執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 祖母・祖父からの監護者指定
監護者指定の申立ては、子どもを監護する者を定めることを求める申立てです。
主に、婚姻中の父母間で申し立てられることがあります。
他方、父母間以外、祖父母と親との間で誰が監護をするか争われることもあります。
そのような場合に祖父や祖母は監護者指定の申立てをすることができるでしょうか?
2 祖母からの監護者指定申立についての大阪高裁令和2年1月16日決定
大阪高裁令和2年1月16日決定は、未成年子を養育していた祖母が、未成年子の母と養父を相手方として、監護者指定を求めて家裁に申し立てた事件の抗告審決定です。
そもそも祖父母を監護者と指定することができるかどうかについて、大阪高裁決定は、以下のとおり、限定的な条件を付けながらも、可能だとしました。
「祖父母等を監護者と定めるためには、上記親権者の親権の行使に重大な制約に伴うことになったとしても、子の福祉の観点からやむを得ないと認められる場合であること、具体的には、親権者の親権の行使が不適当であることなどにより、親権者に子を監護させると、子が心身の健康を害するなど子の健全な成長を阻害するおそれが認められることなどを要する」
その上で、当該事案について、大阪高裁は、
・未成年者が母親に対して嫌悪感、不信感を抱き、強く拒絶していること
・養父は、未成年者の意向や心情に対する配慮を欠く行動を繰り返していること
・それらが原因となり、未成年者は精神的に不調を来し、小学校にも通学することができない状況となったこと
・未成年者は、決定時10歳であり、母らとの同居を拒否し、祖母と2人で生活することを望んでいること
という事情を踏まえ、「親権者の親権の行使が不適当であることなどにより、親権者に子を監護させると、子が心身の健康を害するなど子の健全な成長を阻害するおそれが認められる」とし、かつ、祖母による監護に特段の問題がなく、祖母と未成年者との間に強い愛着関係があることから、祖母を監護者として指定すべきとしました。
3 祖母からの監護者指定申立についての最高裁令和3年3月29日決定
ところが、最高裁令和3年3月29日決定は、2の判断を覆し、父母以外の第三者は監護者指定の審判を申し立てることはできないとしました。参照:祖母からの監護者指定申立を認めなかった判例
これを前提とすると、祖父母による監護者指定の申立てはできないことになります。
そうすると、どうしても祖父母が監護をしたい場合、親権停止・喪失の審判を得て、自己を未成年後見人に選任することを求めることになりそうです。
極端にハードルが高く、本当に対応すべきケースを全部救いきれるのか疑問があります。
立法的解決が早急に求められます。
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