執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 交通事故で被害者が勤務する会社が損害賠償請求できる場合(零細企業等)
ある人が交通事故で死傷をした場合であっても、通常その人が所属する会社が損害賠償請求することはできないとされています。
例外的に会社が賠償請求できる場合の一つは、被害者が代表をしている会社が個人会社であり、代表者に代替性がないような場合です。
最高裁昭和43年11月15日判決は、
・被害者が勤務していた会社(薬局)が節税対策上法人成りしたもので、被害者が唯一の取締役であり、薬剤師であったこと
という事情のもとで、被害者が交通事故の被害にあって会社の営業成績が下がったことについての損害賠償を認めるべきとしました。
最高裁昭和43年判決は、
ⅰ 個人会社であること
ⅱ 被害者に代替性がないこと
ⅲ 経済的に被害者と会社が一体をなす関係にあること
を基準として、会社の損害を認めています。参照:交通事故被害者が勤務する会社による損害賠償請求を認めた判例
しかし、最高裁昭和54年12月13日判決は、医薬品販売の会社(従業員4名)について、会社による損害賠償を認めませんでした。
零細企業の従業員が交通事故被害を受けた場合の会社による損害賠償請求はごく小規模の会社についてのみ認められるということです。
2 企業活動をしているところに自動車が突っ込んだ場合と間接被害者
もう1つは、企業活動をしている場面に自動車が飛び込み、従業員が死傷したような場合、会社の営業損害が賠償の対象となることがあります。
京都地裁平成31年3月26日判決は、高速道路の交通規制をしていた車列に自動車がつっこみ、5名の従業員が死傷したという事故について、加害者に対し警備会社に2ケ月分の営業損害の賠償を命じました。
同判決は、以下のとおり述べます。
「本件は、企業が請負業務の履行中に、雇用していた従業員と保有していた車両に対して、それらを進路前方に認識しながら制動措置を講じられなかった自動車が衝突してきたという事案であり、従業員と保有車両を侵害されることで請負契約の履行自体に関しても侵害を受けた企業が、加害者に対して、当該請負業務の停止に伴う事業損害を請求している事案であって、全く事案を異にしている。前記のとおり、被告は、高速道路の規制がされていることを認識し、その作業車両に対し、大型のトラックをもって時速約90ないし100キロメートルの高速で衝突していったのであるから、被告においては、原告標識車、原告資材車に乗っていた作業員4名が負傷し、原告標識車と原告資材車の間で作業していた作業員1名が両車両に挟まれて死亡し、原告が所有ないし借り受けた車両が損傷するに至るとの結果は十分に予見可能であり、その結果、本件事故現場での工事ないし高速道路警備業務が2ケ月間にわたって中断されることも予見することができるものというべきであって、中断期間における高速道路警備業者の利益喪失は、本件事故と相当因果関係のある損害ということができる」
このように、自動車がまさに営業をしているところに、それと認識しながら突っ込んだことで、営業損害が発生することについても予見可能性があるとされ、結果として会社の営業損害についても賠償の対象とされているのです。
企業が事業活動を行っている場面で企業が被害者となる交通事故においては、このように状況次第で営業損害も賠償の対象となるため、請求し忘れないことが重要です。
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