執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 嫁姑関係を原因とする離婚
現在でも嫁姑関係を原因とする離婚は少なからずあります。
以下、嫁姑関係を原因とする離婚の可否、慰謝料請求の可否について説明します。
2 嫁姑関係を原因として離婚が認められるか
東京地裁平成6年9月28日判決は、妻が姑らからの干渉により思い詰めていたという状況で、夫が「いずれ原告も被告の馴れ親しんできた家庭環境や家風ないし価値観に当然同化してくるものとたかを括り、問題意識を持って自身の家庭環境を顧みようとする気持を全く持たず、成行きのままに放置して原告が譲歩して来るのを待つことで良しとし、原告の訴えをさして深刻に受けとめることができず、かえって原告に現状を受容することを強く求めるのみであった」、つまり夫が妻を助けなかったということも理由として離婚請求を認めました。
嫁姑関係の悪化のみで離婚は認められにくいですが、夫が事態を放置しているような状況では離婚請求が認められる可能性が高くなることになります。
3 嫁姑関係を原因とする離婚と慰謝料
嫁姑関係で離婚をするとしても、夫が直接何かをしたわけでなければ夫が慰謝料を払ういわれはないようにも思われます。
しかし、妻が嫁姑関係で悩んでいることを知りつつ、放置した場合に、それを不法行為として慰謝料が認められる可能性は否定できません。
東京地裁平成16年1月19日判決は、「原告(妻)においては,婚姻当初の原告及び被告(夫)の予定に反して,婚姻後まもなく,被告の稼働するI医院の院長でもある立場にある被告の母と完全に二世帯同居の形で同居を開始し,被告の次姉も近隣に居住する環境にあり,原告において同居のストレス等は相当強かったと解される」という状況、つまり嫁姑(かつ嫁子姑)関係の中で妻が苦しんでいるにも関わらず、十分な関与をしなかった夫に慰謝料支払いを命じています。
嫁姑関係により夫が慰謝料の支払義務を負うかどうかは、嫁姑関係がどの程度悪化していたか、夫がそれをどの程度認識できたか、夫がどの程度介入したかなどの要素により判断されることになるでしょう。
4 新潟で離婚のお悩みは弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)へ
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