執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 交通事故とめまい
交通事故によりめまいが生じることは多くあります。
しかし、交通事故後のめまいについては、客観的な把握が困難な場合もあり、簡単に請求が認められないこともあります。
交通事故によるめまいを認めさせるには、経時的な症状の経過、検査結果などを丹念に主張立証する必要があります。
交通事故におけるめまいの後遺障害認定基準
一般財団法人労災サポートセンター「労災補償障害認定必携」160頁以下は、めまいの後遺障害認定基準について以下のとおり述べています。
・生命の維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高度の失調又は平衡機能障害のため労務に服することができないもの 3級
・著しい失調又は平衡機能障害のために、労働能力が極めて低下し一般平均人の1/4程度しか残されていないもの 5級
・中等度の失調又は平衡機能障害のために、労働能力が一般平均人の1/2以下程度に明らかに低下しているもの 7級
・通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状が強く、かつ、眼振その他平衡機能検査に明らかな異常所見が認められ、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの 9級
・通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状があり、かつ、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの 12級
・めまいの自覚症状はあるが、眼振その平衡機能検査の結果に異常所見が認められないもの 14級
交通事故によるめまいを認めた裁判例
例えば、大阪地裁平成27年7月24日判決は、「平衡機能検査については,当初確認された眼振は消失しているが,重心動揺計検査やMann試験等は陽性であり,異常所見が認められる。」、「そうすると,原告X1の後遺障害は,「通常の労務に服することはできるが,めまいの自覚症状があり,かつ,眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの」として,自賠責保険の後遺障害等級12級13号に該当すると認めるのが相当である。」として眼振がないものの、12級の後遺障害等級を認定しています。
諸検査の総合的検討が重要です。
2 交通事故後のめまいで転倒した場合について損害賠償を認めた裁判例
交通事故と因果関係
交通事故により傷害が生じた場合、加害者はその傷害に伴う損害について賠償しなければならない可能性があります。
この傷害は通常は交通事故の瞬間に生ずるものです。
しかし、理屈上は、交通事故と因果関係のある傷害であれば、事故日以外の日に生じた傷害であっても賠償の対象となりうることになります。
当職が原告訴訟代理人を担当した、
ⅰ 交通事故時には頭を打ったものの、軽症
ⅱ 事故の翌日に転倒し、脳挫傷の傷害を負った
という事案において、新潟地裁新発田支部(令和3年1月15日判決)は、脳挫傷を交通事故と因果関係のある損害と認定し、被告に2892万7383円の支払を命じました。
事故翌日に生じた傷害について交通事故との因果関係を認めるのは珍しいため、以下簡単に紹介します。
傷害に至る経過と判決
原告は、交通事故により頭部挫創等の傷害を負いました。
見当識障害はあったものの、頭蓋内異常はありませんでした。
翌日、原告は歩道を歩行中、ふらつき、転倒し、脳挫傷の傷害を負いました。
原告側は、交通事故による脳震盪後症候群ないし軽度外傷性脳損傷(MTBI)によりめまいが生じ転倒した、よって事故と転倒による脳挫傷との間には因果関係があると主張しました。
被告側は、原告においては長期に大量のアルコール摂取をしていた、そのため転倒した、よって事故と転倒との因果関係はないと主張しました。
裁判所は、「見当識障害は脳震盪の症状であり、CT等の画像で異常所見がないような軽度頭部外傷であっても、脳震盪後症候群としてめまいが生じることがある」、よって、有力な他原因がない限り、交通事故と転倒・脳挫傷との間には因果関係があるとしました。
そして、原告の飲酒については、肝機能の数値がそれほど悪くなかった、アルコール摂取による平衡機能障害であれば交通事故のケアを診察した医師において気づかないはずがない等として、転倒の原因とはならないとしました。その結果、交通事故と転倒・脳挫傷の因果関係を認めたものです。
交通事故により頭部外傷が生じ、その結果転倒して生じた二次的傷害について交通事故と因果関係があるかどうか判断する上で参考になる裁判例と思います。
【加筆部分】
上記事件については、保険会社側が東京高裁に上訴していました。
しかし、東京高裁において保険会社側が2000万円を支払うという和解が成立しました。
新潟地裁新発田支部の判断を事実上踏まえたものです(介護施設における食費等、一定部分減額はされました)。
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