テレワーク、在宅勤務の法律問題(給料、労働時間の把握、労災) 

交通事故

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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目次

1 テレワーク・在宅勤務で増える法的トラブル

2 テレワーク・在宅勤務と給料

3 テレワーク・在宅勤務と労働時間  

4 テレワーク・在宅勤務と労災

5 テレワーク・在宅勤務を認めないことが違法となる場合

6 新潟で労働問題は弁護士齋藤裕にご相談ください

 

1 テレワーク・在宅勤務で増える法的トラブル

新型コロナウイルス対策をきっかけにテレワークが進展しています。

これまでテレワークを導入していなかった会社においてもテレワークが導入されることにより、トラブルも想定されるところです。

そこで、以下、想定される点について解説します。

2 テレワーク・在宅勤務と給料

テレワークで働いている労働者に対しては、就業規則で特段の定めがない以上、会社に出社している労働者と給料上同じように扱わなければならないと考えられます。

横浜地裁令和1年9月25日判決は、在宅勤務をしていた労働者に固定賞与が認められるかどうかが争われた事例についてのものですが、以下のとおり述べ、固定賞与の支払を命じました。

「原告が被告の指示又は了承の下に在宅勤務をしていたものか,あるいは自宅待機をしていたものとして,殊更に欠勤していたと評価することはできないものというべきである。」

東京地裁令和6年6月27日判決も、以下のとおり述べ、就業規則上の根拠なく、在宅勤務労働者の賃金を低くすることは許されないとしています。

「本件在宅勤務規程を通覧しても、同規程が適用される在宅勤務社員について本件給与規定が適用されない旨を定めた規定は存在しない。かえって、本件在宅勤務規程1条2項は、「この規則に定めのない事項については、就業規則および労働基準法およびその他の関係法令の定めによる。ただし、就業規則第28条~第31条の通勤に関する条項は該当しない。」と定めていることからすれば、本件在宅勤務規程に定めのない在宅勤務社員の賃金については、本件就業規則と一体である本件給与規定の定めによるものと解するのが相当である。」

よって、就業規則上の根拠もなく、テレワークだからといって賃金を減らすことは許されないと考えられます(出勤を要しないことから、出勤手当を支給しないということはありうるでしょう)。

3 テレワーク・在宅勤務と労働時間の把握  

在宅勤務における労働時間とは?

在宅でも、労働時間は、使用者の指揮命令下にある時間ということになります。

これは社屋で働く場合と何ら変わりません。

しかし、在宅の場合、使用者の監督が及びにくく、そのために労働時間該当性の判断が困難となる可能性があります。

大阪地裁令和6年3月21日判決は、自宅から会社のコンピューターを遠隔操作して仕事をしていたと労働者が主張した事件について、「被告が従業員に対して、自宅から被告の業務用のコンピュータを遠隔操作することを認めていたことを認めるに足りる的確な証拠はない。」、「すると、仮に原告が自宅のコンピュータにソフトを導入して、自宅においても被告の業務用のコンピュータを操作できるようにして作業を行うことがあったとしても、被告の指揮監督下の行為と評価することができず、これが労働時間に当たるということはできない。」として、在宅勤務における労働時間該当性を否定しました。

社屋にいる場合であれば黙示の指揮命令が認定されるケースは多いでしょうが、在宅の場合はその可能性が小さくなると言えそうです。

事業場外のみなし労働時間制

在宅勤務については、一定程度労働時間の把握が困難になると思われます。

そのため、事業場外のみなし労働時間制を使うことを検討する場合もあると思います。

労働基準法38条の2は「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。」と規定しています。

同規定の適用について、東京地裁平成22年7月2日判決は、以下のとおり述べます。

「労基法は,使用者に対し,労働時間を把握することを求めている(同法108条,労働基準(ママ)施行規則54条1項5号,6号)。また,時間外労働割増賃金の支払を使用者に対する罰則をもって確保している(同法37条,119条1号)。この労働時間を把握する方法として,平成13年4月6日労働基準局長通達第339号「労働時間の適正な把握のための使用者が講ずべき措置に関する基準」(以下「労働時間把握基準」という。)は「使用者は,労働時間を適正に管理するため,労働者の日ごとの始業・終業時刻を確認し,これを記録すること」とされ,その方法として原則として「ア 使用者が,自ら現認することにより確認し,記録すること。イ タイムカード,ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し,記録すること。」とし,例外として自己申告制を規定する(〈証拠略〉)。

これらによれば,みなし労働時間制が適用される「労働時間を算定し難いとき」とは,労働時間把握基準が原則とする前記ア及びイの方法により労働時間を確認できない場合を指すと解される。」

同判決に従うと、客観的な記録を基礎として労働時間を把握できる場合にはみなし労働時間制は使えないと思われます。

現在においては、ネットを通じて勤務開始・終了をその都度申告するなどの仕組みも可能でしょうし、パソコンの操作記録から労働時間を把握することも可能でしょう。

ですから、テレワークにおいても、みなし労働時間制を使用できる場面は限定されると思われます。

会社としては客観的な労働時間把握策を導入すべきでしょう。

4 テレワーク・在宅勤務と労災

テレワークを自宅でしていて、ケガなどをした場合、労災保険から支給がなされる可能性があります。

これは、事業所外での事故などであっても、使用者の支配下で業務に従事している場合、事故発生時に労働者が本来の業務及びそれに当然随伴する行為から離脱していない限り労災保険が支給されると考えられているからです。

5 テレワーク・在宅勤務を認めないことが違法となる場合

1 テレワークを認める就業規則があるのに認めない違法

就業規則等においてテレワーク・在宅勤務が認められている場合、使用者としてはそれらを認めなければなりません。

それを認めない場合、不法行為や債務不履行として損害賠償責任が発生する可能性があります。

大阪地裁令和5年12月22日判決は、「被告会社において利用が認められているフレックスタイム制度や在宅勤務の抑制を示唆する言動をし」たことがパワハラに該当し、損害賠償責任が発生するとの判断をしています。参照:在宅勤務を認めない言動をしたことで損害賠償責任を認めた裁判例

2 非正規社員だけテレワークを認めないことは許されるか?

正社員はテレワークなのに、パートタイム、派遣社員などの非正規労働者は出社しなければならないことが多いと指摘されています。

もちろん、そもそも非正規労働者がテレワーク困難な業務に従事している場合には差別とは言いにくいかもしれませんが(それでも、安全配慮義務の観点から、有給休業とすることも検討はすべきでしょう)、同じ業務に従事している場合については、許されない差別に該当する可能性もあると考えられます。

この点、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条は、以下のとおり定めます。参照:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

8条 「事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と思われるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない」

この「待遇」について、水町勇一郎「『同一労働同一賃金』のすべて」80ページは、「労働条件」という語ではなく、「待遇」という語が使われるに至った経過から、「解雇、配転、懲戒処分等の人事上の措置も、本条の『待遇』に含まれるものと解釈すべきである」としており、妥当と思われます。

よって、テレワークとするか、出社を求めるかも、ここでいう「待遇」の問題となると解されます。

そうだとすると、同じ業務に従事しているのに、正社員はテレワーク、非正規社員は出社という扱いは短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条に反する疑いがあると言わなくてはなりません。

将来的には慰謝料請求などの問題もありうるかもしれませんが、当面は短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条を根拠に事業主に差別的な取り扱いを止めるよう要求することが大事となるでしょう。

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