新型コロナウイルス法律相談 その8 無給医と労災

1 新型コロナ対応と無給医

新型コロナウイルス対応で無給医が駆り出されているものの、労働者扱いされず、労災も使えないとの報道がなされています。

労災について規定する労働者災害補償保険法は、労災保険が支給される場合について以下のとおり定めます。

第七条 この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
一 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付
二 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付
三 二次健康診断等給付

つまり、労働者が、業務上、あるいは通勤経路で疾病に罹患した場合、労災保険が支給されるということです。

ですから、労働者が仕事をしていて新型コロナウイルスに感染したとすると、労災保険が適用されることになります。

無給医について言うと、病院側が無給医を労災保険に加入させていたかどうかは問わないことになります。

そこで、問題は、無給医が労働者に該当するかどうかです。

2 無給医の労働者性

医師の労働者性について判断した判例としては、研修医の労働者性について判断した最高裁平成17年6月3日判決(関西医科大学事件)があります。

同判決は以下のとおり述べます。

「研修医は,医師国家試験に合格し,医籍に登録されて,厚生大臣の免許を受けた医師であって(医師法(平成11年法律第160号による改正前のもの。以下同じ。)2条,5条),医療行為を業として行う資格を有しているものである(同法17条)ところ,同法16条の2第1項は,医師は,免許を受けた後も,2年以上大学の医学部若しくは大学附置の研究所の附属施設である病院又は厚生大臣の指定する病院において,臨床研修を行うように努めるものとすると定めている。この臨床研修は,医師の資質の向上を図ることを目的とするものであり,教育的な側面を有しているが,そのプログラムに従い,臨床研修指導医の指導の下に,研修医が医療行為等に従事することを予定している。そして,研修医がこのようにして医療行為等に従事する場合には,これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり,病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り,上記研修医は労働基準法9条所定の労働者に当たるものというべきである。」

このように、医師が従事する治療行為に教育的要素があるとしても、医療行為に従事する場合には病院開設者のための労務の遂行をしているという側面を不可避的に持つものであり、病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったといえる場合には、医師は労働者とみなされるとしています。

無給医について言うと、無給医が手当や日当をもらいつつ、上司の指示を受けて治療行為に当たっている場合には、労働者に該当し、業務上新型コロナウイルスなどの病気となった場合には、労災保険が支給されることになります。

もちろん、無給医を労災保険に入れていない病院側が労災の手続きをしてくれるとは思われないので、自ら、あるいは弁護士に頼んで労災の手続きをするということになります。

いずれにしても、無給医が安心して治療行為に従事できるようにするため、病院側は無給医を労災保険に加入させる手続きをすべきです。

3 新潟で無給医、勤務医のご相談は、さいとうゆたか法律事務所に

医療従事者と労災についての記事もご参照ください。

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