執筆 新潟県弁護士会所属 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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目次
第1 症状固定時までの労災保険の支給内容
第1 症状固定時までの労災保険の支給内容
労災保険で支給される内容のうち、症状固定前までに支給されるものを以下ご説明します。
1 療養の給付・療養の費用の支給
医療費です。
業務災害の場合が療養補償給付、通勤災害の場合が療養給付です。
労災病院などの労災保険指定医療機関で療養する場合、原則として無料で診療を受けることができます。
それ以外の医療機関で療養する場合、一旦被災者において治療費を立て替え、その後労基署に請求することになります(通勤災害の場合、200円を上限に一部負担があります)。
通院費も一定の場合に支給されます。
2 休業給付・休業補償給付
労災のために賃金が得られないことに対応する補償です。
業務災害の場合が休業補償給付、通勤災害の場合が休業給付です。
休業給付の算定
休業4日目から、1日に給付基礎日額の60パーセントの休業給付・休業補償給付が支給されます(休業3日目までについては、労働基準法76条により、使用者に請求すべきことになります)。
ここでいう給付基礎日額は、事故前3ケ月分の1日あたり平均賃金であり、その基礎にはボーナスは含まれません。
この休業補償は休日等、給料が発生しない日についても生じます。
複数の事業で就労している労働者については、すべての事業場における賃金を合算して算定されることになります(2020年の法改正による)。
休業補償は長期間支給されることもあり、そのような場合には一般の給与水準の変動に応じたスライド制により給付基礎日額が変動します。
療養開始後1年6ケ月を経過した場合については、年齢階層別に最低限度額と最高限度額も設定されています。
特別支給金
上記60パーセントの休業補償とは別に、特別支給金20パーセント(労災保険特別支給金支給規則3条)も支給されます。
特別支給金は損害賠償との関係で考慮されません(コック食品事件についての最高裁平成8年2月23日判決)。
ですから、休業損害100万円、保険給付60万円、特別支給金20万円の場合、100万円-60万円=40万円の損害賠償請求をなしうることになります。
休業補償が支払われる終期
休業補補償は、これ以上治療しても症状に変動がないという、症状固定のときまで支給されます。
3 傷病年金、傷病補償年金
傷病が治癒しないまま、療養開始後1年6ケ月を経過した場合、傷病年金(通勤災害)・傷病補償年金(業務災害)を受けることができる場合があります。
その金額は以下のとおりです。
傷病等級第1級 給付基礎日額・算定基礎日額の313日分 一時金の傷病特別支給金114万円
傷病等級第2級 給付基礎日額・算定基礎日額の277日分 一時金の傷病特別支給金107万円
傷病等級第3級 給付基礎日額・算定基礎日額の245日分 一時金の傷病特別支給金100万円
※算定基礎日額はボーナスなどを1日あたりに換算したもの
傷病年金が支給されるようになると、休業給付は給付されなくなります。
傷病年金は治癒するまで支給されることになります。
この傷病年金とあわせ、傷病特別支給金、傷病特別年金の支給もあります。
傷病年金の支給は請求をしないでも労働基準監督署長が支給決定をするものとされています。
第2 死亡時の労災保険の支給内容
以下、被災労働者が死亡した場合の労災保険の支給内容について解説します。
1 遺族年金・遺族補償年金
被災労働者が亡くなった当時、被災労働者の収入で生計を維持していた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹(妻以外については、被災労働者の死亡当時高齢・年少・障害などがあることが必要)は遺族年金・遺族補償年金を受給できます。
金額等は以下のとおりです。
・遺族が55歳以上の妻、一定の障害状態にある妻1人であるとき 給付基礎日額の175日分
・遺族が1人で上記以外であるとき 給付基礎日額の153日分
・遺族が2人 給付基礎日額の201日分
・遺族が3人 給付基礎日額の223日分
・遺族が4人以上 給付基礎日額の245日分
その他、一時金である遺族特別支給金300万円、遺族年金・遺族補償年金と同じ日数分の算定基礎日額の遺族特別年金が支給されます。
※給付基礎日額は3ケ月の平均賃金、算定基礎日額は特別給与(ボーナスなど)を日割りしたものです。
2 遺族一時金・遺族補償一時金
被災労働者の死亡当時、遺族年金・遺族補償年金を受ける遺族がいない場合、給付基礎日額及び算定基礎日額の1000日分、遺族特別支給金300万円の遺族一時金・遺族補償一時金が支給されます。
3 その他
その他に以下の給付があります。
・葬祭料(31万5000円+給付基礎日額の30日分)、
・障害等級第1級の障害年金・障害補償年金、傷害等級第1級の傷病年金・傷病補償年金を10年以上受給していた被災労働者が業務上以外の理由で死亡したとき、長期家族介護者援護金が遺族に支給されることがあります。
・被災労働者の子の学費のために労災就学援護費が支給されることがあります(小学校月額1万4000円、中学校月額1万8000円、高等学校等月額1万8000円、大学等月額3万9000円)。
・被災労働者の子の保育所(保育園費用)として労災就労保育援護費が支給されることがあります(月額1万2000円)。
第3 後遺障害が残った場合の労災保険給付
1 障害給付・障害補償給付
労災や通勤中の病気や傷害について治療してもよくならない状態となり、後遺障害が残った場合、以下のとおり障害給付・障害補償給付が支給されます。
障害等級1級 給付基礎日額・算定基礎日額の313日分の年金 障害特別支給金343万円(一時金)
障害等級2級 給付基礎日額・算定基礎日額の277日分の年金 障害特別支給金320万円(一時金)
障害等級3級 給付基礎日額・算定基礎日額の245日分の年金 障害特別支給金300万円(一時金)
障害等級4級 給付基礎日額・算定基礎日額の213日分の年金 障害特別支給金264万円(一時金)
障害等級5級 給付基礎日額・算定基礎日額の184日分の年金 障害特別支給金225万円(一時金)
障害等級6級 給付基礎日額・算定基礎日額の156日分の年金 障害特別支給金192万円(一時金)
障害等級7級 給付基礎日額・算定基礎日額の131日分の年金 障害特別支給金159万円(一時金)
障害等級8級 給付基礎日額・算定基礎日額の503日分+65万円(一時金)
障害等級9級 給付基礎日額・算定基礎日額の391日分+50万円(一時金)
障害等級10級 給付基礎日額・算定基礎日額の302日分+39万円(一時金)
障害等級11級 給付基礎日額・算定基礎日額の223日分+29万円(一時金)
障害等級12級 給付基礎日額・算定基礎日額の156日分+20万円(一時金)
障害等級13級 給付基礎日額・算定基礎日額の101日分+14万円(一時金)
障害等級14級 給付基礎日額・算定基礎日額の56日分+8万円(一時金)
2 アフターケア通院費
対象となる傷病について、健康管理手帳の交付を受けると、1ケ月に1回程度の診察、保健指導など及び通院費の支給を受けることができます。
3 介護給付・介護補償給付
障害年金・障害補償年金、傷病年金・傷病補償年金第1級または第2級で高次脳機能障害が身体性機能障害などの障害があり、介護を要する状態にある場合、常時介護で月額7万0790円から16万5150円、随時介護で月額3万5400円から8万2580円の給付を受けることができることがあります。
第4 新潟で労災のお悩みは弁護士齋藤裕へ
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