人身傷害保険と損害賠償 どういう順番で請求したら損をしないのか?(交通事故)

交通事故

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 人身傷害保険

人身傷害保険は、自動車事故で傷害等を負った被害者が、契約した保険会社から約款に従った保険金の支払を受けることができるものです。

現在では、ほとんどの自動車保険に付保されています。

この契約の一番のメリットは、被害者に過失があった部分も含め支払いを受けることができることです。

しかし、この人身傷害保険については、加害者への損害賠償との関係が複雑で、これまで多くの裁判で争われてきました。

以下、現時点における判例などをもとに整理をします。

2 人身傷害保険から保険金を受け取った後の損害賠償請求額

被害者が人身傷害保険から保険金を受け取った後に損害賠償請求をする場合、被害者が請求できるのは、総損害額から人身傷害保険より払われた額を引いた額となります(過失相殺される部分より人身傷害保険から支払われる額が小さいとき、総損害額に過失相殺をした額)。

例えば、損害額1000万円、過失割合4割(400万円)、人身傷害保険の保険金500万円の場合、1000万円-500万円=500万円を加害者に請求できます。最終受取額は1000万円であり、総損害額と同額です。
損害額1000万円、過失割合6割(600万円)、人身傷害保険の保険金500万円の場合、1000万円×0・4(6割の過失相殺)=400万円を加害者に請求できます。最終受取額は900万円となります。

なお、人身傷害保険金を受け取った後で、人身傷害保険の保険会社が自賠責の請求をすることがあります。

この自賠責部分について、最高裁令和4年3月24日判決は、加害者が支払うべき賠償金から自賠責分は引かれないとの判断を示しています。

3 損害賠償を受け取った後の人身傷害保険額

被害者が損害賠償を受け取った後で、人身傷害保険の請求をした場合の取り扱いは、訴訟で解決した場合と交渉で解決した場合とで異なる可能性があります。

訴訟で解決した場合、2と基本的には同じ最終受取額となります。

交渉で解決した場合、人身傷害保険の約款上の基準額をもとに算定することになり、訴訟で解決するより不利となる可能性があります。

よって、損害賠償請求を先行させるのであれば、訴訟で請求すべきことになります。

4 人身傷害保険による支払いかどうかはっきりしない場合の扱い

保険会社が被害者にお金を払う場合、それが人身傷害保険金なのか、自賠責保険金の立て替え払いか判然としない場合がありえます。

自賠責保険金の立て替えの場合、加害者に対する損害賠償金から全額控除されることになりますし、人身傷害保険金の場合2,3で述べたルール従うことになるので、どちらと考えるかで加害者から当座受け取る金額に違いが出てきます。

この点、最高裁令和5年10月16日判決は、以下のとおり、人身傷害保険金としての所定の支払いがあった場合には、特段の事情のない限り、人身傷害保険金と解するべきだとしています。

「本件約款によれば、人身傷害条項の適用対象となる事故によって生じた損害について参加人が保険金請求権者に支払う人身傷害保険金の額は、保険金請求権者が上記事故について自賠責保険から損害賠償額の支払を受けていないときには、上記損害賠償額を考慮することなく所定の基準に従って算定されるものとされている。このような約款が適用される自動車保険契約を締結した保険会社が、保険金請求権者に対し、人身傷害保険金として給付義務を負うとされている人身傷害保険金額に相当する額を支払った場合には、保険金請求権者との間で、上記保険会社が保険金請求権者に対して自賠責保険からの損害賠償額の支払分を含めて一括して支払う旨の合意(以下「人傷一括払合意」という。)をしていたとしても、上記保険会社が支払った金員は、特段の事情のない限り、その全額について、上記保険契約に基づく人身傷害保険金として支払われたものというべきである。なぜなら、上記の場合には、保険金請求権者としては上記保険会社が給付義務を負う人身傷害保険金が支払われたものと理解するのが通常であり、人傷一括払合意をしていたというこ
とだけで、上記金員に自賠責保険からの損害賠償額の支払分が含まれているとみるのは不自然、不合理であり(最高裁令和2年(受)第1198号同4年3月24日第一小法廷判決・民集76巻3号350頁参照)、加えて、上記金員に自賠責保険からの損害賠償額の支払分が含まれていると解すると、保険金請求権者の有する損害賠償請求権の額から控除される額に差異が生ずる結果、遅延損害金等の額において保険金請求権者に不利益が生じ得ることをも考慮すると、上記金員は、他にその支払の趣旨について別異に解すべき特段の事情のない限り、人身傷害保険金として支払われたものと解するのが当事者の合理的意思に合致するものというべきだからである。このことは、上記保険会社が、保険金請求権者に対し、当初、上記人身傷害保険金額に相当する額を支払い、その後、自賠責保険から損害賠償額の支払を受けて追加で金員を支払ったことにより、人身傷害保険金額を超える額の金員を支払うに至ったからといって、上記の当初支払分について、異なるものではない。」

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