SNS上でのなりすましがあった場合にどのような法的な責任を追及できるか? 

さいとうゆたか弁護士

執筆者 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 SNS上のなりすましがあった場合にどのような法的責任を追及できるのか?

ツイッター、フェイスブック、インスタグラムなどのSNSについては、厳密に本人確認をするものではないため、なりすましが頻繁に行われています。
私が代理人として関わった事例では肖像権侵害として賠償が認められましたが、それ以外の法的構成を模索する動きもあります。

SNS上のなりすましについて肖像権侵害を認めた裁判例

大阪地裁平成29年8月30日判決は、SNS上のなりすましについて名誉権、プライバシー権、肖像権、アイデンティティ権が侵害されたかどうかについて判断しています。参照:SNSでのなりすましについて肖像権侵害を認めた大阪地裁判決
結論的には名誉権、肖像権侵害を認め、その他の権利の侵害を否定しています。

例えば、肖像権については以下のとおり判断をしています。

被告は,原告の顔写真を本件アカウントのプロフィール画像として使用し,原告の社会的評価を低下させるような投稿を行ったことが認められ,被告による原告の肖像の使用について,その目的に正当性を認めることはできない。そして,前記争いのない事実等(3)のとおり,被告が,原告の社会的評価を低下させる投稿をするために原告の肖像を使用するとともに,「わたしの顔どうですか?w」(平成27年5月18日午前10時39分),「こんな顔でHさんを罵っていました。ごめんなさい」(同日午前10時54分)などと投稿したことは,原告を侮辱し,原告の肖像権に結びつけられた利益のうち名誉感情に関する利益を侵害したと認めるのが相当である。
そうすると,被告による原告の肖像の使用は,その目的や原告に生じた不利益等に照らし,社会生活上受忍すべき限度を超えて,原告の肖像権を違法に侵害したものと認められる。

このように、肖像を使用することの正当性がないこと、社会的評価を低下させる投稿のために肖像を使っていること、侮辱する表現とともに肖像を使っていることなどから違法な肖像権侵害を認め、慰謝料支払いを命じています。

同判決は、アイデンティティ権については、人格的同一性に関する利益も法的保護に値するとしています。そして、なりすましの意図・動機、なりすましの方法・態様、なりすましによる不利益の有無・程度などを考慮し、利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるかどうかにより不法行為が成立するかどうか判断すべきとしました。そして事案についてあてはめを行い、アイデンティティ権の違法な侵害を認めませんでした。

なりすましについて、他人に氏名を冒用されない権利を認めた裁判例

他方、大阪地裁令和2年9月18日判決は、「人は、その氏名を他人に冒用されない権利を有するところ、かかる権利は、不法行為上、強固なものとして保護される」とした上で、「原告は、他人に氏名を冒用されない権利を違法に侵害されたと言えるから、利用規約により本件サイトに投稿された記事につき一定の削除権限を有する被告に対し、人格権に基づき本件投稿記事の削除を請求できる」として、氏名を冒用されない権利に基づき、投稿記事の削除を命じました。

後者の判決の方が権利侵害ハードルが低い様に見えます。

肖像権は写真などが使われる場合なので、それとは別個アイデンティティ権や氏名を冒用されない権利を問題とする実益は大きいと思われます。しかし、いまだ成熟した権利ではなく、これから開拓が必要な領域といえるでしょう。

SNSでのなりすましについて営業権侵害を認めた裁判例

東京地裁令和6年1月16日判決は、SNSでのなりしましについて、営業権侵害を認めています。

同判決は、「被告が商標権を有する登録商標「はーじゅのギフトレ」の文字を含む投稿者名のアカウントにより、被告になりすましてギフト券(電子商品券)の取引を呼び掛けるものと理解される。これにより、被告は、自己の営業上の信用が損なわれるのを防ぐため対処を余儀なくされ、被告の潜在的な顧客を含む本件サイトの使用者に対して注意喚起を行わなければならないことなどの不利益を被ったといえる。したがって、本件発信者の本件各投稿により被告の営業権が侵害されたことは明らかであると認められる。」としているところです。

事業者がなりすまされた場合には、そのことにより営業的不利益が生じたかどうかを検討し、営業権に基づき賠償請求等をすることも考えられます。

SNSでのなりすましについてプライバシー侵害を認めた裁判例

東京地裁令和4年12月26日判決は、以下のとおり述べ、なりすまし投稿であることを考慮して、書き込みについてプライバシー侵害を認めました。

「原告本人のツイッターアカウントである旨のなりすましアカウント名の投稿であると認められるところ、なりすましのアカウント名自体、表現主体の誤認混同を社会に生じさせるものであり、原告の名誉感情その他の人格的利益を損なうおそれが高く、本件に現れた諸事情を踏まえても、当該アカウント名を使用する必要性を認めることはできない。」

プライバシー侵害の成否は、諸事情の考量で判断されますが、なりしましの場合、保護すべき法益が乏しく、また、被害が大きくなりがちであるため、一般の場合によりプライバシー侵害が生じやすいと言えます。

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