執筆:弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属。2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
交通事故は弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にご相談ください。

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弁護士費用の一例は以下のとおりです(詳細は第1「弁護士費用」をご覧ください)。
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以下、交通事故について解説します。
目次
第1 交通事故の弁護士費用
交渉・訴訟とも着手金無料(ただし、特に困難な事件については5~30万円、弁護士特約に加入している場合にはその基準上の金額をいただくことがあります)
| 種類 | 支払い時期 | 基準 | |
|---|---|---|---|
| 相談料 | 相談時 | 無料 | |
| 着手金 | 受任時 | 交渉・訴訟とも着手金無料(ただし、特に困難な事件については5万5000円~33万円、弁護士特約に加入している場合にはその基準上の金額をいただくことがあります) | |
| 報酬金 | 解決後 | 増額分の13・2%(3,000万円を越える総額については9・9%) 加害者・保険会社側からの提示がない段階で受任した場合には、得られた金額の6・6%(回収金額の3,000万円を越える部分については5・5%) | |
| 例 | 保険会社からの提案がない段階で受任し、保険会社から1000万円入金があった場合、報酬66万円をいただきます。保険会社から50万円の提案があり、その後受任し、最終的に950万円入金があった場合、950万円-50万円=900万円の13・2%である118万8000円を報酬としていただきます。 | ||
第2 交通事故の被害に遭ったらすべきこと
交通事故の被害はそう遭うものではありませんので、慌てふためくことが多いでしょう。
しかし、以下の点には是非注意してください。
1 不用意な約束はしない
交通事故に遭った直後は興奮していて、痛みなどを感じないことが多くあります。
しかし、その後、痛みが出てくるというのはよくあります。
ですから、事故の場で、安易に、お金を請求しないなどの約束をしないようにしましょう。
そのような約束をすると、加害者がお金を出し渋る原因になりかねません。
2 加害者が誰か把握しておく
自動車のナンバーや免許証を写メで写すなどして証拠を押さえておきましょう。
3 警察・保険会社に連絡をする
警察を呼んで、事故状況を記録してもらうのは、その後の賠償請求にとって重要となる可能性があります。
保険金を請求するためには保険会社にすぐに連絡することも重要です。
4 証拠を押さえる
事故態様に争いがありそうであれば、目撃者の連絡先などを聞いておきましょう。
また、近隣の店舗の防犯カメラ、近くを通りかかったバスやタクシーのドライブレコーダーに事故状況が映っていた可能性がある場合、保存をお願いしましょう。
自分の車のドライブレコーダーも保存しておきましょう。
5 事故証明を取る
事故証明は交通事故における損害賠償の上で基礎となる書面です。
警察にお願いして、早期に取得しましょう。
6 とりあえず弁護士に相談
交通事故被害に遭ったときは、速やかに、さいとうゆたか法律事務所の弁護士にご相談ください。
初回相談料は無料です。
第3 交通事故と治療費

交通事故でケガ等をした場合、加害者に治療費等を請求できる可能性があります。
原則として治療費は症状固定までの分となりますが、それ以降の分を請求できることもあります。
特別室使用料・差額ベッド代を請求できる場合もあります。
接骨院や整骨院での施術費用は常に賠償の対象となるわけではないので、ご注意ください。
交通事故の治療が自由診療でなされ、医療機関が過大な治療費を請求した場合、治療費全額が賠償されないこともあります。
治療費についての記事もご覧ください。
第4 入院・通院に応じた慰謝料
交通事故で入院・通院した場合、通院・入院期間や回数に応じて慰謝料が発生します。
通院期間が長期間にわたる場合等については、実通院日数を基準に算定されることがあります。
他覚所見のないむち打ちについては通常の場合より低い水準での賠償がなされることになります。
入院・通院慰謝料の記事もご覧ください。
通院の交通費も賠償の対象となります。
公共交通機関利用の場合は実費、自家用車ならキロ15円が通常です。
タクシーについては、足のケガなどにより公共交通機関に乗ることが困難、医師の指示等があった場合にのみ認められます。参照:タクシー代の賠償を否定した裁判例
第5 入院付添費用・通院付添費用

近親者等が入院・通院に付き添った場合の費用を請求できる場合があります。
入院の場合は、被害者本人の病状の重さ等に応じて必要性が判断されます。
通院の場合は、被害者が歩けない場合、被害者が幼少である場合等に認められます。
入院付添費用・通院付添費用についての記事をご覧ください。
第6 後遺障害と損害賠償

交通事故の損害賠償においては、後遺障害がある場合とない場合、等級がどのくらいかで請求できる金額がかなり違ってきます。
等級に応じて後遺障害慰謝料を請求できます。後遺障害慰謝料の記事をご覧ください。
後遺障害のために家屋改造、自動車改造が必要となる場合の費用も一定程度で賠償されることがあります。
介護に必要な費用も賠償の対象となります。
第7 死亡と損害賠償

死亡による慰謝料
慰謝料とは精神的苦痛についての損害賠償のことです。
交通事故や労災事故で死亡やケガをした場合に発生します。
赤本という裁判所も基準としている本によると、一家の支柱が死亡した場合の慰謝料2800万円、母親・配偶者が志望した場合の慰謝料2500万円、その他の場合2000から2500万円が標準とされます。親族が固有に請求できる慰謝料もここに含まれます。
この枠内でも、年齢が若い人であれば慰謝料は高くなりがちであり、高齢者であれば低くなりがちです。加害者の悪質性によっても増額される場合があります。
例えば、仙台地裁平成22年10月22日判決は、被害者が2歳であったことを理由に2400万円の慰謝料を認めています。参照:二歳児について2400万円の死亡慰謝料を認めた判決
また、東京地裁平成20年8月26日判決は、34歳の大手監査法人職員の交通死亡事故について、以下のように被害者が結婚して子どもも設けようとしていた状況において亡くなった無念などを考慮し本人分の慰謝料3000万円を認定の上、妻200万、父母各100万、合計3400万の慰謝料を認めているところです。
「Aは,大学在学中の平成4年4月ころに短期大学在学中の原告X1といわゆるサークル活動を通じて知り合った後,上記のとおり平成14年8月に原告X1と婚姻をして,円満な家庭生活を送り,平成18年には子をもうけることを考えていたところであり,また,両親である原告X2及び原告X3との間においても,その唯一の子として十分な愛情を受けて育てられ,原告X1と婚姻をした後も良好な関係にあったことが認められ,これらの事情からうかがわれるAの無念の情については,これを察するに余りあるものというべきである。」
「これらの事情を勘案し,本件事故によりAが受けた精神的苦痛に対する慰謝料の金額としては,3000万円をもって相当と認める。」
一般的な慰謝料で納得できない場合には訴訟をすべきことになりますし、訴訟になった場合にはさまざまな増額要素を主張すべきことになります。
死亡による逸失利益
交通事故で死亡した場合、労働能力が失われますが、そのことについての逸失利益の損害賠償も認められます。
死亡逸失利益の基礎収入
被害者に収入があった場合、その収入をもとに、その収入が将来にわたり得られたはずだったのに、それが失われたとして逸失利益の計算をします。
若年で就労していない被害者や専業主婦・専業主夫については賃金センサスという平均収入についての統計、就労していない高齢者については年金をもとに計算がされます。
死亡逸失利益の就労可能年数
通常は67歳まで働くことができたという前提で逸失利益の計算をします。
高齢まで働く人の多い職種については、67歳を超えて働く前提で計算することがあります。
67歳までの年数が平均余命までの年数の半分を下まわる被害者については、平均余命までの年数の半分の年数働くという前提で計算をします。
年金の場合は平均余命までの期間収入があったものとして計算します。
死亡逸失利益の中間利息控除
本来は給料などは、将来にわたり支払われるものです。
それをある時点で先取りしてもらうため、被害者としては利息分について得をすると考えられます。
そのため、中間利息控除という計算をして、利息分についての減算をします。
死亡逸失利益の生活費控除
被害者が生存していた場合には、生活費がかかったはずですが、死亡により生活費がかからなくなります。
そのため生活費控除という計算も行い、生活費分を損害額から控除します。
この生活費控除は、被扶養者1名の場合40%、被扶養者2名以上の場合30%、女性の場合30%(上記に当たらない場合)、男性の場合50%(上記に当たらない場合)等とされます(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部 民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準 上巻(基準編) 2025(令和7年)197頁以下)。
死亡逸失利益の計算式
以上をまとめると、収入等から求められる基礎収入×67歳までの年収×生活費控除率に中間利息控除をした金額が死亡の逸失利益額となります。
葬儀費用の損害賠償
葬儀費用も賠償対象です。
150万円を上限とした実費が賠償対象となりますが、被害者が若年であったとか、社会的地位が高かったなどの事情により葬儀が大規模となった場合、150万円を上回る葬儀費用が賠償されることもあります。
第8 休業損害・営業損害
交通事故で仕事をやすんで収入が減った場合、休業損害や営業損害の賠償請求ができます。
休業損害は給料や所得などが基準となり休業損害が計算されます。
家事従事者の場合には女性の平均賃金が基準に休業損害が算定されます。
休業損害の記事もご覧ください。
第9 その他の損害賠償
交通事故で遅れた学習を取り戻すための学習費が賠償の対象となることがあります。
学習費についての記事もご覧ください。
第10 交通事故と刑事事件

交通事故について、加害者が刑事処罰されることがあります。
被害者として参加等をし、意見を述べたり、質問をしたりすることができることもあります。
被害者参加についての記事をご参照ください。
第11 交通事故と保険

交通事故の被害者は任意保険、自賠責保険から支払いを受けることができることがあります。
人身傷害保険については、損害賠償請求との準備次第で損をする場合もあるので、注意が必要です。
人身傷害保険についての記事もご覧ください。
第12 交通事故と健康保険、福祉等諸制度

交通事故でも使える健康保険
交通事故で傷害を負い治療を受ける場合、健康保険を使わないで、自由診療で治療を受けることが多いです。
そのためもあってか、交通事故の場合、健康保険を使うことができないと思っている方も多いですが、使うことは可能です。
ただし、健康保険を使う場合には、保険者に対し、第三者行為による傷病届をしていただく必要があります。参照:協会けんぽにおける第三者行為による傷病届書式
その際、「交通事故、自損事故、第三者(他人)等の行為による傷病(事故)届」、「負傷原因報告書」、「事故発生状況報告書」、「損害賠償金納付確約書・念書」、「同意書」などの書類を出してもらうことになります。
これを受け、保険者は、加害者に対して治療費分の請求を行うことになるのです。
交通事故で健康保険を使うメリット
健康保険を使う場合、被害者側のメリットもありえます。
それは、健康保険の方が診療の点数、つまり治療費が低いということです。
結局保険会社が治療費を払ってくれるので同じではないかと思われる方もいるかもしれません。
確かに、加害者が人身無制限の任意保険に加入し、被害者の過失がゼロの場合にはあまり健康保険を使うメリットはないかもしれません。
しかし、被害者の過失がいくらかある場合、治療費が安い方が被害者の手取り金額が大きくなります。
例えば、慰謝料200万円、被害者の過失割合2割として、自由診療で治療費100万円と保険診療で治療費50万円の場合を考えてみましょう。
治療費100万円のとき、被害者は200万円+100万円=300万円の8割である240万円を受給します。
うち100万円は医療機関に支払われるので、手取りは140万円です。
他方、治療費50万円のとき、被害者は200万円+50万円=250万円の8割である200万円を受給します。
うち50万円は医療機関に支払われるので、手取りは150万円です。
被害者に過失がある案件では健康保険を利用した方が被害者に有利ということです。
その他、自由診療の場合、点数が高すぎると裁判所に治療費を削られ、結局その分が被害者負担ともなりうるという問題もあります。
交通事故で健康保険を使うと医療機関がいい顔をしない(点数が低いので)ということもありえますが、交通事故で受診される場合には健康保険を利用することも積極的にご検討ください。
第13 交通事故と福祉制度
目次
1 交通事故と重度心身障害者医療費助成制度
1 交通事故と重度心身障害者医療費助成制度
交通事故に遭い、重度の心身障害が残った場合、医療費の助成を受けることができる場合があります。
これを重度心身障害者医療費助成制度といいます。参照:新潟県の重度心身障害者医療費助成制度サイト
この制度の内容は自治体によって違います。
以下、新潟市の制度についてご説明します。
新潟市では、身体障害者手帳1から3級、療育手帳A,精神障害者保健福祉手帳1級の方は、医療費助成を受けることができます。
その場合の自己負担額は以下のとおりです。
・外来 月4回まで1日530円、5回目以降0円
・入院 1日1200円
・薬局 0円
・訪問看護 1日250円
・治療用装具 0円
これは保健診療についてのみ適用される制度であり、自由診療では適用されません。
申請時には、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳、健康保険証、印鑑、本人確認ができるものなどが必要となります。
この制度については自治体により違いがありますので、申請時には各自治体に予めお問い合わせいただけるとよいと思います。
同制度を利用したために、医療費がかからなかった分については損害賠償請求の対象とはなりません。
しかし、将来の医療費を請求する場合については、将来においても同制度が存続しているか、しているとして要件か支給額などが同一かどうかは定かではないため、同制度の利用を考慮しない損害賠償額の算定がなされます。
例えば、札幌地方裁判所平成28年3月30日判決は、以下のとおり、過去の医療費については同制度による助成額を控除した額を損害額としつつ、将来の医療費については同制度による助成額を控除しない扱いとしています。
「原告X1は,平成28年1月まで,国民健康保険法に基づく保険給付及び江別市重度心身障害者医療費助成条例に基づく助成を受け,入院に伴う医療費を支払っていないが,その後は,同様の保険給付等の存続が確実であるということはできないから,損害から控除すべき保険給付等は,当初の3年のものであるというべきである。」
このような扱いは、将来制度がどうなるか判然としないということを理由として福祉的給付全般について共通になされているものです。
交通事故で重い障害を負った場合については、重度心身障害者医療費助成制度の利用も含めてご検討されるとよいと思います。
そのために健康保険を使った方がよい場合も多いでしょう。
2 NASVAの介護料支払い
1 NASVAの介護料支払(交通事故)
NASVA(独立行政法人自動車事故対策機構)は交通事故被害者のために様々な活動をしています。
今回は、NASVAによる介護料の支払いについて御紹介します。
2 NASVAの介護料支給の要件
NASVAの介護料は、以下の方に支給されます。
Ⅰ 最重度
脳損傷がある場合
自力移動が不可能
自力摂食が不可能
失禁状態にある
意味のある発語が不可能
目をあけ、手を握れという簡単な命令にはかろうじて応ずることはあるものの、それ以上の意思疎通が不可能
脊髄損傷がある場合
自力移動不可能
自力摂食不可能
失禁状態
人工介添呼吸が必要
Ⅱ 常時要介護
後遺障害等級別表第一1級1号、2号
Ⅲ 随時要介護
後遺障害等級別表第一2級1号、2号
3 NASVAの介護料支給額
4 NASVAの介護料の手続
5 損害賠償金との関係
基本的には介護料は損害賠償額から引かれないという扱いでよろしいかと思われます。
例えば、名古屋地裁平成23年2月18日判決は以下のとおり述べています。
「独立行政法人自動車事故対策機構の介護料は,交通事故被害者に対する支援という社会福祉的な施策の一環として捉えられるべきものであり,損害の填補としての性質を有しないというべきであり,損害からの控除をすることは認められない。」
3 身体障害者手帳
1 交通事故と身体障害者手帳
交通事故により身体障害が生じた場合、身体障害者手帳の交付を受けることができる可能性があります。
この身体障害者手帳を受ける人は、障害の程度に応じ、1級から7級までの級別に分けられ、級により受けられるサービスが異なります。
例えば、上肢について言うと、両上肢の機能を全廃した場合、あるいは両上肢を手関節異常で欠く場合には1級に認定されます。
また、1上肢の機能の軽度の障害、一上肢の肩関節・肘関節又は手関節のうちいずれか一関節の機能の軽度の障害、一上肢の手指の機能の軽度の障害、ひとさし指を含めて一上肢の二指の機能の著しい障害、一上肢のなか指・薬指・及び小指を欠くもの、一上肢のなか指・薬指及び小指の機能を全廃したものに該当すると7級に認定されます。
2 手帳を所持している交通事故被害者が受けることのできるサービス
身体障害者手帳をもっている人は、障害者総合支援法に定める福祉サービスなどを受けることができます。
障害者総合支援法が定める福祉サービスには、居宅介護(ホームヘルプ)、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、短期入所(ショートステイ)、療養介護、生活介護、施設入所支援(障害者支援施設での夜間ケアなど)、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援(A型=雇用型、B型)、就労定着支援、自立生活援助、共同生活援助(グループホーム)、移動支援などがあります。
3 身体障害者手帳と損害賠償金との関係
交通事故による損害賠償金から障害者総合支援法にもとづく福祉サービスにより受給などした分を引くかどうかについては、裁判例において引かなくてもよいとの判断がなされているところです。
例えば、名古屋地裁平成29年10月17日判決は、以下のとおり、過去分・将来分含めて引かなくて良いとの判断を示しています。
「このように,Aに必要な介護費用は,現状,その大部分が公的給付によって賄われているが,障害者総合支援法に基づく公的給付は,障害者の福祉の増進を図ることを目的とするもので(同法1条参照),損害の補填を目的とするものではない。同法には,給付を行った市町村等による代位の規定も設けられていない。かえって,介護保険給付が障害者総合支援法に基づく給付に優先するとされ(同法7条),かつ,介護保険給付については,第三者から損害賠償を受けたときは,市町村は,その価額の限度において,保険給付を行う責を免れるとされている(介護保険法21条2項)。そうすると,将来にわたって,Aに対して現在と同水準の公的給付が維持されるという蓋然性までは認め難く,困難な将来予測の場面で,現状の公的給付を所与の前提として将来介護費を算定することは,相当ではない。したがって,同法に基づく公的給付は,既給付及び将来給付の分も含めて,損益相殺的調整を図るべきものではないと解するのが相当である。」
ですから、障害者総合支援法による支給分については考慮しないで損害賠償請求するという取扱いでよろしいかと思われます。
4 療育手帳
1 交通事故と療育手帳制度について
交通事故で精神機能などに障害が生じた場合、療育手帳の交付を受け、様々なメリットを受けることができることがあります。
この制度については自治体毎に違いがありますが、以下、新潟県療育手帳制度についてご説明します。
2 療育手帳制度の対象者
対象者は以下のとおりとされています。
障害程度A(重度)
1 知能指数がおおむね35以下で、日常生活において常時介助または監護を必要とする人
2 肢体不自由、盲、ろうあなどの障害(身体障害者手帳1級、2級または3級に該当するもの)を有し、知能指数がおおむね50以下であって、日常生活において常時介助または監護を必要とする人
障害程度B(その他)
A(重度)に該当しない人
3 療育手帳制度の手続
市福祉事務所、町村役場の福祉担当課に申請していただきます。
児童相談所または知的障害者更生相談所の面接判定を受けることになります。
4 療育手帳所持のメリット
療育手帳を持っていると、以下の手続において措置を受けやすくなるとされています。
・特別児童扶養手当
受給資格の認定の際、Aの表示があり、直近の判定などから2年以内の手帳の提示がある場合、必要な診断書の提出を省略して差し支えないとされています。
・心身障害者扶養共済
手帳所持者の障害証明は、市町村長がしてさしつかえないとされています。
・国税・地方税の諸控除・減免税
手帳を提示することにより、Aの表示のある手帳所持者は所得税、住民税とも特別障害者控除が適用されます。
Bの表示のある手帳所持者は障害者控除が適用されます。
その他、自動車税、軽自動車税又は自動車取得税の減免税に関し、県福祉事務所長または市社会福祉事務所長が証明を行う場合、Aの記載がある手帳によって障害認定をして差し支えないとされています。
・公営住宅の優先入居
手帳所持者について、県福祉事務所長又は市町村長が資格を証明してさしつかえないとされています。
・NHK受信料の免除
手帳所持者について、市町村長が資格を証明して差し支えないとされています。
・重度心身障害者医療助成事業
市町村長は手帳にAの記載があるかどうかにより障害の確認を行ないます。
・旅客鉄道株式会社等の旅客運賃割引
5 精神保健福祉手帳
1 交通事故と精神障害者保健福祉手帳
交通事故により精神機能に障害が生じることがままあります。
脳が損傷することにより記憶などが障害されることもあれば、うつ病になることもあります。
そのようなとき、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けると、様々なサービスを受けることができるようになりますので、取得をご検討いただけるとよいと思います。
2 障害等級
精神障害者保健福祉手帳においては3段階の障害等級に分類されます。
1級 精神障害であって日常生活の用を弁することを不可能ならしめる程度のもの
器質性精神障害によるものにあっては、記憶障害、遂行機能障害、注意障害、社会的行動障害のいずれかがあり、そのうち一つ以上が高度のものが該当します。
2級 精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
器質性精神障害によるものにあっては、記憶障害、遂行機能障害、注意障害、社会的行動障害のいずれかがあり、そのうち一つ以上が中等度のものが該当します。
3級 精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活もしくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
器質性精神障害によるものにあっては、記憶障害、遂行機能障害、注意障害、社会的行動障害のいずれかがあり、いずれも軽度のものが該当します。
3 精神障害者保健福祉手帳所持により受けられるサービス
精神障害者保健福祉手帳を持っていることで、障害等級に応じて様々なサービスを受けることができます。
サービスは自治体によって違いますが、例えば長岡市では以下のサービスが受けられるようになります。
・自立支援医療(精神通院)の手続簡素化
・精神障害者医療費助成の手続簡素化
・重度障害者医療費助成制度の適用
・生活保護法の障害者加算
・タクシー利用券の交付・自動車燃料税の助成
・後期高齢者医療制度への早期加入
・国民健康保険料の減免
・税制上の優遇措置
・公共料金等の割引
・施設入館料及び使用料の免除・軽減
・日常生活用具(頭部保護帽)の給付
第14 症状固定とは?
1 症状固定とは?
症状固定とは、それ以上治療をしても症状の改善が見込まれない状態を言います。
交通事故や労災において、
ⅰ 原則として症状固定時までしか治療費が支払われない
ⅱ 症状固定時点の症状をもとに後遺障害の判断がされる
ⅲ 症状固定時点が時効の起算点とされる
等、症状固定は重要な意味を持ちます。
2 症状固定の具体的判断
この症状固定については裁判で争われる事例が多くあります。
例えば、大阪地裁令和4年4月13日判決は、医師において平成27年7月(治療から約7年後)に、以降は治療効果がないと判断していたという事案において、被害者は以降も別の医療機関で別の治療法での治療を受けていたところ、平成27年7月以降の治療について「(被害者の症状について)適応があってその必要性及び相当性を認めることができ、実際に十分な治療効果が得られたのであれば、同年7月以降も治療効果が見込まれたものとして、その時点では症状固定に至っていなかったと評価できる余地がある。」としました。
その上で、
・当該治療法について、ある病院において適応の有無が検討された結果、治療効果が期待しにくく、むしろ、副作用を発症する危険性があることから、実施が見送られたものであること
・被害者の自覚症状が著しいものではなかったこと
等を踏まえ、平成27年7月を症状固定日としています。
症状固定日については、
・治療を担当した医師の意見
・治療内容(単なる痛みを緩和するものに過ぎないかどうか)
・発症からの期間(発症から長期間経過していれば症状固定と認められやすい)
・治療により症状が実際に改善したか
・当該治療方法が臨床において受容されていたかどうか
・被害者の苦痛等が激しく、治療の必要性が高かったか
・事故態様
等を踏まえ判断されることになります。
なお、労災保険における症状固定も、損害賠償における損害賠償と、概念的には同じものですが、労災保険の方が症状固定を先延ばしにしてくれる(主治医が症状固定としない限り症状固定とはしない)傾向があります。
ですから、労災交通事故のような場合、労災保険の申請は必ずすべきです。
第15 新潟県で交通事故のお悩みは弁護士齋藤裕へ
交通事故のお悩みは弁護士齋藤裕にご相談ください。
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