執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 看護師に対する暴行と労災
近年、患者から医師や看護師に対する暴行などが問題視されています。
当然、暴力を振るった患者が賠償責任を負う場合は多いですし、労災保険が適用される場合もあるでしょう。
また、使用者に安全配慮義務違反があったとして、使用者(病院側)が賠償責任を負うこともありうるところです。
東京地裁平成25年2月19日判決は、以下のとおり述べて、患者から看護師に対する暴行について、使用者(病院側)の安全配慮義務違反を認め、使用者(病院側)に賠償を命じました。
同判決は以下のとおり述べます。
「入院患者中にかような不穏な状態になる者がいることもやむを得ない面があり,完全にこのような入院患者による暴力行為を回避,根絶することは不可能であるといえるが,事柄が看護師の身体,最悪の場合生命の危険に関わる可能性もあるものである以上,被告としては,看護師の身体に危害が及ぶことを回避すべく最善を尽くすべき義務があったというべきである。したがって,被告としては,そのような不穏な患者による暴力行為があり得ることを前提に,看護師全員に対し,ナースコールが鳴った際,(患者が看護師を呼んでいることのみを想定するのではなく,)看護師が患者から暴力を受けている可能性があるということをも念頭に置き,自己が担当する部屋からのナースコールでなかったとしても,直ちに応援に駆けつけることを周知徹底すべき注意義務を負っていたというべきである。」
「しかるに,第1事故の当時,被告は,このような義務を怠った結果,Dから暴行を受けた原告がナースコールを押しているにもかかわらず,他の看護師2名は直ちに駆けつけることなく,その対応が遅れた結果,原告に前記(1)認定にかかる傷害ないし後遺障害を負わせる結果を招いたものであって,この点で,被告には,原告に対する安全配慮義務違反があったといわざるを得ない。」
このように、患者が不穏状態となり暴力をふるうことがありうることを前提に、ナースコールが鳴ったときには、自己が担当する部屋からのナースコールではなかったとしても、看護師において駆けつけるように周知徹底すべきであったのにそれをしなかったとして、安全配慮義務違反を認めました。
患者と看護師が1対1の場合、一般的に不測の事態が起りうるといえますので、労働者の安全という観点で看護師にナースコールに対応すべきとしたのは穏当なところかと考えます。
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