執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 子どもの連れ去りへの対処法
近年、子どもの連れ去りをめぐるトラブルが増えています。
裁判所が現状追認の姿勢を強く示していることが背景にあると考えられます。
子どもの連れ去りがあった場合、監護者指定や子の引き渡しの仮処分、審判の申立を検討すべきですが、今回は子どもの連れ去りが不法行為に該当するかどうかを検討します。
2 子どもの連れ去りと不法行為についての裁判例(共同親権ケース)
東京地裁平成28年11月28日判決は、子どもの連れ去りが不法行為には該当せず、損害賠償の対象にはならないとしました。
この事案では、子どもの母の父母が連れ去りを行い、子どもの母は連れ去りに同道していました。
子どもの父は、母らが連れ去りをしたことで、面会交流の機会が妨げられたことを理由に不法行為に該当すると主張していました。
裁判所は、「一方当事者の子を同道して別居したことが不法行為上違法かどうかは,監護親が,専ら,その責に帰すべき事由によって,非監護親の親権を実質的に侵害したと解されるような場合に限られると解すべきであって,それを判断するには,別居前後の父母による子の監護状況,父母が別居に至る経緯,子の同道に至る経緯及び態様,子の意思及び別居後の子と一方当事者との交流に対する他方当事者の態度並びに一方当事者側の対応に加えて,父母間の裁判外や家事調停における合意の有無や家事審判の有無及び内容などの諸般の事情を総合考慮して決することが相当である。」との判断基準を示した上で、以下の点をあげ、不法行為は成立しないとしました。
〇連れ去った側が従来主に監護をしてきた
〇別居後も適切に監護をしてきた
〇別居についてどちらかに責任があるとは言えないこと
〇連れ去り時に有形力を行使していないこと
〇連れ去ったのは、その方が子どもの監護に適切という判断からであること
〇連れ去った側が後日家事審判で監護者として指定されていること
〇連れ去った側が面会交流を容認していること
以上からすると、主に監護していた方の親が連れ去る場合に不法行為が成立するということはあまりないということにもなりそうです。
ただし、改正民法により、共同親権下において、DV等の事情がなければ子どもの連れ去りは違法とされました。
ですから、今後は、DV等の事情がなければ連れ去りが不法行為とされる可能性は十分あります。
別居をするについては、どのようにするか、弁護士に相談しながら進めるのが大事です。
3 子どもの連れ去りと不法行為についての裁判例(単独親権ケース)
東京地裁令和4年3月25日判決は、親権者のもとから非親権者が子どもを連れ去ったというケースについて、「本件別居時に子らを連れ出した行為は、子らと不法に引き離されることのないという原告の法律上保護される利益を侵害するものであったというべきであり、原告が単独で子らを監護することが明らかに子らの幸福に反するというべき事情が存しない限り、不法行為法上違法となると解すべきである」とした上で、当該事案について、単独監護が明らかに子らの幸福に反するというべき事情があるとは言えないとして、不法行為該当性を認めました。
親権者から子を連れ去る行為については原則違法となるということです。
なお、共同親権状態において「子らと不法に引き離されることのないという原告の法律上保護される利益」は認められるべきではないか、2の場合との区別について合理的な説明が可能なのか、疑問なしとはしません。
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