
1 新型コロナとテレワーク 西村担当相が「テレワークで出勤者の7割削減」との発言
現在、新型コロナウイルス対策でテレワークが進展しています。
これまでテレワークを導入していなかった会社においてもテレワークが導入されることにより、トラブルも想定されるところです。
そこで、以下、想定される点について解説します。
2 テレワークと給料
テレワークで働いている労働者に対しては、就業規則で特段の定めがない以上、会社に出社している労働者と給料上同じように扱わなければならないと考えられます。
横浜地裁令和1年9月25日判決は、在宅勤務をしていた労働者に固定賞与が認められるかどうかが争われた事例についてのものですが、以下のとおり述べ、固定賞与の支払を命じました。
「原告が被告の指示又は了承の下に在宅勤務をしていたものか,あるいは自宅待機をしていたものとして,殊更に欠勤していたと評価することはできないものというべきである。」
よって、就業規則上の根拠もなく、テレワークだからといって賃金を減らすことは許されないと考えられます(出勤を要しないことから、出勤手当を支給しないということはありうるでしょう)。
3 テレワークと労働時間の把握 事業場外のみなし労働時間制
在宅勤務については、一定程度労働時間の把握が困難になると思われます。
そのため、事業場外のみなし労働時間制を使うことを検討する場合もあると思います。
労働基準法38条の2は「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。」と規定しています。
同規定の適用について、東京地裁平成22年7月2日判決は、以下のとおり述べます。
「労基法は,使用者に対し,労働時間を把握することを求めている(同法108条,労働基準(ママ)施行規則54条1項5号,6号)。また,時間外労働割増賃金の支払を使用者に対する罰則をもって確保している(同法37条,119条1号)。この労働時間を把握する方法として,平成13年4月6日労働基準局長通達第339号「労働時間の適正な把握のための使用者が講ずべき措置に関する基準」(以下「労働時間把握基準」という。)は「使用者は,労働時間を適正に管理するため,労働者の日ごとの始業・終業時刻を確認し,これを記録すること」とされ,その方法として原則として「ア 使用者が,自ら現認することにより確認し,記録すること。イ タイムカード,ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し,記録すること。」とし,例外として自己申告制を規定する(〈証拠略〉)。
これらによれば,みなし労働時間制が適用される「労働時間を算定し難いとき」とは,労働時間把握基準が原則とする前記ア及びイの方法により労働時間を確認できない場合を指すと解される。」
同判決に従うと、客観的な記録を基礎として労働時間を把握できる場合にはみなし労働時間制は使えないと思われます。
現在においては、ネットを通じて勤務開始・終了をその都度申告するなどの仕組みも可能でしょうし、パソコンの操作記録から労働時間を把握することも可能でしょう。
ですから、テレワークにおいても、みなし労働時間制を使用できる場面は限定されると思われます。
会社としては客観的な労働時間把握策を導入すべきでしょう。
4 テレワークと労災
テレワークを自宅でしていて、ケガなどをした場合、労災保険から支給がなされる可能性があります。
これは、事業所外での事故などであっても、使用者の支配下で業務に従事している場合、事故発生時に労働者が本来の業務及びそれに当然随伴する行為から離脱していない限り労災保険が支給されると考えられているからです。
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正社員と非正規社員のテレワークをめぐる差別に関する記事もご参照ください。
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