執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 香川県高松市の弁当販売店で店員を丸刈りにしたとの報道
報道によると、香川県高松市の弁当販売店で、店員と店長が、バイトの女性を丸刈りした疑いがあるということで逮捕されたということです。
この報道内容の真否は定かではありませんが、仮に店員らが丸刈りにしたとすると、暴行罪を超えて傷害罪にもなりうるものです(髪を切る行為が傷害罪に該当すると判断したものとして、東京地裁昭和38年3月28日判決があります。否定した大審院の判例もあります)。
このように使用者等が従業員を丸刈りにする行為については犯罪となることもありうるだけではなく、損害賠償請求の対象にもなりうるものです。
以下、従業員が丸刈りにされたことで損害賠償責任が認められた裁判例をご紹介します。
2 従業員を丸刈りにしたことで賠償を命じた福岡地裁平成30年9月14日判決
福岡地裁平成30年9月14日判決は、まず、以下の事実を認定します。
「被告Dは,原告の帰社が遅れたことに腹を立て,原告の頭頂部及び前髪を刈り,落ち武者風の髪型にした上,洗車用スポンジで原告の頭部を洗髪し,最終的に原告を丸刈りにした。」
このように、会社の事実上の代表取締役Dにおいて従業員の髪を刈ったという事実を認定した上、「前記ア(イ)の被告Dの行為は,原告に対する暴行及び原告の人格権を侵害する行為であることは明らかである。」として、会社とDに対し損害賠償を命じています。
なお、同判決は、控訴されましたが、福岡高裁平成31年3月26日判決も福岡地裁判決の結論を維持しています。
3 従業員を丸刈りにしたことで損害賠償を命じた東京地裁平成26年9月30日判決
東京地裁平成26年9月30日判決は、以下のとおり述べ、会社の代表者が丸刈りにするよう業務命令を出したことに合理性がないとして、会社に30万円の慰謝料支払い義務を負わせました。
「(丸刈りにしろという)合理性のない業務命令を出した被告代表者には,不法行為責任が認められ,被告も会社法350条に基づき責任を負う。その賠償額は,行為態様が原告主張のとおり感情的強制的なものであったこと,退職に関連づけたことも悪質といえることに鑑みると,30万円をもって相当額と認める。
4 まとめ
以上のとおり、丸刈りを強要することについては、通常合理性はなく、また、人格を強く侵害するものであり、一定の慰謝料請求の対象ともなるものです。
パワハラにも該当します。参照:パワハラについての厚労省資料
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