執筆 新潟縣弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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お子様との親子交流・面会交流について解説します。
目次は
1 親子交流・面会交流について
です。
1 親子交流・面会交流について
日本は単独親権制度ですので(2026年中には共同親権制度がスタートします)、離婚後、子どもはどちらかの親が育てることとなります。
そのような場合、子どもを育てていない方の親も子どもと面会、親子交流できるのが原則です。
また、離婚前、父母が別居している場合、やはり子どもを育てていない方の親は子どもと面会、親子交流できるのが原則です。
祖父母との面会交流もご参照ください。
2 親子交流・面会交流についてどう決めるか
親子交流・面会の方法などについては父母双方で話し合って決めるのが原則です。
しかし、うまく話し合いができない場合、家庭裁判所の調停などで話し合うことになります。
面会交流の調停で話し合いがまとまらない場合、審判の手続になります。
審判の手続では裁判官が親子交流・面会をさせるかどうか、その条件などを決めることになります。
離婚訴訟の中で親子交流・面会交流について決めることもできます。
3 親子交流・面会交流が認められない場合
親子交流・面会交流はよほどのことがない限り原則として認められます。
しかし、親子交流・面会交流を認めると子どもの福祉に悪影響があるような場合には面会交流が認められないこともありえます。
夫婦間の不仲と親子交流・面会拒否
離婚になるような状況では、監護親が非監護親に対し強い嫌悪を抱いている場合が多くあります。
そのような場合、監護親が、その感情を主たる動機として、非監護親と子どもの関係が悪くないのに、面会交流を拒否することがあります。
そして、面会交流の調停等でも、調停委員が、「監護親が面会を拒否しているので、面会は中々難しい」という趣旨の発言をし、中々調停が進まない場合もあります。
果たして、監護親と非監護親の不仲は面会交流を拒否する理由となるのでしょうか?
大阪高裁令和1年11月8日決定は、監護親(母親)が、不貞をした非監護親(父親)への嫌悪感から子どもらとの直接の面会交流を拒否したという事案についての決定です。
子どもたちと父親との関係は良好です。
第1審は、診断書から、母親において父親と接触すると心身の不調を来す状況にあると認定し、直接の面会交流を認めず、間接交流のみを認めました。
これに対し、第2審の大阪高裁は、
・「父と未成年者らの従前の父子関係は良好であり、平成30年6月末ころまでは、宿泊はもとより2回にわたり家族で一緒に旅行に出かけるなど」していたこと
・「その際、父や未成年者らに対して不適切な言動に及んだことも窺われない」こと
・「未成年者らは、現在も父を慕い、直接交流の再開を望んでいること」
などを理由に、直接交流をさせない理由はないとしました。
母親の心身不調については、
・母親が就業していること
・9歳と6歳という未成年者らの年齢からは、父母が面会しない引き渡しも可能であること
を理由として、直接交流を妨げる理由とはならないとしました。
面会交流はあくまで子どものためのものです。
子どもが面会を望んでいるにも関わらず、監護親の都合で面会をさせないことは許されないものであり、高裁の決定は穏当なものと思います。
私自身も、監護親である母親が面会拒否をしているという理由で家裁で面会拒否の審判を出されたものの、東京高裁で逆転で面会が認められたこともあります。
面会について子どもの福祉に直接悪影響があると言えない事例については、たとえ監護親が強硬に面会に反対しても、審判・抗告等で争う意味はあると思います。
4 親子交流・面会交流の条件
目次
親子交流・面会交流の頻度
親子交流・面会交流の頻度
親子交流・面会交流の条件については、月1回の日帰りというケースが多いようです。
しかし、これ以上、あるいは以下の面会条件を取り決めることも可能です。
宿泊付の親子交流・面会交流を取り決めることもあります。
夏休みなどの長期休暇だけ宿泊付面会を認めるというやり方はたまにみられます。
裁判所は中々月1回を超える親子交流・面会交流を認めない傾向にあります。
しかし、従来、頻繁に親子交流・面会を実施してきたような場合などにおいては月1回を超える面会が命じられることもありえます。
民法改正を踏まえ、親子交流・面会交流の頻度が高くなることも予想されます。
親子交流・面会交流と立ち合いの条件
場合によっては、監護者や第三者の立会いを条件とした親子交流・面会交流が認められることもあります。
これについては重要な問題なので5項で解説します。
親子交流・面会交流への親族の参加
東京高裁平成30年11月20日決定の事例で、非監護親は、親族も親子交流・面会交流に参加できることを望んでいました。
しかし、裁判所は、非監護親の親族が未成年者との親子交流・面会交流を求めうる法的根拠がないとして、非監護親の親族との親子交流・面会交流を命じませんでした。
非監護親の親族との面会交流はかなり頻繁にテーマにあがる問題です。
確かに非監護親の親族との親子交流・面会交流を命ずる法的根拠はないので、それを命ずることは困難でしょう。
しかし、未成年者が非監護親の親族と親子交流・面会することでよい影響を受けることが多いことは否定できません。
非監護親としては、当面は親子だけの親子交流・面会を続け、親子交流・面会実績を作り、将来的に親族の立会いを求めるなど、段階を追った対応を考えた方がよい場合もあると思います。
親子交流・面会交流と写真撮影や動画撮影
東京高裁平成30年11月20日決定の事例で、非監護親は、写真撮影が動画撮影を求めていました。
しかし、裁判所は、「面会交流時の相手方の行動をとらえて,抗告人が信頼関係が失われたなどとして,面会交流が中断した経緯を踏まえると,写真撮影や動画撮影は,トラブルを防止し,安定的かつ継続的に面会交流を実施するとの観点からこれを避けることが望ましい。」とし、特に命ずるなどしていません。
写真撮影なども親子交流・面会時のトラブルの一因となることが多いものです。
これについては、特に禁止する根拠もなさそうですが、円満な親子交流・面会実施のため、非監護親としても無理に撮影などしない方が望ましい場合が多いと思います。
親子交流・面会交流と飲食物の提供、プレゼントの交付
東京高裁平成30年11月20日決定の事例で、監護親は、親子交流・面会交流中に抗告人の承諾を得ない飲食物の提供,プレゼントの交付を禁止するよう求めていましたが,裁判所は、「未成年者が幼いことからすれば,原則として,口にする飲食物については監護親である抗告人の承諾を得ることが望ましいが,プレゼントに関しては,その時期さえ特定すればよく,抗告人の承諾を得る必要性までは認められない。」とました。
これもトラブルになることが多い類型です。
非監護親としては、原則として非監護親と相談しながら事を進めるべきだと考えられます。
親子交流・面会交流と第三者立ち合い
東京高裁平成30年11月20日決定は、親子交流・面会交流について、「抗告人は,前項の面会交流における相手方と未成年者との面会交流に立ち会うことができる。」として、監護親が親子交流・に立ち会うことを条件とします。
この条件は、監護親において、非監護親が連れ去りや未成年者に不適切に関わることを懸念したからです。
監護親の立会いの条件自体は比較的よく見られるところかと思います。
連れ去りについてそれなりの根拠がある場合などにはやむをえない条件と言えるでしょう。
また、東京高裁平成29年11月24日決定は、以下のとおり述べて、第三者立会いを面会交流の条件としました。
同決定は、非監護親において自己中心的な側面があり、面会交流を円滑に行うために第三者立会いなどが必要だとします。
同決定は、まず、非監護親において面会交流のルールの順守や子ども・監護親の心情等に配慮するかどうか懸念があるとします。
そして、監護親について、面会交流をめぐる非監護親の言動により精神的負荷を受けているとします。
それらを踏まえ、決定は、
「今後、未成年者らと相手方との面会交流が円滑かつ継続的に実施されるためには、抗告人が安心して未成年者らを面会交流に送り出すことができる環境を整えることも必要と考えられる。」
「そして、前示のとおり、相手方に自己中心的で他者への配慮に欠けるところがあり、抗告人の相手方に対する信頼が失われていることを踏まえれば、面会交流を円滑かつ継続的に実施していくためには、一年六か月(一八回分)の間は、面会交流の支援を手掛ける第三者機関にその支援を依頼し、同機関の職員等が未成年者らと相手方との面会交流に立ち会うこととし、時間をかけて未成年者らと相手方との面会交流の充実を図っていくのが相当である。」
としました。
東京高裁平成25年6月25日決定も、以下のとおり述べ、第三者機関の立ち合いを条件とした面会を認めました。
「原審申立人と未成年者との面会交流を未成年者の福祉に適う形で継続していくためには,原審相手方の協力が不可欠であり,面会交流の実施に関して,原審相手方と原審申立人との間に信頼関係が形成されていることが必要である。これを本件についてみると,現時点においては,当事者間に離婚をめぐる紛議が係属しており,また,原審相手方は,原審申立人から別居前に精神的な虐待を受けたと主張したり,原審申立人による未成年者の連れ去りを懸念するなど,当事者間の信頼関係が失われている状況にある。したがって,原審相手方において,原審申立人との面会交流に消極的になったり,原審申立人によって未成年者を連れ去られる危険性があるとの懸念を抱くことにもやむを得ない事情があるといえる。したがって,当裁判所は,このような状況を考慮すると,原審申立人と未成年者の面会交流を早期に開始し,正常化していくためには,当初は,原審相手方の懸念にも配慮して,第三者機関の立会いという制限された方法で,回数も控えめにして面会交流を開始するのが相当であると判断する。」
また、第三者機関の費用については,「原審申立人と未成年者との面会交流が原審申立人のためのものではなく,未成年者の福祉のために行われるものであることを考慮すると,原審申立人と原審相手方が2分の1ずつ負担するものとするのが相当である。」としています。
このように、監護親の意向や父母の関係性などによっては第三者機関の立会いが条件とされることもあります。
第三者機関についてはかなり高額の費用を徴収することも多く、非監護親にとっては負担となることもありうるでしょう。
また、安易に父母間の軋轢を理由に第三者機関の立ち合いを要するとすることには、監護親の一方的な意向次第で面会のハードルが高くなる懸念もあります。
しかし、第三者機関を入れることの種々のデメリット面を考慮しつつ、それでも面会交流を実現するという目的のために裁判所が第三者機関による立会いを命ずることがあるのはやむをえないといえるでしょう。
5 親子交流・面会交流の実現方法
調停や審判などで決められた親子交流・面会交流が実現されない場合、家庭裁判所に履行勧告を出してもらい、履行を促してもらうこともできます。
それでも親子交流・面会交流が実現しない場合、
ⅰ 取り決められた面会条件が具体的であるときには間接強制
ⅱ 親子交流・面会をさせないことについての慰謝料請求(面会交流と慰謝料の記事をご参照ください)
ⅲ 再度の親子交流・面会交流の調停
などの対応策が考えられます。
親子交流・面会交流と間接強制
間接強制は、親子交流・面会させない度毎に面会させない側の親に賠償金を支払わせる制度です。
親子交流・面会させないとお金を払わないといけないというプレッシャーを利用して親子交流・面会を実現させるのです。
調停調書などにおいて親子交流・面会交流をすべきことが具体的に定められたにも関わらず、監護親が非監護親に面会交流を認めない場合、間接強制(お金を払わせることで強制をする方法)により面会を1回させないと○円の支払いを命ずるという命令が出されることがあります。
参照:間接強制のためには調停調書等において面会交流・親子交流の日時・時間・引き渡し方法等を特定する必要があるとした判例
親子交流・面会交流不履行について高額な間接強制が認められた事例
大阪高裁平成30年3月22日決定は、この強制金を、不履行1回につき20万円を定めました。
ちなみに、原決定は、不履行1回につき5万円と定めていました。
同決定は、以下のとおり述べます。
「相手方は、抗告人との別居から約3年間、抗告人と未成年者との面会交流を拒否し続け、本件決定後も、これにより定められた義務を任意に履行しなかった。相手方が上記義務を履行したのは、原決定による強制金の支払を命じられた中でのことである。これらの相手方の面会交流に対する約3年間にわたる拒否的な態度等に照らすならば、原決定後に相手方が本件決定により定められた義務を2回程度履行したからといって、相手方が今後もその義務を継続的かつ確実に履行するとみることは困難である」、「したがって、原決定後に相手方が面会交流に応じているとの現状を踏まえても、なお相手方に上記義務を継続的かつ確実に履行させるためには、相手方の収入や経済状況(抗告人から支払われる婚姻費用を含む。)等を踏まえ、相手方に面会交流を心理的に強制させるべき相応の額の強制金の支払を命じる必要がある。その強制金の額については、相手方が歯科医師の資格を有し、現在まで歯科医師として稼動し続け、別件決定時点において、勤務医として年収500万円弱を得ており、その稼動能力が低減したとの事情は認められないことや、抗告人が相手方に対して支払うべき婚姻費用分担金の金額(月額21万円)などの事情に照らし、不履行1回につき20万円とするのが相当である」
このように、監護親が親子交流・面会交流について拒否的であった事情、婚姻費用も含めた相手方の年収が740万円程度となることなどを踏まえ、不履行1回につき20万円という高額の強制金が命じられています。
特に、婚姻費用が20万円を超えており、それと匹敵する程度の金額でないと強制の意味がないとの考慮が強く働いたとも推測されます。
監護親が比較的高額の収入を得ている場合の間接強制における強制金額の在り方について参考となる裁判例かと思います。
6 親子交流・面会交流と弁護士費用
当事務所の弁護士費用は以下のとおりです(消費税別)。
着手金をお支払いいただければ、期日毎にお支払いいただく費用はありません(遠隔地は別途出廷日当が発生する場合があります)
・初回相談料 無料
・離婚交渉 着手金5万円 報酬10万円(財産分与などで経済的利益があるときは、その10パーセントと10万円の大きい方)
・離婚調停 着手金20万円(交渉から引き続き受任した場合の着手金は15万円)
報酬20万円(財産分与などで経済的利益があるときは、その10パーセントと20万円の大きい方)
・離婚訴訟 着手金20万円(調停から引き続き受任した場合の着手金は15万円)
報酬20万円(財産分与などで経済的利益があるときは、その10パーセントと20万円の大きい方)
・面会交流調停 着手金20万円(離婚調停と一緒にする場合5万円
報酬20万円(離婚調停と一緒にする場合5万円)
例 相手方が離婚も面会も拒否している場合
交渉の着手時に5万円をいただきます。
話し合いで解決しなければ離婚調停・面会交流調停となりますが、その際着手金15万円+5万円=20万円をいただきます。
そこで親子交流・面会交流も、離婚も解決すると、報酬20万円+5万円=25万円を報酬としていただきます。
7 新潟で親子交流・面会交流、離婚のお悩みは弁護士齋藤裕へ
もご参照ください。
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まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。
弁護士費用はこちらの記事をご参照ください。
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