執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 同居義務について
民法752条は、夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない、としています。
そして、同居義務違反を理由に慰謝料を請求し、あるいは同居を直接求めるケースもあります。
そこで、以下、同居義務をめぐる裁判例などを概観します。
2 同居義務と慰謝料をめぐる裁判例
同居義務と慰謝料についての平成年代の裁判例としては以下のものがあります。
ア 東京地裁平成29年9月29日判決
「被告は,原告に対し,事前の説明をすることもなく,一方的に別居を開始し,関係の修復を求められても,具体的な同居に向けた協議・提案等を行うことなく,これを拒絶して別居を継続していたものということができるのであり,被告による当該別居について正当な理由があるものとはいい難く,同居義務(民法752条)に反し,原告に対する悪意の遺棄に当たるというのが相当である」
「被告による同居義務違反及び悪意の遺棄が決定的な端緒となって,離婚するに至ったものと認めることができる。このような原告及び被告が離婚するに至った原因と経緯のほか,婚姻期間が1年6月余りにとどまり,同居期間が8月余りにすぎないこと,その他諸般の事情を考慮すると,被告が原告に対して支払うべき慰謝料は,10万円と認めるのが相当である。」
イ 東京地裁平成16年4月7日判決
「一般的には,夫婦は同居して共同生活を送るのが通常の形態であり,夫婦の同居義務も肯定されているところであるから,双方が了解して別居している場合や,どうしても同居して生活することが困難な事情が存在する場合など,例外的な場合でない限り,夫婦のどちらか一方が相手方との同居を拒むことは,相手方に対して違法な行為というべきである。」
「そこで,これを本件について判断すると,被告は,平成6年に原告が再びオーストラリアに赴任した際,原告と同居する自信がないとして,当時,同性愛の恋人であったDとの同居を希望し,平成10年まで原告との同居を拒んで別居していたこと,また,平成14年に原告が日本に転勤して帰国する際,日本への同行を拒絶して,それ以来現在まで,原告と別居状態であることは,被告自身も認めているところである。」
「このように,上記認定,説示の事情を総合的に勘案すると,被告の原告に対する違法行為は相当程度重いものといわざるをえないところであるが,ことの発端は原告のオーストラリア赴任であることや,原告自身も妻である被告の精神的ストレスを的確に把握してサポートすることができなかったことや,被告の生活状況などをも酌量すると,被告が上記不法行為によって原告に対して支払うべき慰謝料の額は,金350万円とするのが相当である。」
ウ 東京地裁平成15年10月30日判決
「被告Y1の同居義務違反については,前記1の認定事実からすれば,原告と被告Y1の夫婦関係は,長期間の別居中にすっかり形骸化し,修復不可能な状態になっていたものといえるから,そのような時期からは被告Y1の同居義務を認めることができない」
エ 東京地裁平成15年1年16日判決
「前記の婚姻生活の全経過に認定したとおり,被告は,昭和46年ころ,原告と別居を始めるのと前後してGと不貞関係を結んでおり,別居後は,正当な理由なく同居義務及び協力義務を履行せず,原告及び二人の子に対する扶養義務を放棄したものといわざるを得ない。」
「かかる事情に照らせば,原被告の婚姻関係の破綻の責任は専ら被告の不貞行為及び悪意の遺棄にあり,かかる行為は全体として原告に対する不法行為を構成するものというべきである。」
「そして,前記に認定した婚姻生活の全経過に照らせば,被告は,原告に対し,慰謝料として600万円の支払義務があるものと認めるのが相当である。」
オ 東京地裁平成14年11月14日判決
「前項の認定事実によれば,本件の婚約・内縁関係が破綻した原因は被告の思いやりの欠如と自己中心的生活態度に基づく家庭生活に対する配慮不足にあると認められ,これは婚姻関係における協力扶助義務違反に相当するものというべきであるから,被告は,原告に対し,不法行為に基づく責任として原告が被った精神的損害について慰謝料を支払うべき責任がある。そして,本件に顕れた一切の事情を総合すると,その金額は200万円が相当である。他方,原告に協力扶助義務違反・同居義務違反というほどの落ち度は認められないから,被告の損害賠償請求は理由がない。」
このうち、イ、エの裁判例は、不倫とセットのものであり、同居義務違反に独自の意味があるのか不明です。
ウ、オは、夫婦関係が形骸化している、相手方の思いやりや配慮不足などを理由に同居義務違反を否定しています。
アは、事前の連絡なく、かつ、事後の復縁に向けた協議もないまま同居を拒否したことで同居義務違反を認めましたが、極めて低廉な慰謝料しか認めませんでした。
以上から、不貞などがないという前提では、別居のそれなりの理由がある場合、事前の連絡や夫婦関係のあり方についての協議がある場合には慰謝料は認められにくく、認められたとしても慰謝料額は極めて僅少ということになろうかと思います。
3 夫婦間で同居を強制できるか
夫婦は法律上は同居義務を負っています。
よって、一方が家を出て行った場合には、同居義務を根拠に同居を求める審判を申し立てることが考えられます。
少数ながら同居を認める審判例もあります。
しかし、裁判所は、概して同居審判には慎重なようにみえます。
なお、同居義務自体は裁判で争うことができるとされます。参照:同居義務について裁判で争えるとした判例
同居審判を破棄した福岡高裁決定
例えば、福岡高裁平成29年7月14日決定は、家裁が条件付で同居を命ずる審判を言い渡したのに対し、それを覆し、同居を命じないこととしました。
同決定は以下のとおり述べます。
「本件において,もともと抗告人が相手方との別居を開始したのは,相手方の両親との不和に原因があったものと思われるが,その後,相手方との話合いが繰り返される中で,その内容が,相手方実家での同居,別の場所での同居,離婚といった経緯をたどるうち,上記離婚訴訟の判決に至るまでの間に,抗告人の相手方に対する不信感,嫌悪感が強まっていき,前記のとおり,現時点で,抗告人は,適応障害の症状を呈しており,そのストレッサーとされるのが相手方であることは明らかである。」
「また,相手方が作成している書面の内容からは,相手方において,面会交流のあり方を含めた長女との交流について強いこだわりを有していること,それが,長女を監護している抗告人との同居を求める大きな動機になっている様子はうかがわれるものの,抗告人自身の体調などに対する労りといった心情などはうかがわれず,相手方が,抗告人から嫌悪されていることを自覚している様子がうかがわれる。」
裁判所は、以上の状況を踏まえ、同居により相互に個人の尊厳を害する状態に至る可能性が高いとして同居を命じないこととしました。
同居決定を破棄した大阪高裁決定
大阪高裁平成21年8月13日決定も、以下のとおり、同居により互いの人格を傷つける結果になる可能性が高いとして、同居を命じた原決定を取り消し、同居を命じませんでした。
「相手方は,いったん抗告人がCと別れることにした後も,抗告人に対して不倫を責め立て,これが原因で激しい口論となることもあったことなどから,抗告人は,相手方とのこれ以上の婚姻生活の継続は不可能であると考えるようになった。また,相手方は,自分が納得できないことがあると,激情して取り乱すなど,衝動的な行動をとったり,抗告人が勤務する小学校に行って,抗告人が不倫をして帰宅しないなどと話したりしたことがあり,抗告人は今後もこのようなことが繰り返されるのではないかと考えている。そして,このような抗告人の考えは,同居を命じる原審判がされた後も変わらず,抗告理由では,相手方と同居することは抗告人にとって精神的に耐えがたいものであって,夫婦関係の修復は不可能であると断言している。また,当事者双方から円満同居に向けた具体的な提案がされたことを窺わせる資料もない。」
「そうすると,抗告人が審判(決定)に基づいて任意に同居を再開することはほとんど期待できず(同居審判の性質上,履行の強制は許されない。),仮に,同居を再開してみたところで,夫婦共同生活の前提となる夫婦間の愛情と信頼関係の回復を期待することも困難であり,かえって,これによって,互いの人格を傷つけ又は個人の尊厳を損なうような結果を招来する可能性が高いと認められる。したがって,現時点において,抗告人に対し,同居を命じることは相当ではない。」
夫婦が別居する場合には、同居を続けると多少なりとも相手の尊厳を害する状態となるような場合が多いでしょうから(だから別居をすることが多い)、福岡高裁決定の判断を踏まえると、同居が命じられる場合は多くはなさそうです。
また、審判が確定したところで、強制執行はできないと考えられますので、実効性はありません。
そうであれば、別居を解消する手段としては、円満調停で夫婦関係を再構築するというのが遠回りのようでいて、現実的な手段のように思います。
4 新潟での離婚は弁護士齋藤裕にご相談ください
もご参照ください。
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