析の可能性をどの程度高いものとみるかは評価が分かれ得るもので、「故意に虚偽の内容を述べたとまでは断定しがたい」として、不法行為の成立を認めなかったのです。
不実告知を慰謝料事由とすると、結婚前の事柄について洗いざらい話すことを求めることにもつながりかねませんし、不実告知による離婚慰謝料はかなり限定された範囲内でのみ認められると解するべきでしょう。
3 離婚の慰謝料の請求の仕方
慰謝料請求は、交渉により請求してもよいですし、離婚調停の中で離婚と一緒に請求してもよいです。
ただし、事実関係に争いがある場合、一定の事実関係を前提とした慰謝料額の評価に争いがある場合、離婚訴訟の中で解決することになります。
離婚をした後で慰謝料請求をするような場合、慰謝料請求だけの訴訟を地方裁判所に起こすこともできます。
4 離婚の慰謝料と遅延損害金
不法行為については不法行為のときから法律所定の遅延損害金が発生します(現在は年3%)。
この点、最高裁令和4年1月28日判決は、離婚に伴う慰謝料については、離婚成立時から遅延損害金が発生する、離婚訴訟で判決が出たことで離婚した場合は離婚判決確定のときから遅延損害金が発生するものとしています。参照:離婚慰謝料の遅延損害金がいつから発生するかについての判例
5 複数の人が関わる離婚の不法行為の慰謝料
不貞の場合、少なくとも2人以上の加害者が関与していることになります。
その場合、配偶者と不貞相手の2人に対して請求をすることができます。
しかし、その法律関係は不真正連帯債務の関係にあるとされます。
例えば、慰謝料300万円を払うべき場合に不貞相手が慰謝料100万円を払えば、不貞をした配偶者が払うべき金額は200万円となります。
不貞相手に対する慰謝料請求についても交渉で解決することもあります。
話し合いでは解決しない場合には地方裁判所に慰謝料請求訴訟を提訴してもらうことになります。
以上のいずれの手続も当事者の方がすることも不可能ではありませんが、弁護士に依頼した方がスムースかと存じます。
6 離婚の弁護士費用
当事務所の弁護士費用は以下のとおりです(消費税別)。
期日が伸びても追加で着手金などをいただくことはありません。
・初回相談料 無料
・離婚・慰謝料交渉 着手金11万円 報酬11万円(慰謝料が払われたときは、その11パーセントと11万円の大きい方)
・離婚調停 着手金22万円(交渉から引き続き受任した場合の着手金は16万5000円)
報酬22万円(慰謝料で経済的利益があるときは、その11パーセントと22万円の大きい方)
・離婚訴訟 着手金22万円(調停から引き続き受任した場合の着手金は16万5000円)
報酬22万円(慰謝料などで経済的利益があるときは、その11パーセントと22万円の大きい方)
7 新潟で離婚のお悩みは弁護士齋藤裕にご相談ください
もご参照ください。
離婚・不倫でお悩みの方は弁護士齋藤裕にご相談ください。
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弁護士費用はこちらの記事をご参照ください。
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